ホープのヘルプ
「誰か私を助けなさい!」
お昼近くになった頃、我が家のドアを開け放ちそう言って来たのは、近くにダンジョンを作り出し、そこに住んでいる妖精のホープだった。
「急にどうしたの?」
俺は開いたままのドアを閉めながらホープに聞いた。
「あら?今日はあなた1人なの?あのうるさい精霊も居なさそうだけど」
「そうだよ、他の人達は街に出かけてるよ」
アリー達女性陣は、街に買い物をしに行ったのとカフェで女子会なるものをしてくるらしく朝食を食べた後から俺は1人で家に居たのだ。
「まぁいいわ!それよりも、私のダンジョンについて来てくれないかしら?」
「さっきも助けてって言ってたけど、何かあったの?」
「実は、私のダンジョンに魔物が住み着いちゃったのよ!」
それを聞き俺は首を横に傾げた。
「別にダンジョンならそれが普通なんじゃないの?」
「この森に住んでる魔物だから、私の言う事聞いてくれないのよ!」
以前ダンジョンを後略した時に、ダンジョンコアが魔物とかを生み出していると聞いたが、それに生み出された魔物じゃないとホープの言う事は聞いてくれないのだろう。
「で、その魔物達を倒して欲しいって言う事?」
「そう言う事よ!」
「まぁ暇だったから別に良いけど・・・」
「なら決まりね!早速ついて来なさい!」
ホープはそう言い、フワフワと浮きながら外へと出て行った。
流石に1人では危ないと考えたので、クロ達も連れて行く事にし、ホープのダンジョンへとやって来た。
「ちなみに、どんな魔物が住み着いたの?」
「1階から3階がオオカミみたいなやつで、4階から7階はおっきなヘビで、8階から10階にでっかいネズミが居たわね」
「随分多いな・・・ていうか、ダンジョンも結構大きくなった?」
「えぇ、一応20階までは完成したわ」
「一体どれだけ広くするつもり?」
「とりあえずは100階ね!」
「多いな!」
「何よ?これくらい普通じゃないの?」
俺が前回行った所はランクは低いとはいえ10階までしか無かった。
それの10倍ともなるとかなりの規模な気がするが、高ランクの所になるとそれくらいなのかと疑問に思った。
「まぁ、ひとまず魔物達を一掃しようか」
そうして、俺はクロ達とダンジョン内へと入って行った。
まず、1階から3階に住み着いたオオカミというのは、何度も戦った事のあるハイウルフだった。
数自体は1階層辺り10匹程度だったので、特に苦戦することもなく進む事が出来た。
次の4階から7階に住み着いたヘビは全長が5m くらいあった。
この魔物は口から酸の塊を飛ばして攻撃するみたいで、たまたま3階から紛れ込んだハイウルフがそれで攻撃されて溶かされていた。
俺が喰らえばひとたまりも無さそうなので常に盾を構えて、攻撃はクロ達に任せる事にした。
クロ達も流石に攻撃を受けるとまずいのか、酸が飛んできたら茶スライムが分厚い土の壁を作り出して、それらを防いでいた。
「それにしても、このスライム達本当に強いわね〜。私の護衛に1匹くれないかしら?」
ホープが急にそんな事を言い出して、クロ達も驚いていた。
「流石にダメだからね?」
「えぇ〜ケチね〜」
俺の言葉を聞いてか、クロ達はホッとしていた。
それから7階層まで攻略して、少しお腹が空いたのでお昼をとった後、残りの階層の魔物達の討伐に掛かった。
8階層からはホープの言う通り、体長6m程の大きなネズミが居た。
図体の割には意外とすばしっこく、壁や天井などを縦横無尽に駆け回っていた。
しかしそんな事は気にせず、クロが重力魔法を使い地面に巨大なネズミを叩き落として、それらを他のスライム達が倒して無事に全階層の討伐が終わった。
「ありがと、助かったわ」
「早く自分の言う事を聞いてくれる魔物を生み出した方が良いんじゃない?」
「どう言う事よ?そんな事可能なわけ?」
「あれ?ダンジョンコアがあって、それで魔物を生み出すんじゃないの?」
「魔物なんて、勝手に出てくるんじゃないの?」
「俺が聞いた話じゃ、ダンジョンには直径1mくらいの球体があって、それが魔物とか宝箱を生み出してるらしいんだけど・・・」
「なによそれ、そんなもの見た事無いんだけど?それだったら私が作ったこれはダンジョンにならないわけ?」
「多分そうなんじゃないかな?」
「私の計画が・・・」
とホープはガッカリしていた。
