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御話遊戯(おはなしゆうぎ)しりーず

丘の上のあの子

作者: 椎家 友妻

 中学に上がった最初の春。

 僕は、恋をした。

 初恋だった。

 相手は、僕が通う学校の女子生徒。

 学年やクラスは分からない。

 名前も知らない。

 ただその子は、帰り道の夕日に照らされた丘の上で、一人、たたずんでいた。

 真珠(しんじゅ)のように()んで輝く(ひとみ)

 左右に分けてリボンで結んだ豊かな黒髪。

 スラッと細い手足。

 そんな彼女を包む雰囲気(ふんいき)

 優しさと、可憐さと、清らかさと、不思議な魅力に満ちあふれている。

 まるで、僕の好きなモンゴメリの小説に出てくる、ヒロインのようだ。

 きっと、クシャミをしても可愛いんだろうな。

 そんな事を思いながら、僕は今日も彼女に見とれていた。

 するとその時、不意に彼女の体が少しのけぞった。

 クシャミが出そうなのかな?

 何だか凄く鼻をフゴフゴさせている。

 そして口をト○ロのように大きく開いた。

 さらに彼女は上半身を、頭が後ろの地面につきそうなくらいのけぞらせ、

 思い切り引き(しぼ)った弓矢を解き放つように、

 クシャミをした。


「でぃやックショイやマンドラゴラかかってこんかいオラァーッ!」


 その言葉の意味は全く僕には理解できなかったけど、

 そんな豪快なクシャミを見たのは、僕は生まれて初めてだった。

 そしてそんな彼女のクシャミに吹き飛ばされたのか、

 僕の彼女に対する恋心は、どこかへ飛んで行ってしまったようでした。 

 さようなら、僕の初恋。


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― 新着の感想 ―
[一言] 爽やかなはずの初恋が……。 面白かったです^_^
2021/03/11 19:38 退会済み
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