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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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魔力欠乏症

ヒノウラにやって来た翌日。

今日もこの国のお姫様であるシオリさんの治療の続きを行う。

朝食を食べ終えて、早速昨日行った部屋へと向かう。

ちなみに朝食には、昨日と同じくご飯と味噌汁に加えて、だし巻き卵が出て来て美味しかった。

あとは納豆なんかもあれば嬉しいのだが、恐らくアリー達の口には合わないだろう。


部屋の前に到着して、シャロンさんがノックをした。


「どうぞ」


か細い女性の声が中から聞こえて入室する。


「あっ、シャロン様。おはようございます」


中にはシオリさんが布団で横になっており、その側にダンゾウさんも控えていた。


「おじいさまから聞いたのですが、シャロン様は聖女様であられるんですね」


「はい、まだまだ未熟者ですけどね」


「そんな!私を助けて下さったのですからシャロン様は凄いお方です!」


「ふふ、そう言って下さるととても嬉しいです。さて、それでは今日はシオリ様の体を確認していきますね」


「は、はいお願いします」


「まず初めにお聞きしたいのですが症状が出始めたのはいつ頃からでしょうか?」


「たしか1ヶ月程前だったかと思います。初めは体が少しだるい感じがして仕事の疲れが溜まっているのかなと思いました。でも、それが1週間続いて更には熱も出る様になりました。熱は1週間続いて熱が下がった頃には起き上がる力も出す事が出来ず寝たきりになってしまいました」


