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吟遊詩人グラスの異世界怪談  作者: 百鬼萬斎F/ハシビロコウ
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魔王の岩室への路

 これは、K地方の大河沿いにある中規模な街で、代々宿を営む主人から聞いた話。


 この街から尖山へ向かうと、大河が幾筋かに分かれていくところがあるんです。その中で、旅人もほとんど通わない小さな流れがあって、それでも、稀に通る方もいるんでしょう。粗いけど、一応敷石を並べた路はあるんです。

 これは噂ですけど、その路は、あの「魔王の岩室」に通じる路のひとつだというんですね。いや、どうでしょう。まず、方角が変ですよ。西の彼方に聳える「魔王の断末魔」、ああ、あなた方は「勇者の栄光」とよぶんでしたっけ。あの大きな光の柱とは真逆の方角ですね。まあ、噂は噂ですから、あくまでもね。


 話を続けますね。その川沿いの路を辿って2日程のところらしいんです。橋がひとつ架かってるんだそうです。それが一風変わった橋なんだとか。どう変わっているのかは、なぜかわからないんだそうですが、とにかく変わった橋。そこを見た方は誰もがそうおっしゃいます。だけど、いざ特徴を話そうと思うと、思い出せない。そんな変わった橋なんだそうです。

 でも、問題は橋そのものではないんです。

 ただ、橋を渡る時の雰囲気が違うんだそうです。そう、何が違うのかも、橋と同じようにはっきりはしないそうで、たぶん直感に触れるんでしょう。


 ええ、あなた方の言い方だと、警戒モードですかね。それで、橋を渡って、雰囲気が違って、しばらくすると広々とした古い街道に合流するんだとか。

 はい、そんなところに街道なんかあるはずがないです。どこにも通じていないから、旅人さえ通わない路ですからね。でも街道があるんです。


 ただ、絶対に先には行けないんだそうです。いえ、街道はどこまでも続いているみたいです。しかし、どうしても先には進めないんだそうです。

 見えない壁や、精霊の結界みたいな類いじゃないんだそうで。ただ、街道に足を踏み入れると、かならず身につけた剣やら盾やらが落ちて、足がもつれて転ぶんだそうです。

 転んで、歩けなくなって、先に進めなくなる。だから、その路を行った方は、そこから戻るしかない。結局、また2日かけて川沿いの路を戻るわけです。

 ええ、それだけのことです。


 宿の主人は、「魔王の岩室に通じるなんて噂も確かめようがありませんな。」と言って薄笑いを浮かべた。



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