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デビスローウ物語  作者: 零位雫記
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06 ガウディオとその孫②

06 ガウディオとその孫②

「おお、すまぬ、ロマーズよ、泣かんでくれ。これはおまえのことを思っての決断なんじゃ」


ガウディオは急にオロオロし始めた。


「よいかロマーズ。寿命的にいえば、おまえよりワシとばぁさんの方が先にこの世からいなくなるのが自然の摂理。ワシとばぁさんがこの世からいなくなれば、おまえはこの世で天涯孤独となってしまう。そうなってしまうとおまえが不憫で仕方がない。だからワシとばぁさんはおまえに秘密で話し合いをしていた。おまえをこの家からどうにかして出そうと。それもつい最近、そのことについて話をしていたのだ。そんなとき彼らがここに来た。ワシは彼らの来訪を運命と感じたよ」


ここでガウディオは我々三人に視線を切り替えた。


「君たちにもどうかお願いしたい。ワシの孫を君たちの仲間として迎え入れてほしい」


ガウディオはテーブルに手をつき頭を下げた。


「ガウディオ殿の条件内容は理解できました。しかし我々はコペンの村に行き、そこから先にあるミロスの街まで行きそこのダンジョンに潜ろうとしている。ミロスまでの道中には、狂暴な猛獣、追い剥ぎ、さらにダンジョンに潜ってもそこには凶悪な怪物がいるといううわさを聞く。そんな所にお孫さんを送り出すということは命の危険があるということ。オレとこの二人はその危険を覚悟でミロスに挑戦しようとしている。しかしロマーズ殿はそんな覚悟も無さそうだし、なんといっても一見ひ弱だ。自分の身もろくに守れない物を仲間に入れるのは、我々の足を引っ張り、我々の危険が増える可能性があるということ。そのコペンまでの地図は手に入れたいが、ガウディオ殿の条件は受け入れられない。だから、我々は地図を諦める」


オレはガウディオに対して発言した。

横の二人がどう思っているか表情を伺うため彼らの顔をみた。

ミラーがこちらを見て頷き、ライラもすぐに頷いた。どうやらオレの意見に賛同してくれたようだ。


「ちょっと待て、ええとデビスといったかな。ワシの孫は見た目はひ弱に見えるが実はそうでない。剣を持たせれば、少なくともそなたら三人よりは強いと思う」


「えっ? 」


ライラが反応した。


「もう気がついているとは思うが、ロマーズは精神的に不安定な部分を抱えている。孫には両親がいない。とある事故で孫が八歳のとき彼女の両親、それに母親のお腹にいた彼女の妹なのか弟なのか定かではないがその赤ちゃんを含めその事故で全員死んでしまったのだ。それ以来孫は言葉を流暢に発することができなくなってしまった。挙動も落ち着きがなくて、孫を引き取ったワシらは、このコの将来を悲観した。しかしロマーズが十歳になったとき、今いる広間で、この家のどこからか持ち出してきたのか、とある剣を鞘から引き抜きその刀身をじっと見つめていたのじゃ。危ないから、剣を鞘に戻しなさいと言ってもじっと見ているのだ――」


ガウディオ、よく話す。話はまだまだ続きそうだ。


「――ロマーズは大抵虚ろな瞳、またときには、精神が焦燥としているときは血走った瞳をしていたのだが、刀身を見つめるロマーズの視線をよく見てみると、そこには穏やかな視点の定まった孫の瞳があったのだ。危ないから無理に取り上げようとしたら大声を出し暴れる。だからワシらはこの子に剣術を学ばせようと考えた。食堂屋のビフのツテで紹介してもらった元冒険者の剣使いを先生と招き、ロマーズはみっちり剣技を叩きこまれた。ロマーズは剣に関して天ブの才があったみたいで瞬く間に先生の技量に辿り着いた。その後は先生の教えは終了し、ロマーズは独学で剣の練習を始めた。あの剣を初めて手にしてから七年、ロマーズは一日たりとも休まず剣をふるってきた。ワシが見ても孫はそんじょそこらの戦士よりも強いと自信を持って言える」


「しかし、ロマーズさんの剣技は実戦で確かめられたのですか?」

ライラがなぜかあからさまにわかるぐらい怒気を含めガウディオに言った。


「実戦? いや、剣の先生とは、剣を交えていたが、実戦という実戦は経験はない」


「それなら、今からわたしと実戦形式で試合をやるというのはどうでしょうか? それでロマーズさんの技量が分かれば、そしてロマーズさんがわたしたちと旅に出たいというのであれば、力強い味方が増えるし地図は得られるし馬車もゲットできる。どうデビス?」


ライラ、オレに話をふってきやがった。しかしライラの主張はもっともだ。


「うん、そうだな。しかし試合をするといっても、どうやって試合をするのだ? まさかお互い本物の剣を使ってやるのか?」


「本物の剣を使っては危ないわ。ガウディオさん、ロマーズさんは本物の剣を使って先生と訓練していたのですか?」


ライラが尋ねた。


「訓練終盤は、真剣でやっていたが、始めの頃は木剣でやっていたと思う。まだ昔使っていたのが物置小屋にあるのでは」


「ではそれを使って試合ましょう。ロマーズさんはどうですか、わたしと試合ことできますか? 無理にとはいいません」


ライラはロマーズを見つめる。全員の視線を受けるロマーズは黙ったまま俯いている。もう涙は止まっているようだ。


「ロマーズ、ライラさんと試合をするか、しないか」


ガウディオか更に言う。


「わたし、わ、わたし、ライラという人と戦う」


「おおそうか! それならさっそく裏庭にある訓練場所で試合を行おう。そこには物置小屋もあるからそこで木剣を探すとしよう」


それから我々は広間をあとにし、裏庭に移動した。

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