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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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それぞれの1日:side エレオノーラ

私の1日は朝の6時に始まる。

冒険者をしていた頃やお嬢様の実家に居た頃は、もっと早くに起きていた時もあったから、苦では無いが意外と眠かったりするのだ。

ただ、この時間には勝手に目が覚めてしまうし、二度寝が出来ないタイプなので起きるしか無い。


寝巻きから着替えて、1階に降りるとアンとリビアが先に起きてきており、朝食の準備に取り掛かろうとしている。

後から、コタケ殿とお嬢様が降りてくるが2人は朝の日課として外でランニングをしているので私はリビングで1人過ごす事となる。

アンにコーヒーを入れて貰い、キッチンから聞こえる料理の音を聞きながらソファの上でくつろぐ。

冒険者になってからは、朝をゆっくりと過ごせる事は無かったので、至福のひと時なのだが、動いていないとソワソワしてしまうのだ。

長年染みついた癖はそう簡単には抜けない。

私も、2人と一緒にランニングをしようかとも考えたがあの2人の間に入るのは気が引けてしまうのだった。


8時になり全員が揃うかと思ったが、オルフェだけは降りてこなかった。


「そういえば、昨日の夜に今日はやけ酒じゃーとか言ってガブ飲みしておったのじゃ」


「ベル、起こしてきてもらって良い?」


「さっき揺さぶってみたけど、ママ全然起きなかったよ」


コタケ殿の問いにベルはそう答えた。

仕方が無いとの事で先にご飯を食べる事にした。


今日の私の予定は、街で魔石の換金とクエストを受けて来る事だ。

魔石はこの家の大事な収入源となっていて、この森には魔物も沢山いるので助かっている。

クエストを受けるのは、ただ体を動かしたいだけなのだが、報酬としてお金も出るので一石二鳥なのだ。




「それじゃあ、また夕方に来るのじゃ」


朝食後、龍王様に街まで運んで貰い1人でギルドへと向かう。


「冒険者カードの提示をお願い致します」


受付の女性にそう言われてカードを渡す。

私のカードにSランクの文字が書かれているが、このギルドには何度も通っているので、最初こそ驚かれたものの今では普通に接してくれる。


「エレオノーラ様、いつもありがとうございます。本日はどの様なご用件で?」


「魔石の換金を頼みたいのと、何かクエストを見繕って欲しい」


魔石の入った袋を渡してそう言った。


「かしこまりました。魔石はこちらでお預かり致します。それとクエストですが、現在残っているのはこちらの1つとなりまして・・・」


受付が渡してきたクエストの受注用紙を見てみると、


"レッドワイバーンの討伐  Aランク以上"


