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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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ドワーフ

ある日、アリーと一緒に近くの街で買い物をしていると露店が立ち並んでいるのが目に入った。

俺自身、頻繁に買い物に来るわけではないので何が開かれているのかはさっぱり分からなかったが、


「この街では月に2回くらい露天市が開かれてまして、骨董品や武器、防具など色々な物が売ってるそうですよ。私もまだ見て回った事は無いですけど」


アリーが教えてくれた。


「へぇ〜、時間もあるし折角だし見て回ってみる?」


「はい、そうしましょう!」


というわけで、露店でどんな物が売られているのかを見て回る事にした。


「らっしゃい、らっしゃい、掘り出しもんだよー!」

「この盾はどんな攻撃も跳ね返せるよー」

「そこのあんちゃん、炎を纏った剣はいらないかい?」


露店の店主が叫びながら客を引き寄せている。


「あんまり日常生活に使えそうな物とかはない感じかな?」


「そうですね、今日の露店のメインは冒険者の方達ですので、武器などが多くなってますね」


個人的には、見た目に惹かれる武器などがチラホラとあるが、買ったところで扱えなさそうなので、今日は帰る事にして来た道を戻ろうとしたのだが、道の端っこの方に1つだけ露店が開かれているのが目に入った。

その露店をよく見てみると、身長が120cmくらいでふっくらとして、髭をボーボーに生やした男が店主をやっていた。


「アリー、あの人って?」


「あの方はドワーフですね」


「ドワーフ?」


「はい、鍛治に秀でた才能持つ種族で彼らが作った武器や防具はとても高値で取引されているんですよ」


「へぇ〜、そんな種族も居るんだ。ちょっと見て来ても良いかな?」


「ドワーフは頑固な種族でして、少々とっつき難いかとは思います」


「そ、そうなんだ・・・」


それを聞いて少し怖気ついたが、やはり気になるので見に行か事にした。


「こ、こんにちは〜」


腕を組みながら目を瞑っていたドワーフの男が右目だけを開いてチラッと俺を確認した後、再び目を閉じた。


(見ても良いのかな・・・?)


何も言われなかったのでとりあえず、置いてある武器を見てみる事にした。


置かれている武器は、剣やオノなどの近接用の物ばかりだった。

武器に詳しい訳ではないが、先程見て回ったどの露店よりも品質が高い様に感じる。

そして、値段も他の店は大銀貨2、3枚なのに対して、この店は金貨5枚などかなり高額だった。


(うーん、確かに良い物なんだろうけど、俺が買った所で使いこなす事は出来ないだろうしな)


