運動会:午後の部②
午後の部第一種目の借り物競走を終えて、続けて第二種目の玉入れを行う。
初めは障害物競走も取り入れる予定だったのだが、ティー達が提案した物が、そり立つ大きな壁をよじ登る物や回転する丸太の上でバランスを保ちながら前に進んでいくという前世のテレビ番組で見た様なハードなタイプのものだったのだ。
流石に、それは危ない上にクリア出来る人が限定されてしまうので却下となった。
それならばと思い、学校レベルの障害物競走ならいけるのではと考えたのだが、サイズの違うヒルズやホープ、そもそも物に触れる事の出来ないルインが参加出来ないのに気がつき、障害物競走は無しとなった。
そして、代わりに行われる事になったのが玉入れだった。
野球ボール程の大きさの柔らかい玉を6m程の高さに設置されている大きな籠に入れて行く。
この種目は全員で行い、制限時間は3分間となる。
玉1つにつき1点となり、多く入れたチームには追加で10点が与えられる。
籠の下に大量の玉が設置され、少し離れた所に全員が位置についた。
クロが魔道具を使って、バンッと合図を鳴らして、一斉に走って籠の下へと向かって行く。
「みんな、とりあえず投げまくって!」
籠の下に着くと俺はそう指示する。
6mと高めの位置に設置されていて少し難しいので、狙って外すよりも投げる数を増やして、入る確率を増やす作戦だ。
「そぉ〜れ〜」
とオルフェ、エレオノーラ、クラニー、フィーア、エムネスの5人は流石というか、かなりのスピードで拾っては投げを繰り返している。
ヒルズは大きさ的に1個の玉を抱えるのが限界だが、飛んでいる為、そのまま籠まで上昇して確実に入れて行っている。
ルインも、霊力で玉を浮かして確実に入れている様だが、集中力がいる様で、途中で途切れて落としたりもしている。
フランさんは、
「えいっ!えいっ!」
と声を上げながら玉を投げているが、籠の下に当たったり側面に弾かれたらしていて中々入っていない様だ。
しばらく眺めていると、やっと1つの玉が入って、
「やりましたわー!」
まるで白チームに勝利したかの様に大きな声で喜んでいた。
さらに他の人達に目をやるとテンメルスさんが、両肩に子供達を乗せて玉を投げさせていた。
テンメルスさんの足がプルプルと震えているのでかなり無理をしているのだろうが、子供達はとても楽しそうにしているし、意外と籠にも玉が入っているので、固定砲台の様になっていて効率もまぁまぁ良さそうだった。
その側ではラヴィさんが玉を集めて子供達に渡していた。
多分、投げるのが嫌で裏方役に徹しているのだろう。
そして大賢者さんは、さっきからウロウロしながら玉を集めていた。
「ずっと集めてないで、たまには投げてくださいよ」
「ふっふっふっ、準備をしていたんですよ」
「準備ですか?」
「まぁ、見ててください」
そう言って、集めた玉をおもむろに空中に投げ捨てると、
「プチメテオー」
と以前魔物を倒す時に使った魔法に似た事をしたのだ。
「あの・・・それって・・・」
「前に見せた魔法を即席で改良してみました!」
「確かにそれは凄いんですけど・・・」
「ちょっとー!私に玉が当たってるんですけどー!」
魔法を即席で作ったのは凄いのだが、投げた玉の9割は籠から外れてしまっている上に、外れた玉がオルフェさんに当たったりして周りに被害が出ている。
そして、実は今回の玉入れは魔法は禁止なのだ。
魔法を使えば簡単に入れらてしまうので、それでは面白くない。
なので当然、審判役のクロが大賢者の元へとやって来て、失格の意味を込めたバツの札を見せたのだった。
「そんなぁ〜」
「ルールはしっかり聞いててくださいよ・・・」
「すいません、寝てて聞いてませんでした・・・」
結局、大賢者さんは失格となり少し離れた場所で待機させられるのだった。
人数不利を背負った我がチームが勝つ為にも、俺も頑張らないとと気合いを入れ直して、籠に狙いを定めて玉を投げ入れて行く。
開始から1分半経過した所で相手チームの方を見てみると、何故か倒れているオーウェンさんがいたり、アイラさんをメアさんが肩車していたりと白チーム側も色んな形で奮闘している様だ。
少し眺めているとアリーがピョンピョンとジャンプして頑張って玉を投げ入れていた。
外して悔しい表情をしたり、入って嬉しい顔をしたりと可愛すぎて、つい見つめてしまっていた。
視線に気付いたのか、笑顔でこちらに振り向いて手を振って来た。
可愛かったので思わず手を振り返していると、
「ゴホン!」
といつの間にかエレオノーラさんが背後に来ていて、イチャついてないで、玉を投げろと言っている様だったので、残りの時間は真面目に取り組んだ。
バンッという音と共に3分が経過して終了となった。
ここからは、籠に入れた玉を数える。
1個ずつ各チームの代表である俺とアリーが取り出して行く。
「いーち、にー、さーん、よーん、ごー」
と皆んなで数えながら籠に入っている玉を投げて行く。
「はちじゅう、はちじゅういちー、はちじゅうにー」
82個目の玉を投げるとアリーが、もう有りませんと手を振るジェスチャーを示し、白チームの結果は82個となりその分のポイントが追加される。
そして、赤チームの籠にはまだ玉が残っており、
「きゅうじゅうきゅー、ひゃー・・・」
とここで俺はもう無いと手を振った。
最終的に99個となった。
惜しくも100個には届かなかったが、白チームよりも多く入れていたので追加で10点を獲得して、赤チーム合計199点、白チーム合計180点と19点の差をつけて逆転となったのだった。
次回で、運動会のお話は最後になります。
前回もお伝えした様に、時間があまり取れずにこの様に分割となってしまって申し訳ないです。
なるべく投稿頻度を落とさ無い様にはしていますが、やむを得ず頻度が落ちる時などはお知らせ致しますので、その時はよろしくお願いします。