と書かれていた。

レッドワイバーンとは、その名通り赤色の鱗を持つワイバーンで、火のブレスを吐いてくる。

ワイバーンの中でも攻撃的で常に空を飛んでいる為、意外と厄介なのだ。


「ちなみに何体いるんだ?」


「確認されたのは10体だそうです」


「10体か・・・」


対策をすれば1人でも倒せはするのだが、不足の事態に備えると1人で行くのは危険だ。

受けようかどうか悩んでいると、


「あら〜?エレオノーラじゃない〜」


と声が聞こえ振り返ると、そこにはローブを纏い、先の尖った帽子を被った緑色の髪を肩まで伸ばした女が立っていた。


「なんだ、ミレアか」


「なんだって何よ〜、ひどいわねぇもぉ〜」


ほんわかとした雰囲気を持つミレアは私の昔の知り合いで、Aランクの冒険者で魔法使いだ。


「私は忙しいんだ」


「えぇ〜、困ってそうだったから手伝ってあげよう思ったのになぁ〜?」


ミレアは首を傾げてニコッと笑いながら、こちらを見てそう言った。


「盗み聞きなんて趣味が悪いぞ」


「盗み聞きなんてしていわよ〜。ちょーっと友達が助けて欲しそうにしてたから声をかけただけだよ〜」


「はぁー、それよりも今日はパーティーはどうしたんだ?」


「今日はお休みだから暇してたんだ〜」


ミレアは4人組で女性のみのパーティーで活動しており、他の3人もAランクの冒険者なのだ。

私も何度かそのパーティーに入って魔物の討伐を共にしたが、僅かな言葉で連携して魔物を倒す姿は圧巻だった。


「今なら、タダで手伝ってあげるよ〜?」


「分かったよ、手伝ってくれ」


「わーい!久々にエレオノーラちゃんと冒険だぁ〜」


というわけで、急遽ミレアとペアを組みレッドワイバーンの討伐へと向かうのだった。



レッドワイバーンが現れたという山の麓に到着して、痕跡を探りながら登り始めた。


「そう言えば、エレオノーラちゃんって今何してるの?なんか貴族の護衛騎士になってたよね?アリシアさんだっけ?」


「あぁ、そうだ。まだ騎士は続けているぞ」


「そっかー、じゃあでっかいお屋敷に住んでるんだ?」


「いや住んでないぞ」


「でも、その人貴族なんだよね?それだったらどこに住んでるの?」


「今は魔の森に住んでる」


「へっ?魔の森?あんな所に住んでるの!?」


「慣れると意外と住みやすいぞ」


「えぇ〜、でもどうしてそんな所に・・・」


「ん?ミレアは私達に何かあったのか知らないのか?」


「ごめん、私そういう貴族の話には疎くって」


そう言ったミレアに、何があったのか説明した。


「それで魔の森に住んでるんだね。エレオノーラちゃんもよく頑張ったね」


ミレアはそう言いながら頭を撫でて来た。


「そ、そうか。ありがとう」


「それにしても、その男の人って本当に人間なの?私だったらそんな所に住もうと思わないけど」


「私も初めは疑っていたが、普通の優しい人だった」


「ふ〜ん、惚れてるの?」


「ふっ、何を馬鹿な事を言っているんだ。コタケ殿はアリシア様の夫だぞ」


「なぁーんだ、つまんないの〜。エレオノーラにもやっと春が来たと思ったのに・・・誰か良い人出来てないの?」


「いやまぁ・・・」


「むっ!その反応もしかしているの!」


「いや、違うぞ。別にそう言った仲では・・・」


私がそう言いかけた瞬間、


「ギャオォォォォ」


と上空から複数の雄叫びが聞こえた。


「遂にお出ましか!ミレア準備は良いか?」


「もっちろ〜ん、アイスアロー!」


ミレアがそう言うと、5本の氷の矢が出現し1体のレッドワイバーン目掛けて飛んで行った。

全弾命中し、レッドワイバーンは息絶えて地面に落下した。


「どんなもんよ〜」


「さすがだな。これで残りは9体だ」


これで、怒った他のレッドワイバーンが地面に降りてこちらを目掛けてやってくるだろうと構えていると案の定、3体が降りてきようとしたのでそこを私が叩こうとしたのだが、何故か途中で動きを止めて距離をとったのだ。