「それから私が各地の回復士達に声を掛けたのですが一向に治らず、つい2日前にこの子は気を失ってから目を覚ます事が無かったのです」


シオリさんに続けてダンゾウさんがそう説明した。


「なるほど・・・だいたい分かりました。ちなみに今の体調はどうですか?」


「昨日よりも良く無い気がします」


「やはりそうですか。私の魔法による魔力が無くなって来ているのでしょうね」


「聖女様、やはりシオリは・・・」


「魔力欠乏症で間違いないかと」


「治す手立ては無いのでしょうか?」


「希少な病気な上に、治療方法も確立されていないと聞きます。昨日の様にして、魔法で魔力を与え続けても根本的な事は解決しませんからね」


「やはり、私はこのまま・・・」


とシオリさんは悲しそうな顔をした。


「ねぇ、ティーは何か知らないの?」


長年生きているティーならば何か知っていないかと思ったのだが、


「すまんのう、妾はそう言った事に関しては門外漢での」


「そっか・・・」


「あの〜、もしかしたら先生なら分かるかもしれません」


手を顎に当てながら考えていたアリーがそう言った。


「確かに、お義母様なら分かるかもしれませんね!」


「シャロン様のお母様ですか?」


「はい、血の繋がりはありませんが私を拾って育ててくれた方で、聖国の現女王で先代の聖女でもあるんですよ!」


「先代の聖女様なのですか!?」


「私の一番尊敬する人です。でも、ここから聖国に帰るには片道で1日半はかかりますし往復で3日となるとシオリさんに何かあるとマズイですよね・・・」


「ワタルさん・・・アレを使えないでしょうか?」


悩むシャロンさんを見て、アリーがそう言った。


「そうだね、アレしかないよね」


「アレとはなんでしょうか?」


俺達3人以外は何の事か分からず、シャロンさんがそう言った。


「シャロンさんは一回見た事のある物ですよ。ダンゾウさんとシオリさんには、今から見せる物を絶対に口外しないと約束して欲しいのですが大丈夫ですか?」


「シオリが助かる可能性があるのなら、墓場まで持っていく」


俺の言葉に2人は頷いた。

そして、俺はヒルズをこの場に呼び出した。


「羽の生えた小ちゃな女の子?」


「こちら仲間の精霊のヒルズです。実は彼女は行ったことのある場所にテレポートが出来まして、それで今から聖国に向かおうと思います」


「テレポート!?そんな事が可能なのか!」


「はい、あくまでも行ったことのある場所限定ですけど」


「こ、これは確かに口外は出来ないな・・・しかし、何故我々の為にそこまで」


「こちらにも大事な事情があるんですよ」


オレイユさんにお米を勝ち取って貰うという大事な事情が・・・


「さて、早速向かうので暫く席を外しますね」


「それなら妾はここで待っておるのじゃ」


「了解。それじゃあシャロンさんヒルズが出してくれたこのゲートを潜って下さい」


「き、緊張しますね」


「一瞬なので大丈夫ですよ」


「わかりました!それじゃあ行きますよ〜えいっ!」


そう言ってシャロンさんは飛び込み、俺達もそれに続いた。

ゲートから出た先は、聖国の玉座の間に繋がっていた。

先日はオレイユさんに怒られたが、今回は急を要するので仕方がないだろう。


「いきなりシャロンが出て来て、何事かと思ったぞ。この前も言ったがな、ここにいきなり出るのは・・・」


「お義母様、ストップです!お説教は後から受けますので、こちらのお願いを聞いてください!」


「お、おぉ」


シャロンさんの勢いにオレイユさんが少し困惑していた。

改めてオレイユさんにシオリさんの状態を伝える。


「なるほどな、魔力欠乏症か・・・治療法はある事にある」


「本当ですか!」


「ただ、あくまでも治ったという事例が数件報告されているだけで、それが確実な治療法では無いんだ」


「それでも構いません!教えて下さい!」


「あぁ、魔力欠乏症は遥か北の寒い土地にしか生えていない花を材料とした薬で完治したと聞いた事がある。私も実際に目にした事はないから確証は無いがな」


「北の寒い土地にしか生えてない花・・・」


オレイユさんは何か聞き覚えのある様な事を口にする。


「その花の名前は?」


「ルードフラワーだ」


「聞いた事が無いですね」


シャロンさんはそう言ったが、俺とアリーはキョトンとして目を合わせていた。


「あまり流通もしていない上に、ここ最近その花が咲いている場所に魔物が住み着いたみたいでな、更に流通が滞っているみたいなんだ」


「そうなんですか・・・」


オレイユさんとシャロンさんは諦めるしか無いのかと悔しい表情をしていたので、


「あの、その花なら多分手に入りますよ」


俺はそう告げた。


「本当ですか!?」


「実は、つい最近依頼を受けてその住み着いた魔物を討伐したんです。なので、まだいき渡って無いだけで問題なく流通していると思いますよ」


「そうなのか!だが、いつ入ってくるかは分からないんだよな・・・」


「それも何ですけど、討伐の時に手伝って貰った人がいくつか回収していたので、もしかしたら分けて貰えるかも知れないです」


「コタケ様!何とかその方から頂けないでしょうか?」


「それじゃあ、試しにその人の所まで行ってみましょうか」


そう言い、ヒルズを呼んでラーブルク龍王国までのゲートを開いて貰い、アリーと向かった


「大賢者さーん、いますかー?」


「おや?コタケさんとアリシアさんではないですか?本日はどうかされましたか?」


「実は少しお願いがありまして・・・」


「お邪魔します!」


俺がお願いを言おうとするとシャロンさんが元気よく入って来た。


「あ、ついて来たんですね」


「自分からお願いしたかったので!」


「そちらは初めての方ですが、どちら様でしょうか?」


「初めまして聖女を務めております、シャロン・ラ・マズロルと申します」


「ほぉ〜、当代の聖女様でしたか。初めまして、私は大賢者と申します」


「ダイ・ケンジャさん?ですか?」


「あっ、いえそれは肩書きと言うか何と言うか・・・まぁ、私の事はいいでしょう。それよりも、何か急ぎの要件な様で?」


「はい、実はルードフラワーをお譲り頂けないかと思いまして、コタケ様達と以前取りに行ったとお聞きしたものでしたので」


「そう言えば、あのドラゴンを倒した時に採取しましたね。しかし、何故あの花が必要なんですか?」


「とある国のお姫様が魔力欠乏症で、非常にまずい状況でルードフラワーを使ったお薬が完治に役立ったと聞いたからです」


「なるほど、そう言う事でしたか・・・まぁ、コタケさんのお知り合いのお願いですからね、お譲りしましょう。ちょっと待っていて下さいね」


大賢者さんはそう言って奥の部屋へと入って行った。

中からガラガラ、ドーンと何か物が倒れる音が聞こえてくるが大丈夫なのだろうか?

しばらくすると部屋から出て来た大賢者さんの手には1つの瓶があり、中には黒色の丸薬と思わしき物が入っていた。


「はい、こちらがお薬になります。私が自ら改良を加えて、より効果が出る様にした物です。1日1回1ヶ月間続ける事で完治出来ると思います。ただし、人に投与した事はありませんので当然ながらリスクはありますよ?」


「それでも本当に助かります!」


「お礼はその方を助けれたらで結構ですよ。私としてもデータが取れる良い機会ですので」


「ありがとうございます!それじゃあ早速戻りましょう!」


別れを告げて、そのままヒノウラの姫の部屋まで戻った。


「おぉ!戻られましたか!それで結果の方はいかほどに?」


「治療方法が見つかり、お薬を貰って来ました」


「本当ですか!」


「ただし、治る確証はない上に最悪死にいたるケースもあります。それでも、この薬を飲みますか?」


シャロンさんはシオリさんに向けて、ありのままを伝えた。


「はい、それでも大丈夫です!僅かにでも治る可能性があると言うのであれば私はその薬を飲みます!」


シオリさんはそう言ってシャロンさんから薬を受けとり、1粒飲み込んだ。


「ふぅ・・・すぐに何かある訳ではないでしょうが身構えてしまいますね」


「これから1ヶ月間、1日1回このお薬を飲んで下さい。それと・・・私も1ヶ月間この国にお邪魔させて頂こうと思いますが大丈夫でしょうか?」


「えっ!?そんなの申し訳ないです!」


「もし、何かあればすぐに対処できますからね。出来る事なら1ヶ月間そばにいたいのです」


「しかし・・・」


「聖女様、お願い致します」


シオリさんに代わりダンゾウさんがシャロンさんの滞在をお願いした。


「おじいさま」


「シオリ、ここは聖女様のお言葉に甘えようじゃないか。もし、何があっても我々では対処できないからな」


「ダンゾウ様のおっしゃる通りですよ」


「わかりました。シャロン様がそう言って下さるのであればお願い致します」


「はい、少しの間お願いしますね」


こうして、治す手立てが出来たのでシャロンさんはヒノウラに1ヶ月間滞在する事となり、俺達は流石にずっと滞在する訳には行かないので、その日のうちに帰る事にした。

シャロンさんには1ヶ月後にやって来ると伝えて、ヒノウラから聖国にヒルズのテレポートで戻り、オレイユさんにシャロンさんが少しの間滞在する事を伝えた。


「1ヶ月か分かったよ。そうなるとお米も姫の体が治った後になりそうだな」


「そっちの方も少し待ってますね」


「あぁ、すまないな。だが確実に勝ち取るから安心してくれ」


オレイユさんとそう約束を交わして、俺達は家へと帰ったのだった。


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