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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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162/530

正体

霧が発生した元凶である少女を連れて、俺達は家へと帰って来た。

外では、アリー達が待っていてくれた。


「あっ!皆さんお帰りなさい!ご無事でしたか?」


「ごめん、ティーがちょっと怪我を」


「龍王様が!?」


「慌てんくて良いのじゃ、そこまで大したものでも無い」


「すぐに治癒しますので!」


アリーは動揺して大慌てで、落ち着いているティーの左腕に回復魔法をかけ始めた。


「命に別状は無さそうなので安心しました・・・ところで、ずっと気になっているのですがコタケ様が、背負っているそちらの女の子は一体?」


とリビアさんが聞いた。


「多分、今回の霧の元凶だと思われる子だよ。この子を気絶させてから、霧が晴れていったんだ」


「危なく無いのでしょうか?」


「それは分からないけど、何だか放って置けなくて・・・」


「とりあえず起きた時に考えればよいのじゃ、それよりもエレオノーラとオルフェはまだ帰って来てないのか?」


「えぇ、まだ帰ってくる気配は・・・」


とリッヒさんが言い掛けた時、


「たっだいま〜!」


とオルフェさんが庭の穴からヒョコッと出て来て、続いてエレオノーラさんも出て来た。


「おかえり」


「すまない、予想よりも手こずった。霧が晴れて魔物の力も弱くなったから助かったのだが・・・ん?何かあったのか?」


怪我をして治療を受けているティーと、俺が背負っている少女を交互に見ながらエレオノーラさんがそう言った。


「とりあえず家の中で話すよ」


全員集まったので、何があったのかを説明した。


「この少女が霧の元凶か・・・それでこれからどうするのだ?ひとまず問題は解決したとしても、再び同じ事が起こる可能性もあるだろう?」


とエレオノーラさんに問われた。


「まずは起きたら話を聞こうと思います。何か事情があるはずですから・・・」


「しかし、龍王様の攻撃を防ぎ傷を負わす程の力があるのだろう?ここで起きて暴れられたら危険すぎる」


「その時は・・・」


(殺すしかないのか・・・)


と考えていると、


「コタケ様、目を覚ましそうです」


少女の様子を見ていたアンさんがそう言った。


「うっ、あぁ・・・」


少女は苦しい声をあげて、少しずつ目を開け辺りを見回した。


「ここは・・・てんし?天国なのでしょうか・・・?」


シエルさんの翼を見て少女はそう言った。


「違う」


「あぁ、そうですよね・・・私なんかが天国に行けるはずがありませんもの」


シエルさんの言葉に少女はそう返す。


「天国でも地獄でも無い。ここは魔の森」


「魔の森・・・あれ?私、確か・・・」


ここで少女は、ハッと目を開けて再び家の中を見回した。


「ここは家?私は、森の中にいたはず」


「ここは魔の森の中にある家じゃ。妾達はここに住んでおるのじゃ」


「貴方は・・・あの時、私の目の前にいた」


「あぁ、いきなり気絶させて悪かったのじゃ」


「いえ、あのままだったら私は恐らく・・・」


「妾達を殺しておったか?」


「はい・・・」


「そもそも、お主は何者なのじゃ?」


「私は・・・ヴァンパイアのメアリー・ホーネストと言います」


「「ヴァンパイア!?」」


俺と俗世に疎いシエルさんは首を傾げ、他の人達は驚きの声をあげる。


「ヴァンパイアは、滅んだとされる種族なのです。2000年前、ヴァンパイアの国からの侵攻を恐れた国々が協力して戦争を仕掛けて滅ぼしたと歴史書にも残っています」


アリーが教えてくれる。


「それなのに何故・・・」


「そちらの金髪の女性が言った事は正しくもあり、間違ってもいます」


「どう言う事でしょうか?」


「確かにヴァンパイアは滅びました。しかし滅んだ原因は他国との戦争ではありません・・・」


とメアリーさんはここで言い淀み、


「ヴァンパイアが滅んだ原因は、私なのです」


そう言うのだった。


「どう言う事じゃ?」


「ヴァンパイアには時折、始祖の力を強く引き継いだ者が生まれます。始祖の力は強大で、それを持って生まれた者は特別な扱いを受けるのです」


「もしや、お主もそうなのか?」


「はい、私も始祖の力を引き継いで生まれました。そして、歴代の誰よりも強い力を持っていた為、始祖が再び降臨したとヴァンパイアの国で神の様な存在として扱われました」


「それはまた難儀な話だな・・・」


「それ自体は運命だと思い受け入れる事にしました。そして、始祖の力を引き継ぐ者はその強大な力をコントロールしなければなりません。しかし、私は今までの者達とは違い力が強すぎた為、何度か暴走してしまう事がありました。そんな中で事件は起きました。とある晩、空に赤い月が浮かんでいたのです」


