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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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魔王国

ある朝、目を覚ますと窓の外に、


「ポッポー、ポッポー」


と手紙を咥えながら鳴いているハトがいたのだった。

窓を開けて、ハトから手紙を取った。

封を開けて一通り目を通してから1階のリビングへと向かい全員が起きてくるのを待ち、8時頃になって全員が揃った。


「ちょっと皆んなに話があるんだけど良いかな?」


「どうかしたのですか?」


アリーが心配そうに聞いてきた。


「深刻な話じゃないから安心して、実は今朝ララさんから手紙が来たんだ」


ララさんとは赤髪の女魔王でオルフェさんの友人だ。


「ララちゃんから?どうしたんだろ?」


「その手紙にはこう書かれてたんだ」


"コタケ殿、久しぶりだな!と言っても前回会ってからそこまで経ってはいないが・・・

さて、今回手紙を送らせてもらったのは、この前言ったと思うのだが、是非とも我が国アークネースへと遊びに来て欲しいからだ。

まずは、家主のコタケ殿に伝えておきたくてな。

私の仕事もひと段落着いて、皆をもてなす時間もできたので、もしそちらの都合も大丈夫であれば手紙を送ったハトに返事の手紙を渡して欲しい。

そうしたら、我が配下が迎えに行く。

是非とも我が国に遊びに来てくれ"


「って感じ」


俺はララさんからの手紙を読み上げた。


「魔族の国ですか!行ってみたいですね!」


アリーは乗り気だったが、


「私も行ってみたいですが、危険はないんでしょうか?」


とリビアさんが言った。


「ララちゃんの国は他の2つの魔族の国と比べても、とても良い所だし、ほとんどの人間の国と比べても治安はとっても良いんだよ!」


「そうでしたか・・・なら、行きたいですね。見たことのない料理が沢山ありそうです」


リビアさんは、やはり料理がメインだった様で、今よりもレパートリーが増えるのは良いことだ。


「行きたくないって人は・・・いなさそうだね。それじゃあいつ頃向かおうか?」


「準備もせんといけんし、2日後で良いんじゃないか?」


「うん、異論のある人ー?」


と特に反対もなく、クロ達も一緒に行くかと聞くとついて行くとの事でヒルズは何やら仕事がある様で到着したら呼び出して欲しいとの事だったので、2日後に向かいますと手紙を書き、ハトに咥えさせるとそのまま何処かへと飛んでいった。



それから2日後、ララさんの国へと行く日となった。

準備を済ませて、配下の人がやってくるとの事なので家の外で待っていると、上空に6体の赤色のドラゴンが現れこちらに降下して来た。

すると、一体のドラゴンの背中に人が1人乗っており、降りてこちらに歩いて来た。


「皆様初めまして、私ララ様の秘書を務めております、レイザと申します。今回皆様をお連れする為にやって参りました。どうぞよろしくお願い致します」


「こちらこそよろしくお願いします。それでララさんの国にはこのドラゴンに乗って行けば良いのですか?」


「はい、2、3人に分かれてお乗り下さい」


という事なので、俺とアリーとエレオノーラさん、アンさんとリビアさんとティー、オルフェさんとベル、リッヒさんとルイン、最後にクロ達がドラゴンの背中にそれぞれ乗った。