「にぃちゃん、決まったか?」


とドワーフの男が話しかけて来た。


「ちょっと俺には使えなさそうかなと・・・」


「けっ、冷やかしならあっちの露店でも見ておきな」


ドワーフの男はそう言い、しっしっと手で払う仕草をした。

これ以上は迷惑だなと思い、その場を離れた。


「いや〜怖かったね」


「ドワーフの方とは初めてお会いしましたが、聞いていた通りと言いますか・・・」


「仕方ないけどお客じゃない俺達には用はないって感じが強かったね」


とこの日はそのまま家に帰るのであった。



そして3日後、アリーが再度街に用事があるとの事で俺も一緒について行き、エレオノーラさんも用事があるらしく3人で街へとやって来ていた。


アリーの用事はすぐに終わったので、エレオノーラさんの用事を済ませる為に後をついて行ったのだが、大通りから外れ狭い道に入り、2階建ての家の前で止まった。

コンコンと家の扉をノックすると、


「あいよ」


と中から男の声が聞こえた。

その声を聞き、エレオノーラさんが扉を開けて中に入ったのでそれに続いた。


「なんだ嬢ちゃんだったか」


「急にすまない、予備の剣の状態を見て貰いたいのだが大丈夫だろうか?」


「あぁ、構わねぇよ」


話を聞く限り、ここは武器屋らしいが表に看板などは全く無かった。

一体どんな人がやっているのだろうとエレオノーラさんの後ろから顔を出すと・・・


そこには先日、露店に居たドワーフの男が居たのだった。


「あっ!?」


その姿を見て思わず声を上げてしまった。


「あん・・・?あー!お前この間の冷やかしに来た奴じゃねぇか!今度はなんの様だ!」


とドワーフの男はこちら見ると目を見開いて、大きな声を上げてそう言った。


「その節はすみません・・・」


「どうした?2人とも知り合いだったのか?」


エレオノーラさんが不思議そうに聞いて来た。


「俺が、3日前に街に行った時に露店をやってるのをたまたま見かけて、武器を見てたら買わないんだったら他の所に行けって言われて」


「あー確かに、親父さんは客じゃない人には厳しいからなぁ」


とエレオノーラさんが笑いながら言った。


「なんだ?嬢ちゃんはそのにぃちゃんと知り合いなのか?」


「今お世話になっている家の家主のコタケ殿だ」


「なんだ、そう言うことか・・・急に怒鳴って悪かったな」


と急にしおらしくなった。


「嬢ちゃんの知り合いなら悪い奴じゃねぇからな」


「そうだぞ、コタケ殿は良い人だ」


「それでもう1人の後ろの嬢ちゃんもこないだ一緒に見たが、あれか?そのにぃちゃんの奥さんか?」


「はい、妻のアリシアと言います」


「おう、そうかそうか」


「あの、ところでそちらのお名前は・・・?」


「あぁ、俺はヴォグルっていうもんだ。ただのしがない鍛治士だよ」


「という事はここは、ヴォグルさんのお店なんですか?」


「あぁ、そうだ」


「でも、看板とかはなかった様に見えるんですが?」


「道楽でやってんだ。ここに来るのは限られた奴だけで充分なのさ」


「私も、この街の冒険者からたまたま聞いてな。3ヶ月くらい前からお世話になってるんだ」


「そうだったんですか」


改めて家の中を見てみると至る所に武器が置いてある。

そして、その一つ一つの値段も露店で見たものよりも高いのだ。


「それで嬢ちゃんの剣だが、こらゃもう駄目だな。打ち直すか新しいの変えないとな」


「やっぱりそうだったか・・・今回は打ち直しでお願い出来るだろうか?」


「あいよ」


「エレオノーラさんの剣どうかしたんですか?」


「この前、龍王様と手合わせをしていたら当たりどころが悪かったみたいでな、一部分が欠けてしまったんだ。だから今日はそれの修繕を頼みに来たんだ」


「大体1週間くらいで仕上がるはずだから、また取りに来いよ」


「ありがとう」


「それで、にぃちゃんは何か欲しい物は無いのか?」


と唐突に聞いて来た。

この店の中にある物は、露店で見たものよりも更に高品質な物なのだろうが、正直俺に扱えるとは思えなかった。


「俺にはまだまだ扱えなさそう物ばかりな気がするんですよね」


「ただ、そろそろコタケ殿も他の剣を持った方が良いとは思うな」


エレオノーラさんがそう言ってきた。

神様から貰った腕輪があるとは言え、それ以外でも剣を持った方が良いのかと悩んでいると、


「それでしたら部屋に飾ってあるあの剣はどうでしょうか?」


とアリーが言ったのだった。


「なるほど、あれを親父さんに直して貰えば良いのか」


「そらゃどんな剣なんだ?」


「剣身全体が錆で覆われた剣なんですけど」


「なんじゃそらゃ、見てみんと分からんがそんな物を直すより新しいのを買った方が早い様な気がするぞ」


「とりあえず一度見てもらえないか?」


