お悩み相談
「今回もありがとうございました!」
「こちらこそ毎回ありがとうございます」
今日は月に1度の旅商人コリンさんの訪問の日だ。
いつも色々な物を持って来てくれるの大助かりだ。
「ところでコタケ様、1つお願いがあるのですが・・・こちらに何か売れそうな物とかってあったりしますか?」
「売れそうな物ですか?」
「ここ最近、新しく仕入れた物が少なくてですね。もし魔の森ならではの物とかがあれば嬉しいのですが」
「うーん、売れそうな物ですか・・・すいません思いつかないですね」
「いえ、こちらこそ無理を言って申し訳ないです」
「あっ!そう言えば魔の森の物ではないですけど、最近とある物が手に入ったんですよ!」
そう言って俺が持って来たのは今朝炊いたばかりの白ご飯だった。
「え〜っと、こちらは?」
「この前コリンさんにも聞いた、お米を使って作った物です。是非食べてみて下さい」
「なるほど、これがお米という物ですか。では、頂きます」
コリンさんは一口食べると驚いた顔をして、
「美味しいです!」
と言った。
「こちらは何処で見つけられたのでしょうか?」
「東にあるヒノウラと言う国で生産されてるんです」
「ヒノウラ・・・聞き馴染みはないですね」
「そこまでの地図があるので良かったら差し上げましょうか?」
「はい!頂きたいです!」
俺達は地図が無くてもヒルズの力で行けるのでコリンさんにあげる事にした。
「このお米を取り扱う事が出来れば、かなりの儲けになりそうですね・・・」
流石は商人、儲け話には敏感だ。
「コタケ様、ありがとうございます!お陰で良い物が取り扱えそうです!」
「頑張って下さいね」
とコリンさんを見送って家の中へと戻った。
今日は何をして過ごそうかとリビングで考えていると、ティーがこちらに向かってやって来た。
「のう、コタケよ」
「どうかした?」
「実はな、テンメルスの子供達に父親に贈るプレゼントは何が良いかと聞かれての」
「テンメルスさんへのプレゼント?これまたどうして?」
「もう少しであやつの誕生日があるんじゃ」
「えっ!そうだったの!?」
テンメルスさんの誕生日がもう少しなんて初耳だった。
「それであやつの子供らに何を渡せば良いかと聞かれて悩んでおったんじゃ」
「そっかー誕生日か・・・貴族の人の誕生日に贈る物って俺は分からないけど、子供達から似顔絵とか手紙とか貰えたら嬉しいんじゃないかな?」
「似顔絵と手紙か・・・」
「お金も掛かるわけでも無いし、手元に思い出としても残るからね」
「なるほどのう、確かに良さそうじゃの!よし、子供らに手紙を出すとしよう」
とティーは部屋へと戻っていった。
(テンメルスさんの誕生日がもう少しって聞いたら、やっぱりなんか贈った方が良いよな・・・)
と俺もプレゼントを考えるのであった。
テンメルスさんへのプレゼントを考え終えてそのままボーッとしていると次はシエルさんがやって来て俺の目の前で止まった。
「何かあった?」
「ちょっと聞いて欲しい事がある」
「うん?どうしたの?」
「この前、おっきい蜘蛛と戦った時に今使ってる弓じゃあんまり威力が足りなかった。だから、新しいのを作って欲しい」
今、シエルさんが使っている弓は俺が魔の森の木を使って作り出した物だ。
いくら、腕輪の力でそれなりの物が作れるとは言え限界があった。
「うーん、これ以上の物となると難しいかなぁ〜・・・そうだ!今度街に買い物に行った時に買って来なよ」
「でも、お金がない」
「それくらい出すから大丈夫だよ。いつも家を守ってくれてるんだからね。その時、一緒にエレオノーラさんも連れて行けば良いと思うよ。武器には詳しいだろうし」
「うん、そう言うなら甘える事にする。ありがとう」