「もしかして、昨日も浮かんでた・・・」


「はい、昨日の物と同じでブラッドムーンと呼ばれる物です。発生条件は不明ですが、始祖の力を引く物が現代にいる事で時折起こる様で、その月はその者の力を増幅させるのです」


「昨日の月がそんな物だったなんて・・・」


皆んな驚きの表情をする。


「あとはお察しの通り、力を制御出来ない私はブラッドムーンによって暴走を始め、気づいた時には・・・周りには仲間の亡骸が転がっていたのです・・・」


「それで、お主はその後どうやって暮らしてきたんじゃ?」


「私が国を滅ぼした後、危険視した世界中の国が協力して私に封印を施しました。しかし、その封印も長い年月で綻びが出来て、つい先日解かれてしまったのです」


「そこにブラッドムーンが来て、この森の中に逃げて来たと」


「はい・・・」


「メアリーさんの事情はわかりました」


「そうですか、では・・・私を殺してくれませんか?」


と予想していなかった事を言い出したのだ。


「このままいけば、私は再び暴走するでしょう・・・ならば、1度私を止める事の出来た貴方達に私を殺して欲しいのです!」


「それは・・・出来ません・・・」


と俺は答えるのだった。


「何故ですか?私は生きていてはいけないのですよ!このままだと皆さんに何をするか・・・」


「確かに、再び暴走して俺達に危害を加える事があるかもしれないですよね。でも、それなら何で助けを求めたんですか?」


「助け?私は1度も・・・」


「俺は森の中で、しっかり助けてと言うメアリーさんの言葉を聞きました。本当は心の底では生きたいと思ってるんじゃ無いですか?」


「私は・・・」


「あの、私も昔に家族を失って死のうと思った事があります。メアリーさんが抱えている苦悩とは比べ物にならないかも知れませんが、こうして今も生きていて、色々な事を経験出来るので良かったと思うのです。なので、こんな事を言うのも身勝手ですけど、生き続けた方が私は良いと思います」


とリッヒさんが言う。


「私は・・・」


メアリーさんは俯くと、ポロポロと涙を流し始めた。


「私だって、本当は生きたいです!でも、この力は私には制御出来なくて、こうして親切にしてくださっている皆さんに何をするかも分からない!本当はこんな力なんて要らなかった!ただ普通に暮らしていたかっただけなんです!」


と力強く言った。


「ここには、とても強い方がいます。知り合いには、色々な事に詳しい魔法使いの方もいます。もし、メアリーさんが生きたいと言うのであれば、私達は協力を惜しみません!」


とアリーが言う。


「でも、皆さんが危なくなるのでは」


「それくらい承知の上じゃ。それに、どのみち他に行くあても無いじゃろ?」


「何でそこまで親切にして下さるんですか?」


「単純に見捨てて置けないからだよ。森の中でのメアリーさんの声に、放って置けないと思ったから」


「ただそれだけで、ですか?」


「うん、それだけ。それにうちにも似た様な境遇の人が居たけど、2人とも楽しく暮らしてるよ」


俺はアリーとリッヒさんを見ながらそう言った。


「本当に良いのですか?」


「勿論ですよ」


大丈夫だと頷く他の人達の様子も見ると、メアリーさんは再び泣き出すのだった。

今まで神の様に扱われ、こういった事も無かったのだろう。


しばらく泣き続けていると、疲れたのかメアリーさんはそのまま眠ってしまった。


「皆んな、ごめんね」


「謝る必要なんて無いですよ。少し危険はありますが、メアリーさんには幸せになって欲しいですから」


「アリシアの言う通りじゃ、あんな話を聞けば見捨てる事なんて出来んのじゃ。とりあえず妾は大賢者に暴走を抑える手立てが無いか手紙でも出すとするのじゃ」


「私もラヴィちゃんに、ヴァンパイアに関する本が無いか聞いてみるよ」


「私も何か文献が残ってないか、ギルドて調べてみよう」


「皆んな、本当にありがとう」



こうして、ヴァンパイアのメアリーさんが我が家で暮らす事になったのだった。



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