弟子入り
「今日で1ヶ月経ったけど、シオリさんは大丈夫かな?」
「そう言えば今日で1ヶ月でしたか・・・治っていると良いのですが」
「明日にでも、聖国に行ってオレイユさんに状況聞いてみる?」
「えぇ、そうしますか」
そう言うわけで翌日、聖国の城へと向かうとオレイユさんの自室へと通された。
「やぁ、2人とも。ヒノウラの姫の状況を聞きに来たのだろう?」
「そうです。先生なら何か知っているかなと思いまして」
「実はまだ、私も何も知らないんだ。だから2人を待っていたんだ」
「待っていたと言うと?」
「ほら、仲間の精霊のテレポートがあるだろ?それを使わせて貰おうかと思ってな」
「それは大丈夫ですけど、オレイユさんもついて来るんですか?」
「駄目か?」
「駄目では無いんですけど、仕事とかもあるのでは・・・」
「それなら問題ない!今日は休みを取ったからな!だから、誰にも見られない私の部屋に招いたのだ」
「先生、もしかしてテレポートを体験したくて用意して待っていたんですか?」
「ハハ、バレたか。私も折角だから体験してみたくてな、昨日までに今日の仕事を終わらせて後は大臣達に任せたのだ」
「先生はそう言う所がありますからね。まぁ折角お休みなら一緒に行きましょうか」
「よし、来た!準備は出来てるからいつでも良いぞ!」
という事で、早速ヒノウラへのゲートを開いた。
一応、出る先は他の人には見られない様にシオリさんの部屋にしてある。
まず先に、俺とアリーがゲートをくぐった。
「わっ!」
部屋に入った途端、左側から驚いた声が聞こえた。
「あれ?コタケ様とアリシア様じゃないですか」
「シャロンさん、1ヶ月ぶりですね。シオリさんも驚かせてしまってすみません」
「あっ!あの時、助けて頂いたお二方ですね。本当にありがとうございました」
「シオリさんもお元気そうで良かったです」
シオリさんは椅子に座りシャロンさんとお茶をしていた様だった。
「それで、今日はこちらに何を?」
「シャロンちゃんとシオリさんの様子を見に来たんですよ。あれから1ヶ月が経ちましたからね。それと、もう1人一緒に来る人がいるのですが・・・」
アリーがそう言うと、ゲートからオレイユさんが出て来た。
「おぉー!本当に一瞬で別の場所に行けるんだな」
「お義母様!?」
「おっ!シャロン、元気そうだな。良かった良かった。それからその隣にいるのはヒノウラのお姫様かな?」
「は、はい。ヒノウラ・シオリと申します。シャロン様のお義母様と言う事は・・・」
「聖国モントロレの女王、オレイユだ。よろしく頼む」
「お義母様はどうしてこちらに?」
「シャロンが元気にしているか見に来たんだよ。今日は休みを取ったからな」
「そうですか」
オレイユさんの言葉を聞いたシャロンさんは嬉しそうにしていた。
「あの、オレイユ様。長い間シャロン様を派遣して下さってありがとうございました」
「シャロンが自分から言い出した事だから構わないさ。まぁ、ただ我が国としては何かしらの対価を貰おうとは思っているがね」
「そう言った事はおじいさまの判断になりますが、私からもお礼として口添え致します」
「おぉ、それは助かるな。聖国としては治療に対して費用とこれを機にヒノウラとの国交を結びたいと考えている」
「治療費は分かるのですが、国交ですか?」
「あぁ、ヒノウラは独自の文化を築いているからな良い刺激になりそうだ」
「そういう事でしたら、こちらも是非お願いしたいですね」
「それから、こっちのコタケ殿とアリシアもな欲しい物があるそうだ」
「そうなんですか?何でも言ってくれて大丈夫ですよ!」
「それなら、ヒノウラで生産されてるお米が欲しいんですが」
「そんな事でよろしいのですか?」
「むしろ俺はそれが欲しいんです。毎月一定の量を貰えたらなって思ってて・・・」
「多分大丈夫だと思いますよ」
「是非お願いします」
「シャロン様は何か無いのですか?」
「ん〜、私は特には無いですね」
「何か思いついたらいつでも何でも申して下さいね。シャロン様は私の恩人ですから」
「ふふ、ありがとうございます」
「それで治療もして頂いたのに厚かましいのですが、私から1つだけお願い事がありまして・・・」
「何でしょうか?」
「私をシャロン様の弟子にして下さい!」
シオリさんはそう言って頭を下げた。
「で、弟子ですか?」
「はい!シャロン様に助けて頂いて、私も誰かの助けになれたらなと思いまして」
「それは素晴らしい事だと思いますが、私の弟子となると回復魔法を覚える事になりますが、シオリさんは魔法は使えましたっけ?」
「いえ、一度も使ったことは無いです・・・」
