それぞれの1日:sideアン&リビア
私達2人の朝は、今までであれば4時に始まっていたがこの家に住んでからは5時30分に始まる。
私とリビアは同室だ。
アリシア様の実家でも、ずっとそうだったのでなんら問題はない。
当然ベッドは別々の物がある。
ただ昔から思っていたのだが、リビアの寝相が悪い。
悪すぎてベッドから落っこちてしまう程で、その時のゴツンという音に反応して起きてしまう。
どうにかならないものか・・・
○○○
私とアンは、幼少の頃からメイドとしてアリシア様の側で仕えている。
お互いの事は何でも知っているので、とても気の許せる相手だ。
ただアンには1つ治して欲しい事がある。
それは寝言だ。
寝ている時に割と大きめの声で、
「次はあそこの掃除をお願いします」
「今日の予定は・・・」
と夢の中でも仕事をしている様な寝言を言っている。
せめて夢の中でも休んで欲しい。
そうすれば、私もアンの寝言で目覚める事は無くなるのだが・・・
○○○
そんな私とリビアの1日は朝食の支度から始まる。
全員が揃うまで2時間はあるので、もう少しゆっくりとしていても良いのだが、朝の内に夜の料理の仕込みもしておきたいのでなるべく早い時間からスタートしている。
朝食は簡単な物が殆どで、今日はサラダと食パンに目玉焼きとベーコンを乗せた物だ。
この料理はコタケ様のリクエストで、元いた世界にあった物らしい。
これがまた簡単に出来る割には美味しく、この家でも人気のメニューだ。
朝食を終え、後片付けをしたら少し休憩を挟んでから昼食を作り始める。
今日のお昼はグラタンを作ろうと思う。
この家には、たくさん食べる人が数名いる上に各自のタイミングで食べる事になっているので、大量に作り置きが出来てそれぞれが好きなだけ取れる様な料理にした方が良いのだ。
私は早速料理に取り掛かった。
鶏肉やきのこ、牛乳などを取り出し材料カットして大きな鍋に入れていく。
途中でアリシア様も手伝いに来てくれた。
なにしろ材料は大量にあるので、1人では少し大変だ。
「アン、私も手伝いますよ。おや?今日はグラタンですかね?」
「材料を見て分かる様になったとは、流石ですね」
「私も料理の勉強をしてますから!」
鍋に材料を入れ終え、牛乳を入れて温めながらホワイトソースを作っていく。
そして、アリシア様は別の仕事をしに行き、私は仕上げの作業に掛かる。
公爵家ではオーブンがあったが、この家にはそういった物が一切無かった為、コタケ様が石を削り出してオーブンの代わりの窯の様な物を家の外に作ってくれた。
重量10kgはありそうな鍋を持って外へと向かい、そこにセットする。
肝心の火なのだが、これはスライムさんに任せる。
のんびりと日向ぼっこをしていた赤スライムさんを見つけて、火をつけて貰う。
後は私が時々、火の加減を確認しながら指示を出すだけだ。
それから40分程で、グラタンが完成した。
これをキッチンの方へと持って行こうとしたのだが、重たい上に熱くなっているので1人で運べなさそうだった。
どうしようかと悩んでいると、
「困り事か?」
と龍王様が側を通った。
事情を説明すると、キッチンまで運んでくれる事になったのだが、いきなり鍋の取っ手を素手で掴んだのだ。
「龍王様!?」
取っ手を握った手からはジュワーと言う音が聞こえる。
「心配いらん。妾の皮膚はこれくらい何ともないんじゃ」
そう言いながら、急いで鍋をキッチンに運んだ。
離した手を見てみると、確かに火傷の跡も無かったがビックリするのでやめて欲しい。
「さ〜て、妾は早速頂くとしようかの。熱々の内が1番じゃからな」
龍王様はそう言いながら皿にグラタンをよそって、ダイニングへと向かった。
料理をしていたら、お昼も近くなっていたので私も食べることにした。
○○○
アンが料理をしている間に私は、全員の服を洗濯をする。
料理と洗濯は、毎日交互にやっていて今日は私が洗濯当番だ。
まずは、青スライムさんに桶を水でいっぱいにして貰う。
そしてそこに、洗剤と洗濯物を入れて手洗いとなる。
以前、楽に洗濯をする方法は無いかと他の人達に相談したら、コタケ様が洗濯機のマネをやってみようと言い出した。
