雨の日
「ここ最近、雨の日多いね」
俺は、ザーザーと降る雨をリビングの窓から眺めながら呟いた。
「この世界に来てからあんまり雨の日って無かったけど、こんなに連続して降ることって珍しいの?」
「この辺りは1年に1ヶ月間だけ雨が多くなる時期があって、今が丁度その時って感じですね」
アリーがそう答えてくれる。
「こっちの世界にもそんな時期があったんだ。俺の居た世界でもそんな時期があったけど、嫌になってくるよ」
「そうですね。雨の日は家に籠るしかないので憂鬱な気分になりますよね。まぁ、例外の方もいる様ですが・・・」
そう言いつつアリーは窓に視線を向ける。
その先には外套を着て、雨が溜まって庭に出来たちょっとした小川に紙の船を浮かばせて遊んでいるベルとオルフェさんの姿があった。
「ほんとあの2人は元気だよね」
「風邪を引かないか心配です」
「そう言えばお嬢様は雨の日ですが大丈夫なんですか?」
「どう言うこと?」
リビアさんが、そんな事を言ったので聞いてみる。
「昔から雷が怖くて、ご両親と一緒に寝たりエレオノーラ様をすぐ側に待機させたりしてたんですよ」
「はは、そう言えばそんな事もあったな」
「もう、リビアったら。私だって立派な大人ですから!雷の1つや2つくらい・・・」
そう言いかけた時、ピカッと外が光ってゴロゴロ、ドカーンと大きな音が鳴った。
「きゃっ!」
アリーは咄嗟に目を瞑り耳を塞いだ。
「うぅ・・・」
「やっぱりまだ、克服出来てないじゃないですか」
「違うんですよ、いきなり光って大きな音が鳴るからビックリするんです」
アリーは少し涙目になりながらそう言った。
「そろそろ外の2人も中に入れた方が良いんじゃないのか?」
ティーがそう言ったので、俺は窓へと向かった。
すると、2人とも両手を広げて空を仰いで雨に打たれていた。
(何処かで見た事のある構図だな)
そんな事を思いつつ、窓を叩いて家に戻ってとジェスチャーを送った。
それに気づいたオルフェさんが、ベルを連れて戻ってきた。
「楽しかったね〜」
「うん、楽しかった!」
「それは何よりで、でもまずはしっかり体乾かしてね」
いくら外套を着ていたとはいえ、全身ビショビショなのでタオルと魔法で体を乾かしてから家の中に入れた。
「ただいま〜、皆んなは何してたの〜?」
「雨の日のお話をしてました」
「雨の日の話?」
「アリーが雷が苦手だって言う事とか」
「あはは、そうなんだ。可愛い〜」
オルフェさんは笑いながらそう言い、アリーが何で言っちゃったんですかと言った様な顔をこちらに向けて来た。
「そう言えば、ここ最近のシエルちゃんの翼の羽も凄い事になってるよね〜?」
オルフェさんが言う様にシエルさんは、雨による湿気のせいで朝起きて来ると羽がゴワゴワしていて、朝からブラッシングで大忙しなのだ。
「あんなの初めてだった」
「そうなの?」
「私達の里は雨なんて滅多に降らないから」
「私が暮らしていた所とは真逆ですね」
そう言ったのはリッヒさんだ。
「ダークエルフの里は、雨が多かったおかげで自然も豊かでした。なので、意外と雨は好きですね」
「妾も雨は好きじゃぞ。ドラゴンの状態で水浴び出来るからの」
「雨を水浴び代わりにするのか・・・」
「結構気持ちいいんじゃぞ、お主らも試してみると良い」
「そ、それはまた今度ね・・・ルインは雨の日ってどう?」
ティーが雨が丁度降ってるから試してみろと言う顔をしていたので、ルインに話を振って逃げた。
「私ですか?うーん、特にはって感じですけど、元いた廃屋敷は所々雨漏りしていてそこから入る雨のピチョンピチョンって音は少し好きでしたよ」
「確かにそう言う音が好きな人もいるよね」
「あっ!でも雨の日は暗いので、ふざけて肝試しに来る人間が多かったです!」
「そうなんだ、じゃあやっぱり嫌い?」
「いえ、そういう時は雷がピカッて光った時に一瞬だけ姿を現すんですよ。その後に扉をガチャガチャ開け閉めしたら皆んなビックリして逃げて行きましたね。意外とそれが楽しかったです」
「私だったらトラウマになりそうです・・・」
想像したのかアリーが身震いしていた。
こうして、雨の日の事を話しているといつの間にか外の雨も止んですっかり晴れていた。
「よーし!それじゃあ晴れた事だし皆んなでお外であそぼー!」
とノリノリなオルフェさんに連れらて外に出る。
「わぁ!ワタルさん空を見てください!」
顔を上げて何やら喜んでいるアリーに言われて空を見てみると・・・
そこには綺麗な虹がかかっていた。
「虹なんて久々に見たな」
「この景色が見れるのなら、雨の日も少しは良いかもしれないですね」
「確かにそうだね」
俺は少しずつ消えていく虹を見ながらそう呟くのだった。
もうそろそろ梅雨も終わりますね。
雨が多いのも嫌ですが、これからは暑い日も続くのでそれも嫌ですね。
個人的に秋から冬の初めにかけてが1番過ごしやすいので、待ち遠しいです。
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