「ふむ、そうなると自分がどの魔法を使えるかを確認する所からだな。回復魔法を使える者は多くないからな、もしかすると適正が無いかもしれないぞ?」
「そうだったとしても、シャロン様のお近くで勉強をしたいのです!」
「そう言う事なら良いんじゃないか、シャロン?」
「しかし、私もまだまだ未熟な身で」
「なに、これも修行のうちだ。それにお前はもう立派に聖女を務めているさ」
「そうですか、お義母様がそう言うのであれば・・・あっ、でもシオリさんもダンゾウ様の許可がいるのでは?」
「そうでした・・・ちょっと私、行って来ます!」
シオリさんはそう言って立ち上がると部屋を出て行った。
そして10分後、シオリさんがダンゾウさんを連れて帰って来た。
「これは、コタケ殿とアリシア様。お久しぶりです・・・と、こちらの方は?」
「聖国モントロレの女王オレイユ・ラ・マズロルだ。もしやヒノウラの王か?」
「これは女王様でしたか!?私はヒノウラの王のダンゾウと申します」
「1ヶ月間、シャロンが世話になったな」
「いえいえ、私達の方こそシオリを助けて頂いて感謝してもしきれません」
「そちらの姫が回復した様で何よりだ。今後は国同士で仲良く出来たら良いなと思っている」
「それはこちらも何よりです。また、日を改めて使者をお送り致しますので、その時に詳しい話を致しましょう」
2人がそう話していると、
「おじいさま!そんな事よりも先程の件ですが」
シオリさんがそう言った。
「そんな事って、国同士の大事な話なのだがな・・・」
「ハハ、そちらの姫も中々元気な子だな」
「えぇ、しばらく寝たきりだったので余計に元気が有り余っているのでしょう。それで、確かシャロン様に弟子入りしたいんだったかな?」
「はい!」
「うーむ、そうだなぁ。確かにシャロン様の元で学べるのは良い経験にはなるだろうが・・・正直な所、シオリに何かないかと心配になるんだ」
「おじいさま・・・」
「まぁ、その気持ちは私も分かる。この子に何かあったら私も嫌だからな。それでも、この子は聖女でもあるからな色々と経験をさせてやりたいんだ」
「確かに、シオリもいずれ王位を継ぐ可能性があります。その時に、他の国々の事を知っていると良いでしょうし」
とダンゾウさんは悩み込んでいた。
「おじいさま、私も良い大人です!自分の身は自分で守れます!」
「はぁ、そうだな・・・いつまでも子供のままじゃないもんな。よし!シャロン様について行く事を許可しよう」
「ありがとうございます、おじいさま!」
「日程に関しては、また後日話し合うとしよう」
「私もまだ少し滞在いたしますので、その間に適正も見ておきましょう」
「よろしくお願いします!」
こうして、シオリさんがシャロンさんに弟子入りしたのだった。
「さて、元気な姿も確認出来たし我々は帰ることにしようか」
とオレイユさんが言ったので、聖国へのゲートをもう一度開いた。
「帰られる前に少しお待ち頂けますか?」
ダンゾウさんがそう言い部屋をで行くと、今度は3つの俵を持って部屋に戻って来た。
「これは?」
「コタケ殿は何やら米が好きとの事ですので、お土産としてこちらをどうぞ」
「凄く嬉しいです!」
俺はそう言い、米俵を持ち上げようとしたら、
「うっ、おもっ!」
「ハハ、なんせ60kgは有りますからね」
(それをダンゾウさんは飄々とした顔で持って来ていたのか・・・)
「流石にこれは持ち運べませんね」
どうしようかと思い考え、俺はゲートの行き先を変更してその先から人を呼んできた。
「どうした、コタケ殿?私に運んで欲しい物?」
俺は、ゲート先からエレオノーラさんを連れて戻って来た。
「あら?そちらの方は?」
「仲間のエレオノーラさんです。アリーの専属の騎士で我が家の安全を守ってくれてるんです」
「まぁ!騎士様でしたか、他にも一緒に住んでる方がいらっしゃるのですか?」
「えぇ、まだ他にもいますよ」
「いずれ、皆様のお家にお邪魔させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「大丈夫ですよ。辺鄙な所にありますけどね」
それから、エレオノーラさんに米俵を家へと運んで貰い再びゲートの行き先を聖国に変更した。
「それじゃあ、シャロンも体に気を付けてな」
「はい!お義母様もお仕事頑張ってください!」
「皆様、今日はありがとうございました。次にお会いする時は、シャロン様の弟子としてお会いしましょう!」
こうして、ヒノウラから聖国にオレイユさんを送り届けてから我が家へと帰ったのだった。
 