そう言ってシエルさんは離れていった。
「コタケさーん。ちょっと良いですかー?」
シエルさんが去ったと思ったら次はルインがやって来た。
「実は少し相談したい事がありまして」
「うん、どうしたの?」
「幽霊って何をあげたら喜ぶんでしょうかね?」
「・・・え〜っと幽霊への贈り物?」
「はい、この前紹介した近くの廃墟に住んでる友達の幽霊に何かあげたいと思いまして」
「うーーーん」
俺は幽霊じゃないので、何をあげたら喜ぶのかさっぱりだった。
頑張って考え抜いた結果、
「ルインの体験した事とかを話してあげれば良いんじゃないかな?」
「私の体験談ですか?」
「その子って、確かその場所から動けなかったよね?色んな場所の事を話したら喜ぶんじゃないかな?」
「なるほど!それは良い案ですね!早速明日お話しして来ます!」
ルインは晴れ晴れとした顔で何処かに行った。
「さて、そろそろ・・・」
と畑の様子を見に行こうと立ち上がると、エレオノーラさんが上から降りて来た。
「コタケ殿、ちょうど良い所に」
「どうかしましたか?」
「うむ、実はクエストの依頼でとある商人の娘の護衛を頼まれてな。昔お世話になった人の娘だから受けたのだが、その時に持って行く剣が決まらないんだ」
「持っていく剣ですか?いつものを使えば良いのでは」
「いつものやつはメンテナンス中でな、代わりの剣を持って行こうと思うのだが、いかんせん見た目が・・・」
そう言って、エレオノーラさんが見せて来た剣は血の色の様な鮮やかな赤色と見ていると漆黒に呑まれそうな黒色の2本で何処か禍々しい雰囲気を放っていた。
「これは・・・」
「ダンジョンでゲットした剣なんだが、実は2本とも魔剣で仰々しい雰囲気をしてるんだ」
「魔剣って、そんなの使っても大丈夫なんですか?」
「この2本は耐久や切れ味が増すと言った簡単な効果だから問題無いんだ。もっと凄い効果が付いた物には呪いなんかも付いている」
「そんな危なそうな物もあるんですか・・・」
エレオノーラさんが持っていた物が危ない物では無いと分かり安心した所で、どちらが良いか考えた。
「それで、どちらが良いと思う?」
「俺は赤色の方が良いかなと思います。黒色の方は少し威圧感があると思うので・・・」
「やはりコタケ殿もそう思うか。なら持って行くのはこちらの剣にするとしよう」
とエレオノーラさんは赤色の魔剣を選んだ。
「そう言えば今度、シエルさんが街に弓を買いに行くので、その時に一緒について行って見てあげてもらっても良いですか?」
「ん?弓か?まぁ、私も弓にはそこまで詳しくは無いが良いだろう了解した」
先程の件をエレオノーラさんにお願いして、俺は畑を見に行くのだった。
畑にも特に問題は無かったので、家戻ろうとすると玄関で狩りから戻って来たリッヒさんに会った。
「お疲れ様」
「コタケさん、私は皆さんの役に立っているのでしょうか?」
とリッヒさんは藪から棒に言ってきた。
「急にどうしました?」
「その、狩りの仕事ばかりで皆さんの役に立てていないのではと思いまして・・・」
不安そうな顔をして、リッヒさんはそう言った。
彼女の人生は、今まで辛い事が多かったから心配にもなるのだろう。
「リッヒさんは、とてもお役に立ってますよ。狩りの仕事は我が家の食卓を支える大事な事ですから。それにリッヒさんが役に立っていなかったらオルフェさんなんてどうなるんですか」
オルフェさんはさっきもリビングでお酒を飲んでグータラしていた。
「ふふ、確かにそうですね」
「そんな役に立つとか立たないとか、そんな事考えないで気楽にして大丈夫ですよ」
「コタケさん、ありがとうございます。気持ちが楽になりました」
