<四人の若鷹>
飛行母艦の滑走路にルノカと二人立ち、俺は考える。そもそも、ルノカにテストパイロットの話が行っていないのをおかしいと思っていたのだ。そもそもいつ退院できるかわからない俺を待つなんて現実的ではない。きっとテストパイロットの話が来たルノカは、空軍が新しく飛行機を六機搭載できる飛行母艦の存在を知った。おそらくその時に考えたのだろう。俺を再びパイロットとして空に上がらせ、自分は残り四人のパイロットを育てようと・・・。
そうなると俺がテストパイロットになってからの俺はルノカの思っていた通りに動いていたというわけだ。用意された流れに乗ってうまくいったと思っていた俺がバカみたいである。しかし・・・。
「ありがとな」
「・・・」
博士の話があってから、ルノカはずっと俺の一歩前に立っているためその顔を見ることはできない。しかし、耳を赤くし、俺の言葉にうなずいているのはわかる。
とにかく俺がやるしかない。俺はそう決意を固め、大きく息を吸い込み、気合を入れてそれを吐き出した。
・・・・・
数日後、俺はルノカに連れられて四人の訓練生と顔を合わせた。それぞれジャック、ゴリガン、スカイの男三人と女であるローラの四人組だ。先んじてルノカには徹夜で操縦を教え、休日返上で訓練を行なっていたこともあり二人体制でこの四人を教育していくことになる。
そして俺の教育方針は実際に機を飛ばして体で覚えるというものだ。これにはルノカも異論はない。自己紹介を含め、機体や操縦の説明は必要最小限にして訓練を行なう。飛行に戦闘、回避といったことを中心として何日も何日も空を飛ぶ。
もともと、優秀な中から選ばれ、ルノカのもとで訓練を積み重ねてきたものたちだ。素質があり覚えるのも早い。それぞれの特徴を上げるとするならばジャックは飄々とした感じで回避が上手く、ゴリガンは自信家で対飛行機戦闘が得意だがゴリ押し気味、スカイは先ほどの二人の得意分野の八割ほどの実力であり安定している。
最後にローラだが、彼女は少し臆病なところがある。だが、というよりだからというべきか警戒心が強くまだ敵の見えていない状況ではいち早く敵を見つけ出す。能力的には俺とルノカを含めた6人の中では一番下であるが、優秀な中から選ばれたことから全体で見れば平均以上であり、これからさらに実力をつけていくこともできるだろう。
だが、飛行母艦の飛行隊として重要なのは飛行母艦で発艦と着艦ができるかということだ。今までの経験から、練習生に多いのは飛行母艦のフックに片方だけしか引っかけられず、焦りからか引っかかった方を支点にしてもう片方を引っかけることもできないということなのだが、これからは少し違う。
飛行母艦の上には滑走路があり、そこに張られたワイヤーを飛行機のフックを引っかけるという逆になるのだ。一応地上の滑走路に同じような設備を設置して着艦を行なっているが、地上と上空では違うこともある。
「地上も空も大して変わらないだろ、さっさとやらせてくれればいいのに」
「いいからあんたは黙ってみてればいいの」
ゴリガンの言葉にルノカは怒る。ゴリガンは自信家なのはいいが飛行母艦からの発着艦を甘く見すぎている。
「飛行機一機が事故を起こしただけで飛行母艦と仲間の飛行機全員を命の危機にさらすのが発着艦の事故なんだ。もう少し、緊張感を持て」
俺はほかの三人にも聞こえるように言う。まあ、今回は俺の発着艦を滑走路脇からルノカが解説するというものであり、彼らにとっては見学だけなのだから仕方ない。俺はルノカにあとを任すと飛行母艦から飛び立つ。