「それでは、出発いたします」


レイザさんの合図でドラゴン達は飛び立った。

ドラゴンの大きさは15m程で、いつもはもっと大きなティーに乗っているので小さく感じる。


「ところでどれくらいの時間で到着するのでしょうか?」


「国には、およそ6時間程で到着致します」


かなりの長丁場になりそうで、出発したのが10時くらいなので到着は夕方になりそうだ。

出発から3時間経過したところで、ドラゴン達を少し休ませる為に1時間休憩を取る事になり、その間にお昼ご飯を済ませた。

再びドラゴンに乗り、さらに3時間経過したところで、


「到着致しました。あちらに見えるのが、魔王国アークネースの中心都市イストゥールになります」


高さ20m程の壁に囲われた大きな城下街が広がり、その中心には立派な城が建っていた。


「このまま城の発着場へと参ります」


ドラゴンに乗りながら城へと目指していると、街の中の上空にもドラゴンが飛んでおり、その上には武装した兵士が乗っていた。


「あのドラゴンに乗っている人達は警備の兵士なんですか?」


「この国では、厳しい訓練を乗り越えた者だけがなれるドラゴンライダーと呼ばれる職業があり、その者達が街の治安を維持してくれているのです」


俺達はドラゴンを見慣れているが、見慣れてない人達が初めて来たら驚きそうだ。

それから発着場へと到着すると、そこにもドラゴンとお世話をしている兵士が多数いた。


「それでは皆様こちらへどうぞ」


魔王国に到着したのでヒルズも呼び出し、レイザさんの案内で城の中へと入り3階に上がると装飾された大きな扉があったので、そこで止まるかと思いきや通り過ぎて一つの小さな扉を前に止まった。

レイザさんが扉をノックして、


「お客様をお連れ致しました」


と言うと中から、どうぞと言う声が聞こえた。

扉を開け中へと入ると、揺り椅子に座りながら本を読んでいるララさんがいた。

ララさんは本を閉じて立ち上がり、こちらへとやって来た。


「皆様、我が国へようこそ。是非とも楽しんで行って頂きたい」


「あはは、ララちゃん硬いよー」


「そ、そうか?友人を招くというのには慣れていなくてな、大目にみてくれ」


「それで今日は何で私達を呼んだの?」


「手紙にも書いた通り、私の国にも遊びに来て欲しいと言ったのを思い出してな。今日は、この国の建国祭があるんだ。だから折角だし楽しんでもらえたらなと思って呼んだのだ」


確かに上空から街を見た時に、たくさんの人が出歩いているなと思ったが、お祭りが開かれていた様だ。


「そうなの?それなら楽しまなきゃね!」


「それと城の客室も手配してあるから寝床の心配も要らないぞ」


「さっすが!」


「それでだな、お邪魔でなければ私も是非同行させて貰いたいのだが・・・」


「勿論大丈夫ですよ。ララさんが呼んでくださったんですから」


「そうかそれは良かった!」


ララさんがとても嬉しそうにしていたので、本当に慣れていないんだなと思い皆んな、ほっこりとして笑顔になった。


「な、なんで皆んな揃って笑顔なんだ?」


「なんでもないよ〜。それよりもララちゃんがそのまま外に出ても大丈夫なの?住民の人達が気付いて人だかり出来ちゃうんじゃない?」


「ふっふっふ、そこは問題ない!このマントを使えばな!」


と言いながら1つの黒いマントを取り出した。


「このマントを羽織れば全く違う姿に見えるんだ!試しにやってみるとしよう」


そう言ってララさんが黒いマントを羽織ると、赤髪が茶髪になり顔や服装も全く違うものになったのだ。


「確かに凄いですけど、俺達も分からなくならないですか?」


「そこは心配無用で私が指定した人物には効果が出ない様になる」


そう説明すると、まだマントを付けているのに元のララさんの

姿へと戻ったのだ。


「確かにこれは便利じゃな。何処かで買ったのか?」


「昔、ダンジョンを攻略した際に宝箱から出てきたのです」


こんなに凄い物が出るということは高ランクのダンジョンなのだろうが、やはりダンジョン攻略にはロマンがある。


「よ〜し、それじゃあ出発しよっか〜」


そういうわけで、城から城下街へと繰り出して来た。

到着した時には日も暮れていて、今はすっかり暗くなっていた。

街の至る所に屋台が出ており多くの人が賑わっていた。


「魔王の治る国なので、てっきり魔族の方しか居ないと思っていましたが、色んな種族の方がいるんですね」


リッヒさんの言う通り、街中には魔族や人間、獣人、エルフなどの様々な種族が居たのだった。


「我が国は様々な国々と平和条約を結んでいるので、そこから多くの人が集まってくるんです」


「何か問題とかは起きないのでしょうか?失礼ながら魔族の方は交戦的な方が多いと思っていたので・・・」


「エレオノーラさんの言う通り魔族の中には、戦う事が好きな者が居ます。そう言った者のほとんどは他の2つの魔王の国に集まっていますが、我が国でもそういった者の為の施設があるのです。あちらをご覧ください」


ララさんの手が指す方を見てみると円形の建物が建っていた。


「あちらは闘技場になります。人対人、人対魔物といった様に日々様々な戦いが行われているのです」


(なるほどこうして暴走が起きない様にしているのか・・・)