洗濯機とは洗濯物を入れると、乾燥までを自動でやってくれる代物らしく、私はそれに惹かれた。
コタケ様の考えは、青スライムさんに空中に水の塊を出して貰い、そこに洗濯物を入れてから、緑スライムさんに風を起こして貰って掻き回すと言う方法だった。
試しにとやってみたのだが・・・完全に失敗だった。
風の勢いで水が飛び散りだんだん減っていく上に、服が勢いに耐えれずに破けてしまったのだ。
結局、手洗い以外の方法は無かった。
「それにしても、9人も居ると洗濯物は多いですね」
服の生地を痛めない様に丁寧に作業をする必要があるので意外と時間が掛かる。
「リビアさん、俺も手伝いますよ」
そこに救世主コタケ様が現れる。
「助かります」
「いえいえ、この量を1人でやるのは大変ですからね。いつもありがとうございます」
「私とアンも、家事をしていないと落ち着きませんから」
コタケ様の助けで何とかお昼にちょっと前に洗濯物を干す事ができた。
「さて、私もそろそろお昼に致しましょうか」
午前の仕事は終えたので、休憩がてらお昼ご飯を食べる事にした。
○○○
私とリビアの午前の仕事が終わって昼食後、1時間程休憩を取ったら午後の仕事の始まりだ。
午後は家中の掃除をすることになる。
時々、アリシア様が午前中に掃除をしてくれる事もあるのだが、家はそれなりに大きいのでそれだけでは足りず、私とリビアで手分けして掃除をする。
1階と2階に加えて、風呂場の掃除もする。
そうすると、あっという間に夕方になるのだ。
「さて、リビア。夜ご飯の支度を始めましょうか」
朝の内に牛肉を塩漬けにして、お昼に塩を抜いて燻製にしていたので、もう少しでいい感じに出来上がるはずだ。
他の料理も作って行こうとした時、
「2人とも、料理はまだ始めて無いですか?」
とアリシア様がやって来た。
「一品だけ準備はしておりましたが、まだですよ」
「良かったです。今日はもう準備をしなくて大丈夫ですよ」
「それは一体なぜでしょうか?」
「ふふ、後になったら分かりますよ!」
急遽、夜ご飯の準備をしなくても良くなったので、私とリビアはリビングに行きゆっくりとするのでした。
そして、辺りが暗くなった所で全員が揃った。
「あの、アリシア様?そろそろ夕飯の時間では?」
「そうですね。ワタルさん、そろそろよろしいのでは?」
「うん、それじゃあ外に移動しようか」
そう言われて後をついて行くと、外には金網や鉄板が置かれた台があり周りには野菜やお肉などが並べられていた。
「これは一体・・・?」
「ワタルさんの案で、いつも2人には家中の事をして貰ってるから、そのお礼にと外でバーベキューをする事にしたんです!」
「そうだったんですね・・・」
「迷惑でしたか?」
「いえ、とんでもないてす。むしろとても嬉しいです」
「それは良かったです!それじゃあ早速食べましょう!」
「ふふ、私は焼き加減にはうるさいですよ」
とバーベキューを楽しんだのでした。
○○○
「アン、今日は楽しかったね」
「えぇ、そうね。たまにはこうして過ごすのも悪く無いわね」
それぞれのベッドに寝っ転がりながらさっきまでのバーベキューを思い出していた。
「こんな生活をしてるなんて昔の私達が知ったら驚くだろうね」
「あの頃は、休みなくメイドとして過ごしていたものね。その生活が嫌だったかと言われればそうでもないけど、このゆっくりとした生活を知ったら戻れないわね」
「うん、私も」
「さて明日も早いですし、今日はもう寝ましょう」
「うん、おやすみー」
「おやすみなさい」
こうして私達の1日が終わり、今日もお互いの寝相・寝言に途中で目を覚ますのだった。
1話に2人の視点を纏めるのは初めてだったので、分かりづらかったら申し訳無いです。
一応○○○で、視点の交代を表してはみたんですが分かりましたかね?
もし、こうした方が分かりやすい等ありましたら是非アドバイスお願いします!
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今日はお昼過ぎにもう1話投稿できるかと思います。
 