「まぁ、持って来たら見てはやるが」


という事なので、俺達は1度家へと帰り、お昼ご飯を食べてからつい最近手に入れたサビサビの剣を持って再びヴォグルさんの店を訪れた。


「この剣なんですけど・・・」


そう言い店のカウンターに剣を置いた。


「こらゃひでぇな!どうしてこんな状態で放置してたんだよ?」


「この前たまたま見つけた剣だったんですけど、不思議な事に俺以外が持ち上げる事が出来なかったんです」


「あぁ?どういう事だ?」


俺の言葉に訳が分からんといった感じで、カウンターの剣を持ち上げようとすると、


「うぉっ!なんじゃこらゃ重くて全く持ち上がらんぞ!」


やはり持ち上げる事は出来なかった。


「にぃちゃんが力持ち・・・には見えねぇしな。何かしらの魔法か?」


ヴォグルさんはルーペを使って剣を調べ始めた。

それから20分程した所で、


「これは俺には無理だな!」


と言ったのだった。


「親父さんでも、この錆を取れないのか?」


「まず、そこなんだがこれは錆じゃねぇんだ」


それを聞いて俺達は不思議そうな顔をした。


「確かに錆と同じ見た目だが、これは魔法によって封印が施されてるみたいなんだ。だからこの封印を解かない限りはどうしようもねぇな」


「ん〜封印となると魔法にかなり詳しい者じゃないとダメですね」


とアリーが顎に手を当てて唸った。


「俺は魔法は使えんし、詳しい奴も知り合いにはおらんな」


魔法に詳しい人かと考えて、ある人が頭に浮かんだ。


「大賢者さんとか?」


「はい、お呼びでしょうか?」


俺がそう口にしたのと同時に後ろから声が聞こえて全員ビクッと体を震わせた。

みんな一斉にそちらへ視線を向けると、そこには大賢者ことウルファ・アークホルム本人が居たのだった。


「なんだその男?さっきまで居なかったじゃねぇか」


ヴォグルさんも驚いていた。


「初めまして、ただの通りすがりの魔法使いです」


その紹介には無理があるだろと思いつつ、何故急に現れたのかを聞いてみた。


「先程、懐かしい気配を感じましてね。しかもその気配の側にコタケ殿達の気配も感じましたので不思議に思い転移して来てしまいました」


「懐かしい気配ですか?」


「はい、そちらの剣からですね」


そう言ってサビサビの剣を指差した。


「もしかしてこの剣の事知ってるんですか?」


「えぇ、知ってるも何も私が封印を施しましたから」


まさかの大賢者本人が封印した剣だった様だ。


「私もすっかり存在を忘れていましてね。なにぶん3000年前の出来事でしたから」


「そんな昔の物だったんですか・・・」


「当時の使用者の願いで封印を施したのですが、どちらで見つけて来たのでしょうか?」


「魔の森の中心に洞窟があるのを見つけて、その中にこの剣が刺さってました」


「ふむふむ、当時は洞窟などありませんでしたが月日が経ったのでそうなったのですかね?それにしても、まさかこの剣を持てる方が居るとは思いませんでしたね」


大賢者はそう言い笑みを浮かべた。


「さっきから何の話をしているかはさっぱり分からんが、アンタはこれの封印を解けるのか?」


会話を聞いていたヴォグルさんが大賢者にそう聞いた。


「えぇ、勿論ですよ」


「でも、封印は解いても大丈夫なのでしょうか?何かがあったから封印されたのでは?」


とアリーが聞いた。


「いえ、特に問題がある訳ではなく、当時不要になったので念の為に封印を施したのです」


「それなら封印を解いてもらっても良いですか?」


「はい、構いませんよ」


大賢者は剣に手をかざして、詠唱し始めた。

すると、錆の部分が少しずつ剥がれて空中へと霧散していき、ものの数分で封印を解き終えた。


剣は先程までとは打って変わって、銀色の剣身が露わになった。

そしてその剣身の表と裏の両方の真ん中に赤色の文字が刻まれ淡く輝いていた。


「これがこの剣本来の姿です」


封印の解かれた剣を俺は持ち上げてみた。


「なんか、さっきまでよりも手に馴染む感じがする様な?」


「なんなら試し斬りでもしてみるか?」


ヴォグルさんはそう言って手招きをして店の奥の扉を開けた。

その後をついて行くと、家の庭に出て来た。

そこには鎧を身に付けた人形が3体並んでいた。


「あれはこの世界で有数の固さを誇るオリハルコンで作られた鎧だ。並大抵の剣じゃ簡単に折れてしまうくらいの物だからな試すにはピッタリだろ?」


逆にこちらの剣が折れないか不安になったが、大賢者がニコッと微笑んだので大丈夫だと信じて、勢いよく斬り込んだ。


「あっ!そんな勢いでは・・・」


大賢者が何か言いかけたが、すでに止まる事は出来ないので、そのままの勢いで剣を振りかざすと固いと言っていた筈の鎧にスッと剣が入り込み勢いが劣らないまま真っ二つに切断された。