闘技場と聞いて、エレオノーラさんは何処かソワソワしていた。


「エレオノーラ、もしや参加したいのですか?」


「い、いえ、そんな事はこれっぽっちも思ってない、訳ではないです・・・」


「やっぱり参加したいんじゃないですか」


「そうでしたか、しかしこの時間帯は闘技場も閉まっておりますので・・・」


「いえ、本当に大丈夫ですから!」


とは言ったものの何処かシュンとするエレオノーラさんであった。

その後は、焼きそばらしき麺料理や焼き鳥などを食べながら屋台を巡った。

すると、街の広場と思わしき場所に何やら人が集まっていた。


「さぁ〜、これより筋肉自慢の男達による腕相撲大会の始まりだぁー!」


とアナウンスが流れ、舞台に筋肉ムキムキの魔族の男達が7人現れて会場は大盛り上がりだった。


「最後に飛び入りで参加したい方はいませんか〜?」


流石にあの参加者を見てそんな人は居ないだろと思ったら、


「お〜っと、どうやら1人だけ挑戦者がいるようだぁ〜!」


そんなまさかと思っていたら、観客が俺達のいる方向を向いているので、後ろを振り向くと手を挙げたエレオノーラさんが居たのだった。


「さぁ〜挑戦者の方は前にお越しください!」


エレオノーラさんは舞台へと登って行った。


「それでは挑戦者の方のお名前をどうぞ!」


「エレオノーラだ!」


「エレオノーラさんですね、では意気込みをどうぞ!」


「一瞬でケリをつけてやる!」


そう強気な発言をして、観客からはオォーという歓声が上がり参加者はポキポキと拳を鳴らしていた。


「やっぱり戦いたかったのか・・・」


闘技場の話を聞いて昂っていたのだろうか、そんな時に丁度よく腕相撲大会があったから参加した様だ。


「エレオノーラが強いのは分かっていますが、あの屈強な男性達を見ると少し心配になりますね」


そんな心配をよそに腕相撲大会は始まった。

まずは、ムキムキの1番と2番という番号札を付けた男2人の試合からだ。

両者手を握り開始のゴングが鳴り響いた。


「ウォォォ!」


両者引けを取らない攻め合いで、腕の血管が浮き出し顔も紅潮していた。

2分間お互い膠着状態だったが、遂に1番の男がスパートをかけて相手の手をどんどん押していき机の上につけたのだった。


「勝負ありー!」


終了のゴングが鳴った。


「意外と白熱するもんじゃな」


ただの腕相撲大会だと侮っていたが、勢いがあって中々面白かった。

続いて、3番と4番、5番と6番の試合があり、それぞれ4番と6番が勝利した。

そして遂にエレオノーラさんの出番が回って来た。

本来7番の男はシードだった様だが、エレオノーラさんの参加で1回戦を行う事になった様だ。


「へっへっへ、覚悟しな嬢ちゃん」


先程エレオノーラさんが煽ったせいか、相手はすでに戦闘態勢だった。

しかしエレオノーラさんは、そんな事は気にせず静かに手を出したのだった。


「それではバトルスタートです!」


ゴングが鳴り響いた瞬間に、


「ウォォォー、くたばれーーー!」


男はそう叫びながら腕に力を込めた。

しかし、エレオノーラさんの腕はピクリとも動かなかった。


「なんだ?そんなものか?」


「なっ!?おまえいったい・・・」


男がそう言いかけた所で、エレオノーラさんが力を込めて相手の手を勢いよく机に叩きつけた。


「グハァ」


予想だにしなかった威力に男は体ごと倒れ込み頭を打って気絶してしまった。


「しょ、勝負あり!」


会場は一瞬シーンっとなったものの、すぐさま歓声に包まれた。


「さ、流石エレオノーラですね・・・私の心配も無用でしたね」


「あの、エレオノーラさんは本当に人間なのでしょうか?」


見ていたララさんも驚いていた。

そして、エレオノーラさんは続く2戦目も楽々勝利して決勝戦となった。


「さて、いよいよラストバトルです!一体誰がこの飛び入り参加の女性が勝ち残ると思ったでしょうか?そして、最後に立ちはだかるこの男は昨年、一昨年の腕相撲大会にて優勝したチャンピオンです!」


