秘密の・・・
今回短めになります。
「ふわぁ・・・」
朝になり、重たい瞼を何とか開きながら俺は目を覚ました。
体を起こしてベッドの上にしばらく座ったままの後、立ち上がり1階へと降りて行った。
いつも通り、アンさんとリビアさんが調理をしている音が台所から聞こえる。
リビングへと向かうと、エレオノーラさんが・・・
いつもなら起きているのだが、今日は姿が見当たらなかった。
珍しく寝坊でもしたのかなと思い、他の人達が起きてくるまでソファの上で過ごしていると、玄関の扉が開く音がした。
何だろうと思い向かってみると、アリーとエレオノーラさんが動きやすい格好をして少し汗ばんでいた。
「2人ともおはよう。もう起きてたんだ?」
「あっ、ワタルさんおはようございます」
いつも通りアリーが笑顔で挨拶を返した。
「お嬢様、全員が揃う前にお風呂に入った方がよろしいかと」
「そうね、そうしましょう」
と2人はそのまま風呂場へと向かって行った。
いつもは俺とほぼ一緒の時間に起きているアリーだが、どうやら今日は早く起きていたみたいだ。
「汗かいてたし、運動でもしてたのかな?」
その後、お風呂から上がったアリーに何をしていたのかと聞くと、
「エレオノーラと少々運動を・・・」
「やっぱりそうなんだ。それにしても急にどうしたの?」
「ちょっとお試しで・・・」
と何処か歯切れの悪い答えが返って来て心配したが、本人は大丈夫と言うので、それ以上は何も聞かなかった。
その日から、アリーは毎朝早起きをして汗をかいて帰ってきた。
アリーが運動を始めてから、1週間が経った頃。
「ごちそうさまでした」
「あれ?もう良いの?」
夜ご飯を食べていたのだが、アリーの食事の量がいつもより少なかったのだ。
「今日は、お腹もあまり空いてませんでしたので」
「それなら良いけど・・・」
それから数日間も、アリーは夜ご飯の量を減らしていた。
流石に心配になった俺は、事情を知っているであろうエレオノーラさんに聞いてみた。
「最近のお嬢様がどうしたのか?あ〜、まぁ乙女には色々と事情があるのだ」
と答えをはぐらかされた。
「本人に直接聞くしか無いか・・・」
とその日の夜にアリーの部屋へと向かった
部屋をノックすると、「どうぞ」とアリーの声が聞こえた。
「あっ、ワタルさんでしたか。どうかしたのですか?」
「うん、1つ聞きたい事があって」
「何でしょうか?」
「最近、運動とかご飯の量を減らしてるけど、どうしたのかなと思って」
「あっ、その・・・」
「アリーは大丈夫って言ってたけど、流石に心配になってくるからさ、理由を教えて欲しいんだ」
「え〜っと、その何と言いますか」
アリーは言い淀んでいた。
「やっぱり言いにくいかな?」
「その、・・・ちゃったんです」
「え?今なんて?」
ゴニョゴニョと何と言ったのか聞こえなかったので聞き返してしまった。
「その、少しだけ太っちゃったんです!」
声を大にして言った。
「えっ?えっ?太った・・・?」
「ここ最近体重を量っていないなと思い体重計に乗った所、少し増えてまして・・・」
この世界にも体重計は存在する。
我が家にも一台置いてあるのだが、まさか秘密にしていた運動
の理由がダイエットだったとは思わなかった。
「その、なんかごめん・・・」
「いえ、ご心配をおかけした私も悪かったです」
「でも、俺には全然分からなかったけど」
アリーと一緒に寝る日もあるが、正直全く変化は分からなかった。
「そんなに増えた訳では無いので、分からなくても当然ですよ」
と笑いながら言った。
「乙女にとって脂肪は天敵なんです。実家にいた頃よりも動く量が減ってしまったので、いつの間にか増えていた様でして」
「そっか・・・でも、食事の量を減らし過ぎるのも体に悪いからさ、明日からはもうちょっと食べよ?」
「はい、気をつけます」
「あと、俺も明日から一緒に運動するよ!」
「そんな、ご迷惑では?」
「大丈夫だよ、俺も最近運動不足だったし良い機会だよ」
「それなら一緒にお願いしますね!」
というわけで、翌朝からアリーと一緒に家の周りをぐるぐるとランニングを始めたのだった。
それから3週間経った頃に、
「遂に体重が戻りました!」
「おー、おめでとう」
「はい、頑張った甲斐がありました」
「これからも気を付けないとね」
「これを機に朝の運動は続けていこうと思います」
と俺とアリーに日課として、朝の運動が加わるのだった。




