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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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それぞれの1日:side ルイン

朝、太陽の光を受けて目を覚ます。

目を覚ますと言っても、私は幽霊なので実際に寝ているわけではない。

普段は体を半透明化させて姿を現しているが、皆んなが寝ている夜には完全に透明になり、ベッドも必要無いのでリビングの端で立って浮きながら休んでいるのだが、意識はしっかりとあるので寝ているとは言い難い。


以前、半透明化したまま休んでしまった事があり、その夜中にたまたま起きて来たコタケさんが私の姿を見て、


「うわー!」


と驚いて大きな声を上げて、その声を聞きつけて他の人達も集まって来てしまった事があったので、今は気をつけている。


こんな幽霊の私でも、普通に受け入れてくれるこの家の居心地はとても良い。

今までは廃墟となった屋敷に1人で住んでいたので、皆んなでいると楽しいのだ。


そんな私の今日の予定は廃墟探索だ。

勿論いつもは、家の手伝いをしている。

私は物を手に持つ事は出来ないが、霊力という力で物を浮かす事ができるから、天井と言った高い所の掃除など役立っている・・・はずだ。


今日向かう廃墟は魔の森からかなり近い所にある。

家が数軒並んでいたので、廃村の様な物だろう。

以前チラッと見かけてここには何かが居そうという私の勘が働き、好奇心で行ってみることにしたのだ。


移動の時は、透明化して魔物に見つからない様に進む。

見つかったとしても、魔物は私に触れる事は出来ない筈なので大丈夫だろう。

でも、ティーフェンさんが魔力を手に纏わせて私の事を掴んだ事があるので、もしかすると魔物にも同じ事が出来るかもしれないので念には念を入れる。


2時間程、フワフワと浮きながら進んでいると目的地に到着した。

ここにある家は全て屋根や壁が崩れて、窓ガラスも全て割れている。


「こんにちは〜、誰か居ますかー?」


声を掛けながら建物の一つに入ってみたが、返事は返ってこない。

1軒を後にし、どんどん次の家へ入って行ったが何処も反応が無い。

そして最後の家へと入り声を掛けてみたが、やはり返事は返って来なかった。

家の中を軽くみて回り、諦めて家に帰ろうと玄関の方を振り向くと、私の目の前に顔に目や鼻、口が無い長い黒髪の女が立っていたのだ。


「ぎゃーーー!おばけーー!」


大きな声を出して驚き、すぐさま後ずさった。

私が生身の人間なら、気絶していた事だろうが幽霊なのでそれは出来なかった。


「あははは、面白い子ー!」


私が怯えていると、女はそう言った。


「幽霊なのに私の事怖がっちゃうなんて可愛いね〜」


「ひっ!なんで口が無いのに喋れるの」


「あれ?やり方知らないの?そっかー、ならびっくりしちゃうよね」


女はうんうんと頷くと、顔を下に向けて、


「よいしょっと、これで良いかな?」


そう言いながら顔を上げると、先程までとは違い目や鼻、口などが付いて可愛らしい顔になっていた。


「どういうこと・・・?」


「多分、幽霊なら誰でも出来るよ」


そもそも私は幽霊になってから、そんな事を試そうと思った事も無かったから理屈が良く分からなかった。


「まぁ、それよりも・・・初めまして!私エニスって言うの!見ての通り幽霊だけど、あなたも同じよね?」


「あっ、はい。同じく幽霊でルインって言います」


「ルインちゃんね!よろしく!」


エニスという幽霊はとても活発な感じがした。


「私、他の幽霊に会うの初めてなんだ〜。だから張り切り過ぎちゃった!驚かしてごめんね?」


「いえ、私も大きい声を上げてすみません」


「いーよ、いーよ!それにしても私以外の幽霊って本当に存在したんだね〜。ところでこんな所に何しに来たの?」


「近くに住んでて、たまたまこの場所を見つけたので何か居ないか探索しに来たんですけど・・・まさか本当に幽霊が居るとは思いませんでした」


「さっきは怖がってたのに良く探索しに来たね?」


「あれは、誰でも驚くと思うんですけど・・・」


「そう?」


「そうですよ!」


エニスは幽霊とは思えない程、明るい性格をしていた。


「あの、エニスさんはここに住んでるんですか?」


「私の事はエニスで良いよ!」


「いきなり呼び捨ては・・・」


「いいよ、同じ幽霊なんだからさ」


「それじゃあ、エニス」


「うん、ルイン!こっちの方が友達みたいで良いね!」


同じ幽霊に会い、そんな事を言われて私は嬉しくなった。


「それで私がここに住んでるのかだっけ?そうだよ、ここに住んでるんだよ」


「やっぱりそうなんだ。人も来なさそうだし住みやすそうだね」


「まぁね、でも他の所で暮らした事って無いから分かんないんだよね?」


「どういう事?」


「私、この土地にに縛られててさ、地縛霊ってやつ?だからこの家がある場所以外に行った事ないんだよね」


「そうなんだ・・・でも、どうしてこの場所に?」


「え〜っとね、200年くらい前に親族全員でこの場所に住んでたんだ。あっ、勿論その時はただの人間だったよ!それで、平和に暮らしてたんだけど、ある日森の中からたくさんの魔物が出て来て皆んな殺されちゃったんだ」