慌てて剣を止めようとしたが、そのまま思い切り地面に叩きつけてしまった。

すると、ドォォンという音と共に土埃が舞い地面に3m位の深さの切り込みが入ったのだ。


「えぇ・・・」


大賢者以外、驚愕して声が全然出なかった。


「あの、なんなんですか?この剣は・・・」


やっとの思いで、声を絞り出して確認した。


「その剣は3000年前の勇者が魔王の討伐に使用した聖剣です」


と衝撃の事実を言い放った。


「聖剣の名はアルタドゥイン。その聖剣はどんな物質でも簡単に斬れるんですよ。コタケ殿は使って間もないので、地面がそれだけしか抉れませんでしたが、勇者が使用した時には山を真っ二つに切り裂いてましたね」


と昔の事を思い出したのか笑いながらそう言った。


「これ危なすぎません?」


「力加減を間違えなければ大丈夫ですよ」


「でも、何でこんな凄い剣をわざわざ封印したんですか?」


「勇者がその剣で魔王を撃ち倒した後、平和な世界にこの剣は必要無いと言い封印を施したんです。それにこの剣は人を選び勇者しか持つ事が出来なかったんですよ。私も試してみましたが無理でしたね。もし後の世で、誰か使える者が現れれば封印を解いて欲しいと言われてあそこに一緒に埋めたのですが、まさかコタケ殿がこの剣に選ばれるとは思いませんでしたよ」


「まさか、俺もそんな剣だとは思ってもいませんでしたけどね」


「ハハ、見た目があれですからね。まぁ、そういう訳ですのでそちらの剣は是非ともコタケ殿がお使いください。そもそもコタケ殿にしか使えないと思いますが」


「そういう事ならありがたく使わせてもらいます」


「大抵の敵は一振りでどうにかなると思いますよ」


という事で俺はとんでもない武器、聖剣アルタドゥインを手に入れてしまった。

大賢者と話していると、ヴォグルさんが正気に戻り、


「はっ!なんか有り得んものを見た気がするんだが・・・夢か?」


「残念ながら夢じゃないですよ」


と俺は言い破壊された庭を指差した。


「うぉ・・・マジか、一体何なんだその剣は」


「なんか伝説の聖剣だったみたいです」


「信じられんが、この惨状を見ると信じてしまうな・・・」


「庭と鎧についてはすみません。もしあれだったら弁償します」


「あぁ、いや試せと言ったのは俺だから気にするな。しかし、その剣を持ち運ぶのはなかなか大変そうだな」


ヴォグルさんが言う様に、剣の長さは全部で130cmはありそうで、片手剣としてはかなり長い方だった。


「なんなら鞘でも作ってやろうか?」


「ほんとですか!」


「あーそれはやめた方が良いですよ」


と大賢者が止めに入った。


「あん?そらゃどう言う事だ?」


「鞘に収めようとすると、鞘ごと斬っちゃうんですよ」


「マジか・・・それは暴れん坊すぎるだろ」


「なので持ち運びの際はマジックバックに入れる事をオススメしますよ」


と言う事なので、持って来ていたマジックバックに聖剣を収めた。

格好はつかないが、鞘が作れないのであれば仕方がないと妥協した。


「さて、私も用事が済んだので帰りますか。もし何か聞きたい事があればラーブルクにお越しください」


そう言い大賢者は帰って行った。


「私達もそろそろ帰りますか?」


もう少しで夕方になる時間帯なので、俺達もお暇する事にした。


「今日は良いもん見せて貰ったな。また何かあればうちにでも寄ってくれ」


「はい、そうさせてもらいます」


初めは、きつい態度だったヴォグルさんも優しい態度に変わり仲良くなれたみたいだ。

これから、武器の手入れなどはここで見て貰おうと思い、我が家へと帰るのだった。

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