会場のボルテージは一気に上がった。

チャンピオンと呼ばれた4番の番号札を付けたスキンヘッドの男は、他の男達よりも試合を短時間で終わらせていた。


「それでは両者、手を合わせて下さい!」


エレオノーラさんと相手の男は静かに手を組んだ。


「なかなかやる様だが、俺には絶対勝てはしないぜ」


男がそう言うと試合開始のゴングが鳴り響いた。


「オォォォォォ」


男は叫びながら腕に力を入れたが、やはりエレオノーラさんの腕を動かす事は出来なかった。


「啖呵を切った割にはその程度か」


エレオノーラさんはそう言い力を入れて徐々に相手の腕を倒していったのだが、突然男はニヤッと笑い何やら詠唱を唱えた。

エレオノーラさんが不思議そうにしていると、なんと男の腕全体が金属の様な光沢のある肌へと変化したのだった。

すると、倒れそうになっていた男の腕が徐々に上がり、遂にはエレオノーラさんの腕が机側に傾いた。


「へっへっへ、恨むなよ?これもルール上はOKなんだ」


男はエレオノーラさんにそう言った。


「ララさん、そうなんですか?」


「一応相手に直接危害を与える魔法で無ければ問題はありません」


「あれはどんな魔法なんですか?」


「硬質化と言う魔法で、指定の部位を金属の様に硬化させる事で防御力を上げる物です。ただその分重たくなる為、戦闘中では使う場面は選ばないといけませんが、この腕相撲大会では動かないのでかなり優位になるでしょう」


「クッ!」


流石のエレオノーラさんもきつい様で、更に押されていた。


「まずいな・・・」


「皆んなで応援しましょう!」


「エレオノーラ頑張りなさい!」

「エレオノーラさん頑張れー!」

「エレオノーラお姉ちゃん頑張ってー!」


アリーの掛け声で、皆んなで一斉にエールを送った。

エレオノーラさんは、声を聞きこちらをチラッとみるとニコッと笑ってからひと息ついた。


「これで終わりだー!」


男の勢いが増して、エレオノーラさんの手が机に付くと思ったら、ギリギリの所でピタッと止まっていた。


「少し本気を出すぞ」


エレオノーラさんがそう言うと、だんだん机から遠ざかって行きスタートの位置へと戻って来た。


「なんだと!?なぜこの魔法に対抗できる?お前も何か魔法を使っているのか?」


「残念ながら私は魔法は使えない。使っているのは鍛え上げた己の筋力のみだ」


エレオノーラさんは相手の腕を押し倒していき、とうとう相手の手を机へと付けたのだった。


「勝負ありー!今年のチャンピオンは飛び入り参加のエレオノーラだぁー!」


わぁ〜と会場は大盛り上がりとなった。


「なお優勝者のエレオノーラ様には後日、筋肉増量剤を1年分お送りさせて頂きます!」


「えっ!?いや、それはいらないんだが・・・」


エレオノーラさんの声は会場の歓声にかき消され、司会者には届かなかった。




「エレオノーラ、お疲れ様でした。これで少しはスッキリしましたか?」


試合を終えたエレオノーラさんが皆んなの元に帰ってきた。


「意外と熱中して楽しかったです」


「それにしても最後の戦いは凄かったですね」


「うむ、手に汗握る戦いだったぞ。妾から敬意を込めてマッスルクイーンの称号をやろう!」


「龍王様、流石にそれは恥ずかしいです・・・」


と皆んなで笑い合うのだった。

それから祭りを一通り楽しんだ後、城へと帰って来た。

ベルは、はしゃぎ過ぎてオルフェさんの背中で眠ってしまっていた。

各自部屋に戻って休もうとした時に、


「皆様、少しよろしいでしょうか?」


とララさんに引き止められた。


「もし、明日もご予定が大丈夫でしたらお連れしたいオススメの場所があるのですが・・・」


俺達は顔を見合い、皆んな大丈夫そうだったので、


「勿論構いませんよ」


そう言った。


「本当ですか!それでは皆様、明日は楽しみにしていて下さい!」


嬉しそうにに自室へと戻って行くララさんを見送り、部屋に戻って眠りへついたのだった。




やはり筋肉は全てを解決する・・・

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