新たな住人
シエルさんがやって来て、1週間が経った。
彼女は基本的に狩りの手伝いをしてくれている。
前回、急ごしらえで作った弓よりもちゃんとした物を作った所、500m離れた獲物に命中させていた。
他にも料理に興味津々で、里では果物や野菜をそのまま食べていたらしく、調理をするのが珍しいそうだ。
キッチンでアンさん達の作業をジーッと見つめていた。
それから、シエルさんはお風呂に入った後に翼を乾かしながらブラッシングしてお手入れしているのだが、皆んながそのブラッシングの役を買って出た。
だんだんフワフワになっていく、シエルさんの翼を1番に堪能出来るからこぞってやりたがるので、当番制で毎日交代しながらやる事になった。
「そんなに楽しいのかな?私としては面倒だったからありがたいけど・・・」
とシエルさん自身は不思議そうな顔をして、そう言っていた。
そうこうしている内に、早くも1週間が経ったのだ。
「そろそろ、里に帰ろうと思う」
朝食時に、シエルさんはそう告げた。
「あんまり長居すると邪魔だろうし、1週間も経ってれば探してる人達もほとんど居なくなってると思うから」
「シエルさんが決めた事なら、私達には口出し出来ませんね。迷惑でも無いので、いつまでも居て貰っても大丈夫なんですけどね」
とアリーは言った。
「一応、里にも顔を出しておきたいから」
「またいつでも遊びに来て貰って大丈夫ですからね!」
「うん、ありがとう」
こうして、その日のお昼にはシエルさんは飛び立って行った。
それから4日後、クロ達と外で戦闘訓練をしていると上空に何やら人影があったのだ。
もしやと思い、着地して来るのを待つと、
「やっぱりシエルさんだった」
「コタケさん、久しぶり」
4日前に、里に帰ったはずのシエルさんが再びやって来たのだ。
しかも、何やら大きな麻袋を抱えている。
「今日はどうしたんですか?」
「中に入って説明しても良い?」
そう言うので、家の中に入るとリビングに居たオルフェさんが、
「あ〜!シエルちゃんだー!久しぶり〜」
と大きな声をあげて、それを聞いた他の人達が集まって来たのだ。
「わぁ〜、本当にシエルさんです!今日はどうされたんですか?」
「それを言おうと、ここに来た。実は・・・」
「分かった!ここに住みたいんでしょ!」
シエルさんの言葉を遮り、オルフェさんはそう言ったのだ。
「まさかそんな訳・・・」
と俺が違うだろうと言おうとすると、
「凄い、オルフェ。なんで分かったの?もしかして心を読める様になったとか?」
シエルさんはそう言ったのだった。
「あはは〜、当たってたー!心は読めないけど、何となくそうかなぁーって思っただけだよー」
「実はオルフェの言う通りで、ここに住まわせて欲しいと思って、やって来た」
「それはまたどうして?」
「あの後、無事に里に帰れて今まで通りの生活を送ろうと思ったんだけど、つまらなかった。だから、いっその事ここに住まわせて貰おうかなって思って・・・一応、1週間のお礼とこれから住まわせて貰う為の代金としてこんなの持って来た」
シエルさんはそう言って、持っていた麻袋を開いた。
そこには、一見普通の桃が100個くらい入っていたのだ。
「桃ですか?」
「うん、翼人族の里で栽培されてる桃。私達の主食で、病気や怪我の回復を促進する作用があるから、私達は自然治癒が早くなってるの。だから、普通の人達が食べたら怪我とかはすぐ治ると思う。ここにはアリシアさんが居るから、需要はあんまり無いと思うけど」
「そんな事無いですよ。私の回復魔法にも限度がありますから、食べただけで治るなんて凄いですよ」
「それなら良かった・・・やっぱりこれだけじゃ駄目?里には腐る程あるからもっと持って来た方が良かった?」
「いやいや、これだけあれば充分だよ。ただ両親とかは心配してないのかなって」
「親は私が幼い頃に病気で死んじゃったから、問題ない」
「あっ、そうだったんですね・・・すいません」
「別にもう昔の事だから気にして無い。それで、私は住んでも良い?」
再びそう問われて俺は、悪い人では無いし、ここまで来て他にアテも無いだろうしと考える。
「分かりました!ここに住んで貰っても構いませんよ」
「ありがとう」
「それじゃあ、シエルさんが加わったのを記念して、今日は盛大にパーティーをしましょう!」
「わーい!パーティーだー!」
ベルとお酒をたらふく飲めると思ったオルフェさんが大喜びだった。
こうして、シエルさんが正式に我が家の一員になったのだった。
今回、短いお話になって申し訳ないです。
実は少し体調を崩してしまいました。
その為、投稿の方を少しお休みさせて頂きます。
1週間ほどでまた再開出来ると思うので、次回の投稿日は決まり次第活動報告でお伝えさせて頂きますので、しばらくお待ち下さい。




