遺跡
「西の土地にある盾か・・・」
神様が言っていた盾がどんな物で、どの辺りにあるのかエレオノーラさんなら何か分からないかと早速聞いていた。
「ちなみに形は、どんな物なんだ?」
「あっ、すいません聞いて無いです・・・」
「うーむ、形がわからないとな・・・」
そう言えば神様から形を聞いておくのを忘れていた。
「一応、絶対防御を誇る最強の盾と聞いたんですけど」
「絶対防御か・・・1つだけなら思い浮かんだのはある」
「どんな物なんですか?」
「名前はヴェンダ。神話に出てくる盾の1つで最強の盾と言われている」
「それって、実在するんですか?」
「私も分からんが、神話に登場する武器はこれまでも何度か見つかっている。噂では西の地にある遺跡の閉ざされた扉の先にあるのではと言われている」
「そんな噂があるなら誰かが見つけてそうですけど」
「遺跡自体は確かに見つかっているし、扉も存在しているが誰1人として開けたことは無いそうだ」
「ちなみにその先にあるかもしれない理由は?」
「神話では、その盾を使っていた戦士が死の間際に西の遺跡に封印したと書かれていてな、その遺跡がそれではないかと言われているんだ」
「その遺跡の場所って分かりますか?」
「流石に詳しい位置までは分からないが、知り合いに神話に詳しい奴がいるからな、そいつに聞けば分かるだろうが・・・もしや取りに行こうと言うのか?」
「えぇ、まぁ、はい」
「遺跡自体には危険は無いとされているが、盾があるとは限らないんだぞ?」
「それでも可能性があるなら見に行きたいんです」
「どうして、そこまでして取りに行きたいんだ?」
「その、それで皆んなの事を守れないかなと」
「この前の件か?」
「はい・・・」
ティーが怪我をした事は皆んな知っているし、俺のお願いでそうなった事も知っている。
「そもそも龍王様に傷を付けられる者の方が少ないし、本人も別に気にする事は無いと言っていたが・・・まぁ、コタケ殿は気にするタイプだよな」
流石エレオノーラさん、よく分かっている。
「分かった。知り合いに遺跡の詳しい場所を聞いておこう。それに私も冒険者だ。盾が気にならないと言えば嘘になるからな!」
「ありがとうございます」
〜〜〜〜〜〜
それから数日後、俺は件の遺跡の中を歩いていた。
石造りの何の変哲もない遺跡だった。
お供にはエレオノーラさん、ティー、メアリーさんを連れて来ている。
「別に妾は気にせんで良いと言ったじゃろ?」
「うん、でも何かあってからじゃ遅いからさ。備えの為にも皆んなを守れる様な物が欲しいんだ」
「全く、心配性じゃの」
「備えがあるのは良い事だと思いますよ。それに、ご迷惑を掛けたのは私ですから」
「お主もそんなに気にせんで良いのじゃ、戦いに怪我は付き物なんじゃから。エレオノーラも何か言ってやれ」
「はは、まぁ多少の怪我であれば次の為の反省の機会にはなりますからね。それでも怪我をしない事が1番ですよ」
などと話していると、高さ10mくらいの大きな扉の前に辿り着いた。
「これが目的地ですかね?」
「あぁ、恐らくそうだな」
扉も周りと同じく石で出来ている。
「なんじゃ普通に押せば開きそうな感じじゃが?」
そう言いながらティーは扉の前に行き、両手を付けてグッと押し込んだ。
だが、扉はビクともしなかった。
「なんじゃこれ?全く動かんのじゃ」
「開ける手立ては無いんですかね?」
「うーん、知り合いも開け方までは分からないと言っていたしな・・・」
3人して頭を悩ませていると、
「皆さん、こちらに来てください」
と不意にメアリーさんが呼んだので、そちらに向かうと周りの地面より少しだけ浮き出て、人1人が乗れそうな台が9つあったのだ。
「何ですかね、これ?」
「よく見てみると絵の様な物が描かれていませんか?」
確かに浮き出ている部分の真ん中に絵が描かれている。
「普通の人間っぽい奴に、ツノが生えた奴、羽が生えた奴、色々と種類があるのう?」
「もしや、この上に絵に描かれた者達が乗れば扉が開かれるのでは?」
とエレオノーラさんが言った。
「確かに!その可能性高そうですね」
絵は、人が2つ、ツノの生えた人が2つ、耳が長い人が1つ、天使の様な長い羽を生やした人が1つ、小さくて羽を生やした人が1つ、そして動物の様な物が2つだった。
「この長い羽の人って、もしかして翼人族かな?」
「こっちのツノの生えた人は魔族でしょうね」
「耳が長いのはエルフで、小さいのは精霊か妖精かの?」
「最後の動物の絵は何だろうな?普通に動物なのか?」
「ちょっと、試しに他の人も呼んでみる?」
「うむ、面白そうじゃしやってみるのじゃ!」
そう言うわけで、ヒルズを呼んでゲートを開いて家から皆んなを連れて来た。
「これが、仰っていた絵ですね。この上に乗れば良いのですかね?」
「お嬢様は乗ったらダメですよ」
「ちょっとくらい良いじゃない」
「何があるか分かりませんから1つはコタケ殿が、もう1つは私が乗ります」
「む〜、エレオノーラのケチー!」
「この動物の絵の部分はどうするのでしょうか?」
絵をマジマジと見ていたリッヒさんが言う。
「うーん、うちに動物は居ないから何処かで捕まえてくるとか?」
そう話していると、クロが台の上に飛び乗った。
すると、台は沈み込み地面と同じ高さになった。
「動物じゃなくて、魔物でも良いのかな?」
「その様ですね」
「じゃあもう1つの台にも他のスライムが乗れば・・・」
と言い掛けた時、ドラちゃんが楽しそうと言う風に両手を上げながら、もう1つの台の上に乗った。
しかし、台は沈む事なくそのままで、ドラちゃんは何でと不思議そうな顔をするのだった。
「あー、ドラちゃんは魔物じゃなくて植物判定なんじゃないかな?」
ガーンとショックを受けた様に、しょんぼりして台から降りるのだった。
(もしかして自分の事、魔物だと思ってた?)