「そんな事が・・・ごめん」


「いーよ、いーよ。もう昔の事だし、もう気にしてないよ」


とエニスは明るく振る舞った。


「ルインは、どうして幽霊になったの?」


「私は気づいたらいつの間にか幽霊になってて、死因も思い出せないんだ。幽霊になってからは各地を転々として今は一定の場所に住んでるって感じかな」


「気づいたら幽霊になってたってそんな事もあるんだ?まぁ、それよりも今住んでる所ってどんな場所なの?やっぱり幽霊がいっぱいいる感じ?」


「幽霊は私だけで、他に人間とか魔族、魔物が一緒になって住んでる不思議な場所なんだ」


「へぇー!確かにそれは不思議だけど、楽しそうだね!」


「幽霊の私でも受け入れてくれる変な人達だから、きっとエニスとも仲良くしてくれると思うよ」


「うーん、そっかー。それならここから動けないのが尚更悔しいなぁ〜」


「何回試してみたの?」


「うん、幽霊になってから何回も繰り返してみたけど、バチッて跳ね返されちゃうんだ」


「私も協力したいけど、どうしたら良いか分からないなぁ・・・」


「私の事は大丈夫だよ、200年もいれば慣れたしね」


「諦めないで!私の知り合いに長生きしてて色んな事に詳しい人がいるんだ。その人に聞けば何か方法が分かるかもしれない!だから、私がエニスを助けるよ!」


「本当!自由に動ける様になったら嬉しいなぁ」


「何かしてみたい事あるの?」


「世界を見て回りたい!私は生まれも育ちもこの場所だから、他の所を見た事が無いんだよね」


「なら、その夢が叶えられる様に私も頑張るよ!」


「うん、ありがとう!ルインに会えて良かった」


「私も初めての幽霊の友達が出来て嬉しいよ」


その後も色々と話していると、先程エニスがやっていた顔の無い状態についての話題になった。


「さっきのアレはどうやってやるの?」


「うーん、なんかね私も暇つぶしに念じてたら偶然出来ちゃったんだよね」


「念じるの?」


「顔の一部分を無くなれーって思ったら・・・ほら?消えたでしょ?」


そう言って、エニスは自分の鼻を消したのだ。


「凄いね、そんな事出来るなんて知らなかったよ。さっきは目とかも消してたけど、それでも見えてるの?」


「実はこれって、一部分だけを透明化させてるだけで本当はちゃんと残ってるからきちんと見えるし、喋る事も出来るんだ」


「へぇ〜、それなら私にも出来るかも!」


「うん、頑張って!」


ものは試しにと口を消そうとイメージしてみたのだが、


「あ、あれ?なかなか上手くいかない・・・」


と意外と難しかったのだ。


「私も初めの頃は苦戦したよ〜。何回かやってると慣れてくるから練習あるのみだよ!」


私は時間を忘れて、エニスと一緒に練習をした。

その甲斐あってか、遂に口だけを消す事が出来たのだ。


「やったー!成功したよ!」


「うん、おめでとう。後は私みたいに一瞬で出来る様になるだけだね」


これからも練習は必要そうだ。


「それよりも、もう夕方だけどルインは帰らなくて大丈夫なの?」


「えっ!?いつの間に!」


エニスに言われて、辺りを見ると確かにそらが赤く染まっていた。


「うわー!もう帰らないと!」


「うん、きっと他の人達も心配しちゃうよ」


「それじゃあ、私はこれで帰るね!今日は楽しかったよ!また遊びに来ても良いかな?」


「もちろん良いよ!私もすっごい楽しかったから!」


こうしてエニスに別れを告げて、急いで家に戻った。

家に到着した頃には、陽も沈み暗くなっていた。


「ただいま〜」


「ルイン、おかえり〜・・・って、何その顔!?」


コタケさんが驚きながら私にそう言った。


「顔?」


何の事だろうと思ったら、エニスの元で口だけを消していた事を思い出した。


「あー!ごめんなさい!口を消していたの、すっかり忘れてました」


私は急いで口が見える様に元に戻した。

元に戻すのは、何故かあっさりと出来た。


「ルインって、そんな事出来たんだ・・・ビックリだよ」


「いえ、私も今日初めて出来る様になったので」


「急に?」


「実は他の幽霊に教えて貰いまして」


とその時に丁度夜ご飯が出来上がったので、皆んなが食べている中、私は今日1日の出来事を話した。

皆んな、エニスが自由に動ける様になったら是非連れて来てほしいと大歓迎だった。


「今度、エニスに伝えておきますね!」


必ず、エニスをあの場所から出られる様にすると決意するのだった。


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