<突風>
新艦隊の初哨戒任務。今までは従来の装備をした艦隊が哨戒に当たり、俺たちを含む複数の艦隊が改装した艦で訓練にあたっていた。しかし、今日からは訓練を終えた艦隊が哨戒に当たり、哨戒をしていた艦隊が改装と訓練に入ることになる。それらが終わるまでは通常の二倍活動することになるがこれもある意味訓練の延長みたいなものなのだ。
「死ぬときはみんな一緒ですからね。ちゃんと帰ってきてくださいよ!」
ルノカの声に俺とチャックは二人して答える。
「あいよ」
「俺とファルコはともかく、隊長は殺しても死なねえよ」
だが、今回ルノカが一緒に行くことはできない。機体の調整のため母艦から運び出されたのだが、予備の機体を準備することが出来なかったのだ。しかし何のことはない。今回もいつも通りの哨戒飛行であり二十六時間空の上にいるだけだ。俺はルノカを含め、見送りの兵士たちに手を振りながら飛行母艦へと乗り込んだ。
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飛行母艦対空監視所。常に太陽光に照らされ飛行艦の気嚢か空しか見ることのできない過酷な現場であったのだが、改装によって環境の良くなった場所である。艦内は与圧装置や暖房によって快適になり、新しく気嚢内に区画が作られたことにより艦橋への通路が作られたのだ。ついこの前まで対空監視以外は床下収納みたいな空間で過ごすしかなかった生活が一変した。これからは広々とした空間で休息をとれるというだけでも随分と気持ちが楽になり士気も上がる。
だが、監視員たちは数時間後にとてつもない事態を見届けることになる。
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飛行船・飛行艦というものは天候に大きく左右される気体である。飛行母艦対空監視所の監視兵たちは飛行艦が大きく揺れ、艦が風を切る音を立てたのを聞いてこのあたりの気候としては珍しく突風というものが吹いたのだと理解した。
「巡洋艦!流されてきます!」
風は左後方の巡洋艦からまっすぐ飛行母艦のほうへ吹いているようだった。巡洋艦は風をもろに受け、飛行母艦は巡洋艦の陰になっていることもありあまり風による煽りを受けていない。
「艦橋へ連絡!」
その後、連絡を受けた艦橋では衝突を避けるために手を尽くした。面舵を取り、全速前進をして後ろから近づく巡洋艦から離れる。
しかし、それも自然に対する小さな抵抗にしかならなかった。風に流された巡洋艦は飛行母艦の左後方へと衝突、飛行母艦は巡洋艦の側面についた航行用エンジンによって気嚢を破壊されることとなった。