と思いつつ、気を取り直してもう1つの台に他のスライムが乗ろうとすると、
「わたしも乗りたーい!」
とベルが台の上に飛び乗った。
すると、先程のクロと同じ様に台が沈み込んで行った。
忘れがちだが、ベルもベヒーモスという立派な魔物だから反応したのだろう。
「とりあえず、他の所にも皆んな乗って行こうか」
エレオノーラさん、オルフェさん、メアリーさん、リッヒさん、シエルさん、ヒルズがそれぞれが対応する絵柄の台に乗る。
台はそれぞれしっかりと沈み込んだ。
そして、最後に人の絵が描かれた台の上に俺が乗る。
台は反応して無事に沈み切ると、ガチャッと言う音と共にゴゴゴゴッと大きな音を立てながら石の扉が開いて行った。
「おぉ、本当に開いた・・・」
中を確認する為に台の上から降りても、そのまま沈み込んだままなので大丈夫そうだったので、早速中に入って確認してみると、ポツンと置かれた1つの台座の上に金色で控えめな装飾の施された、直径30cmの丸型の盾が置かれていた。
「もしかして、あれがヴェンダですか?」
「恐らくはそうだろうな、神話に出てくる姿形とも一致している。コタケ殿、手に取ってみたらどうだ?」
エレオノーラさんに促され台座の盾を手に持ってみる。
ズッシリと重たい盾は何とか片手で持てそうなくらいだ。
「持ってみた感想は?」
「まだ、何ともって感じですね。実際に使ってみないと分からないですし」
「はは、確かにそれもそうだな、帰ってどれほどの性能なのか試してみるのが良さそうだ」
盾も手に入れた事なので中から出てくると、扉は大きな音を立てながら再び閉じるのだった。
「これ、次に開いた人にはちょっと申し訳ないですね」
「そう簡単に開けられるとは思わないがな」
「そう?結構簡単そうじゃない?お金持ちとかなら奴隷を連れたりして来そうだけど」
とオルフェさんが言ったが、確かにどうしても手に入れたい貴族だったら、そこまでしそうな気もする。
「流石に翼人族はハードルが高いんじゃないか?里を出る者なんてほぼいないだろうし」
エレオノーラさんの言葉に、うんうんとシエルさんが頷く。
「私も多分無理だと思います。確か、神話では全ての種族が手を取り合った後に盾を封印していましたよね?だから、ここの仕掛けには上に乗る人の気持ちも汲み取ったりしている様な気がします」
そうアリーが言う。
「全ての種族が手を取り合うって言うのは、皆んなが仲良くなったって言う事?」
「はい、神話では1度だけ全ての種族が仲良く暮らしていた時期がありました。ただ、結局は再び争いが起こった事で一瞬で崩れ去った様ですが」
「神話の時代に作られた物なら、アリシアの言う通り気持ちを汲み取る仕組みがあったかもしれんのう。だから、これは妾達にしか開けられんじゃろ」
「それなら大丈夫か」
「じゃあさ、早速帰って性能見てみようよ!」
オルフェさんがはしゃぎながら言い、エレオノーラさんも性能を見たいのか少しウズウズしていた。
「まだ、本物かは分からないからちょっとずつ試すからね」
「分かってるって」
最強の盾となので簡単に壊れる事は無いだろうから大丈夫だとは思うが・・・
ともあれ、盾を無事にゲットする事が出来たので俺達は家に帰るのであった。