「まぁ、もしかしたら自然に発生するかもしれないしね」
「いっそのこと他のダンジョンからこっそり持って来ようかしら」
それをされるとそのダンジョンが無くなってしまうので、流石に止めた。
「ハァ〜、まぁ良いわ、それについては追々考えるとするわ。今日はありがとね」
と落胆しながらホープはダンジョンの奥へと帰って行ったので、俺達も家へと帰るのであった。
それから数日後、
「誰か私を助けなさい!」
そう言いながら、またホープがやって来たのだ。
「あら、今日は他の人もいるのね」
「妖精が何の様ですか?」
「うるさい精霊もいるわ」
お互いそう言い睨み合った。
「それで今日はどうしたの?」
「そうよ!アンタに見てもらいたい物があるのよ!」
何処か興奮気味なホープに連れてかれて、またダンジョンへとやって来た。
ダンジョンの入り口とは別の所へと向かっている様で、おそらく1番下の階へと一気に降りることができるのだろうと思い、大人しくホープの後ろをついて行った。
「それにしても、何でアンタまでついきてるのよ」
とホープは俺について来たヒルズに言った。
「何処かの妖精のせいで、私の主に何かあったら困るので」
といった感じで、犬猿の仲だった。
それから2分程した所で、
「到着よ」
ダンジョンの最下層に到達した。
「今日見て貰いたいのはコレよ」
そう言い、ホープが部屋の奥にあった扉を開くと、その中には青く光り輝いた2m程の球体があったのだ。
「何これ?」
「これがこの前言ってたダンジョンコアじゃないかしら?」
「そうなのかな?俺が見た事のある物よりも大きいし色も違うんだけど・・・もしかして他のダンジョンから持って来ちゃったの?」
「そんなわけないじゃない!今朝この部屋に勝手に置かれてたのよ」
それを聞いて、そんな事あるのかと疑問に思ったが、
「確かに魔力を感じられるのでダンジョンコアだと思われます」
ヒルズがそう言った。
「ダンジョンコアって、そんないきなり現れる物なの?」
「ダンジョンについては余り分かっていないので何とも言えないですね・・・」
ヒルズでも分からないそうだ。
「まぁ、そんな事はどうでも良いから使い方教えなさいよ!」
「流石にそんな事知らないけど」
「何よ、じゃあそこの精霊はどうなのよ」
ヒルズも知らないと首を横に振った。
「もぉ〜なんなのよ。それなら適当にやってみるしかないわね!」
ホープはそう言うと、いきなりコアに手を触れたのだが、
「何も起こらないわね」
辺りに変化は見られずシーンとしていた。
「今触れて、何をしようとしたの?」
「魔物でも出ないかなって思って、触れてからアンタの黒色のスライムを頭で思い浮かべたわ」
どうやらホープは、クロをイメージした様だが失敗したみたいだ。
「それなら他の色のスライムはどうかな?」
「試してみるわ」
俺がそう言い、ホープが再び触れるとコアが反応して光を放ちポンッと青色のスライムが1匹出現したのだった。
それを見て俺達はポカンと口を開けた。
「なんか知らないけど、成功したわ!」
「あとは言う事を聞いてくれるかだよね」
「そうね、それなら・・・1階層へ言ってダンジョンを護りなさい!」
ホープがスライムへそう指示すると、それに反応したのかピョンピョンと跳ねながら上へ続く階段を上がって行った。
「うまく行ったのかしら?」
「多分そうなんじゃない」
「もう1回試そうかしら」
ホープが再びコアに触れると、また光と共にスライムが出現した。
「なるほど、コツは大体掴めたわ!」
「これでダンジョンも機能しそうだね」
「そうね、ようやく私の最強のダンジョンの始動ね!」
ホープはそう言って高らかに笑ったのだった。
それから数日後、
「誰か私を助けなさい!」
ホープが泣きながら、また我が家にやって来た。
話を聞くと、魔物を生み出せたのは良いものの、そこまで強くなかったらしく、また森の魔物達が入り込み全てやられてしまって再び住み着かれて、助けを求めに来たのだ。
この後、ダンジョンの魔物の掃討を手伝った事で号泣しながら感謝をされた。
しばらくは、倒された魔物を復活させて戦力を補充するそうで、ホープによる最強のダンジョンが始動するのはもう少し後になりそうだった。
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