リッヒさんも元気になったので、家の中へと入って行った。
俺は畑で採れた野菜をそのままキッチンに運ぶ。
「コタケ様、収穫ありがとうございます」
キッチンではアンさんとリビアさんが料理をしていた。
「コタケ様、少々宜しいでしょうか?」
「どうしました?」
「実はリビアとも話していたのですが、新しい料理のレパートリーが少なくなって来まして」
「食材自体は、この家でもそれなりの量を栽培していますが、香辛料などの種類が少なく困っているのです」
と2人は言った。
「なるほど、香辛料ですか。確かに大事ですね」
目新しい料理が減るのは俺も悲しい。
「それなら、家の庭を拡張してそこに香辛料となる物を植えてみますか?」
「よろしいのですか?」
「それくらいなら大丈夫ですよ。俺じゃあ何を育てれば良いのか分からないので、そこはお2人にお任せしますが」
「分かりました。アンと一緒にリストアップしておきます」
料理の事は2人に任せて、庭の拡張を近々すると頭の片隅に置きつつリビングに戻ると、
「うわ〜ん、コタケ君聞いてよ〜」
とオルフェさんが泣きついて来た。
「どうしたんですか?」
「ベルにギューって抱きつこうとしたら、ママ臭いって言われて逃げられちゃったよ〜」
確かにオルフェさんは酒臭かった。
「うえ〜ん、ベルに嫌われちゃったー」
「はぁ、ちょっとはお酒を控えたらどうですか?」
「でも、私の楽しみの1つだし」
「それは分かりますけど、その内本当にベルちゃんに嫌われるかもしれませんよ」
「そんなのやだー!」
「それなら軽くシャワーを浴びて匂いを取ってきて下さい」
「うん」
とオルフェさんがトボトボと風呂場へと向かって行った。
すると後ろからベルがこちらにやって来た。
「ママ怒って無かった?」
「全然怒ってなかったよ?」
「私、ママに臭いって酷い事言っちゃったから・・・」
あれは実際に臭かったから、そう言ってしまっても仕方が無いとは思うが、
「ママに嫌われちゃったらどうしよう」
ベルは必死に涙を堪えながら言った。
「大丈夫だよ。それくらいでオルフェさんがベルの事を嫌いにはならないよ」
「ほんとに?」
「本当だよ。でも、ベルがもし悪い事言ったなって思ってるんだったら後で謝ろっか。オルフェさんも許してくれるよ」
「うん、分かった!」
とベルは風呂場からオルフェさんが帰ってくるのを待って、ごめんなさいと謝っていた。
そんなベルにオルフェさんは、
「うわーん、ベルは悪くないよー!私が悪いんだよー!」
と泣きながら抱きしめていた。
これでオルフェさんもしばらくは、お酒を控えてくれる事だろう。
そんなこんなで、俺の1日は過ぎていった。
「はぁ、なんか今日は相談事が多かったよ」
俺はベッドの上で隣にいるアリーにそう言った。
「ふふ、それだけワタルさんが頼りになると言う事ですよ」
「それはまぁ、嬉しいけど」
「ワタルさんも悩み事があったら私達に相談してくれて良いんですよ」
「ありがとう。その時はそうさせてもらうよ」
「是非頼って下さいね」
アリーは笑顔でそう言った。
「あの、それでですね。私からも1つありまして・・・」
「どうかしたの?」
「ここ最近、旦那様が忙しくてあまり構ってもらえてないなぁと・・・」
アリーは顔を少し赤めて言った。
確かにヒノウラに行ったり、蟻達を助けたりと少し忙しくしていたので、最近はご無沙汰だった。
「やっぱりアリーは可愛いね」
「ふぇ!」
思わず口に出してしまっていたが、本当の事だし仕方ない。
俺はそのままアリーに触れて灯りを消すのだった。
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