生めよ増やせよ地にみちよ
「おかーさーん」
びええん、と泣きながらみちよは学校から帰ってきた。
「どうしたの?」
「名前、いやだぁ。別の名前に変えて〜」
「なんで?!」
「この名前嫌い」
「じゃあどんなのがいいの?」
「美里とかみどりとか明美とか」
「そんなのがいいの?」
「そんなのじゃない!」
「みちよっていい名前じゃないの?お母さん、気に入って付けたのよ」
「でもやだー」
なんでも、学校で生き物飼育係を決めるときに、クラスでみちよに押し付けるためにいろいろ言われたらしい。
特にいろいろちょっかいかけてくる長崎くんがとどめに「生めよ増やせよ地にみちよ」と言ったとか。
「私は図書係がよかったー!」
しょーがないなぁ。お母さんは洗濯物を干しに行って逃げてしまった。
えーん。
泣き疲れてみちよはソファの上でうたた寝をした。
夢の中で金魚やメダカのお世話をすると、あっという間に魚だらけになった。鳥はカゴにぎゅうぎゅうになるくらいいっぱいいるし、ウサギやハムスターはポロポロ子どもが生まれてくるのをとめられない。種を植えると、一粒からもろもろと種が増えていった。
「みちよ!みちよー!」
はっ!
地平線の彼方までみちよだらけになってうなされていたら、お母さんが起こしに来た。
「こえーよー。SFよりこえーよー」
ぜえぜえはあはあ。
「明日!絶対図書係の座をもぎ取ってくる!!!」
握りこぶしでみちよはそう言ったとか言わないとか。