「ん?なぜ降りてこない?」


「エレオノーラちゃん、あそこ・・・」


ミレアが指を指している方を見てみると、飛んでいるレッドワイバーン達の後ろに1体だけ図体のでかい奴が居たのだ。


「あれは、変異種か・・・」


変異種とは極稀に発生する特殊な個体で、他よりも大きかったり色が違ったりなど様々な特徴がある。

今回の変異種は、他のレッドワイバーン達が体長5mの所、そいつだけ体長10mは超えていた。

そして、変異種は他よりも知能が発達しており、先程のように他の個体に命令してイレギュラーな行動をさせるのだ。


「厄介な事になったね〜。どうしよう逃げる?」


「逃してはくれないだろうな」


「なら倒すしかないか〜。でも、あの距離じゃあ私の氷魔法は避けられちゃうかな」


「ミレア、魔法で相手を地面落とす事は出来るか?」


「任せて〜、フォールウィンド」


ミレアが魔法を発動すると、レッドワイバーンの上空から地面に向かって風が発生し2体がそれに巻き込まれ地面に落ちてきた。

私はすかさずレッドワイバーンの元に走り、首を刎ねた。


「流石は2属性持ちだな、連れてきて正解だったよ」


「さっきは渋ってたくせに調子いいなぁ〜」


ミレアは水と風の属性の2つの魔法を使える。

我が家では龍王様や魔王といった存在がいるので忘れがちだが、2つ以上の属性の魔法を使える者は少なく貴重な存在だ。

城に仕えれば高待遇を約束されるのにミレアは、


「あんな、堅苦しくて陰謀だらけの所になんて居られないよ」


という理由で冒険者になったらしい。


「それにしても、あと7体か・・・ちょっと多いか?」


「私も無限に魔法を使えるわけじゃないんだから、短期決着をつけて貰わないと」


「あぁ、分かってるよ」


とそんな所にレッドワイバーンが一斉に火のブレスを吐いてきた。


「っ!」


ミレアが急いで、氷の壁を展開して事なき終えたが、


「今ので結構魔力無くなっちゃった」


とまずい状況になった。


「リーダー格の変異種をどうにかしないとな・・・よし、この手で行こう!」


私は考えた作戦をミレアに伝えた。


「えぇ〜、本当にやるの〜?」


「もちろんだ。全てはお前にかかってるからな」


「はぁーい」


「それじゃあ行くとしよう」


そうして私はレッドワイバーンに向けて走り出した。

そして軽く斜めにジャンプをすると、後ろからミレアの魔法によって風が吹き空中へと飛び上がった。

空中では何も出来ないと思ったレッドワイバーン達が一斉にブレスを放って来たのだが、


「ブリザード!」


ブレスはミレアの魔法によって空中で凍った。

私は凍ったブレスが落ちる前に足場にして、レッドワイバーン達をすり抜け、一気に変異種の元まで辿り着いた。


「これでどうだ!」


剣を振るい、首を切り落とそうとしたが変異種は横に移動し剣を回避した。


「ミレア!」


「はいよ〜」


空中戦に慣れているだろうから避けられると考えていた私はもう一手考えており、再びミレアに風魔法で体を押してもらい変異種へと接近した。


「これで終わりだ」


変異種は、私の動きに対応しきれず避ける間も無く首を切り落とされ息絶えた。


「ミレア、着地も頼んだ」


「人使い荒いんだから〜」


変異種の撃破に成功した後は簡単だった。

統率の取れなくなったレッドワイバーンが、有利である高所を捨てこちらに突撃してくるので、それを相手取るだけだ。


「ふぅ〜疲れた〜。流石に魔力がすっからかんだよ」


「ミレアがいて助かったよ」


無事に10体のレッドワイバーンを倒した私達は、ギルドへと戻って来た。


「すまない、クエスト達成の報告なんだが」


「もう終えられたのですか?」


「あぁ、助けがあったからな」


「それでも流石ですね・・・それでは魔石の提出をお願いします」


レッドワイバーンの魔石を渡して、しばらく待っていると受付が戻って来た。


「クエスト完了の確認が取れました。こちらが報酬の金貨7枚と先程お持ち頂いた魔石の買取分の金貨2枚となります」


「それじゃあ金貨4枚はミレアにやってくれ」


「えっ!?」


「手伝って貰ったんだ。当たり前だろう?」


「いいよ、私が好きで手伝ってあげただけだし、最初にタダだって言ったでしょ」


「しかし、それでは・・・」


「その代わりに〜」


と言ったミレアに連れて来られたのは、小洒落たカフェだった。

そこで、ケーキと紅茶を頼みテラス席へと移動した。


「さ〜て、それじゃあ、エレオノーラちゃんが気になってる人の事を話してもらおうか〜」


「そう言うことだったか」


「報酬はそっちに全部あげたんだから、ね?たっぷり聞かせてよ」


と目をキラキラさせながら言ってきた。


「はぁー、仕方がない」


私は王族であるメアさんの事を考えて、他国の貴族に求婚されたと少し濁して伝えた。


「ほぉ〜、貴族からいきなり求婚ね〜。しかも相手は女性と・・・流石エレオノーラちゃんだね〜」


「なんで、流石なんだ・・・」


「昔から男の気配は無かったけど、女性からは人気だったからね〜」


「まぁ、否定はできないな」


「でも、エレオノーラちゃんにそんな人が出来たっていうことは、うちの子悲しんじゃうだろうな〜」


「誰の事だ?」


「うちにニーナって言う茶髪の小さい女の子のメンバーがいたでしょ?あの子もエレオノーラちゃんの事が好きなんだよね〜」


「なんだそれ!初耳だぞ!?」


「いや〜言ったら泣いちゃうだろうなぁ〜。エレオノーラちゃんも罪な女だねぇ〜」


「どうしてこう女性にばかりモテるんだろうな・・・」


「そこらの男よりも、かっこいいからじゃない?それに可愛い一面もあってギャップてやつだよ」


「そういうものなのか?」


「そうそう、私もエレオノーラちゃんの魅力にやられちゃうかも〜」


「そうか、では先にごめんなさいと断っておこう」


「えぇ〜ひど〜い、フラれちゃった〜」


と笑い合い、その後も色々と話をしていると龍王様の迎えの時間になったので店を出た。


「それじゃあ、また一緒に冒険しようねぇ〜」


「次は他のパーティーメンバー達も連れてくるといい」


「は〜い、あっ!それと次に会った時に貴族の人との進展も教えてねぇ〜」


そして、その場を後にして龍王様の元へと向かい家へと帰って来た。


「ただいま帰りました」


「エレオノーラ、お帰りなさい。あら?何やら嬉しそうな表情をしてますね?」


「久々に会った知り合いと冒険が出来たので楽しかったのです」


「まぁ、それは良かったですね!あと1時間程で夕食の準備が出来ますので少し休んでなさい」


「そうさせて頂きたいのですが・・・先程から見えてるアレは何ですか?」


私が指を差した方には、正座をしながら膝にベルを乗せて、首から"私は2週間の禁酒をします"と書かれた看板をぶら下げたオルフェの姿があった。


「アレはお酒の飲み過ぎで、お昼過ぎに起きて来たオルフェさんへの龍王様が下した罰です」


「うぇーん、エレオノーラちゃん助けてー」


「しっかり反省しろー」


「ひどいよー。ねぇ〜ティーフェンちゃーん、そろそろ許して〜」


「ダメじゃ。夕食までしっかり反省してもらうからの」


「うー、おにー!ねぇ〜ベルもそろそろ降りてくれていいんだよ〜?」


しかし、ベルは全く反応しない。


「あれ?おーい?」


「寝ておるの」


「えー、起きて〜ママの足が死んじゃうー」


結局ベルが起きる事はなく夕食までしっかりと正座させられた。


こうして色々とあった1日が終わり、私は眠るのだった。


今日は1話のみになります。

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