その6 有名になりたいアイドルグループ
皆様、あけましておめでとうございます。
お久しぶりです。
今年もゆっくりと書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。
ある日、像の前にたくさんの人が詰めかけた。そのほとんどが10代中頃から20代前半の少女たちだった。
「我は汝の願いを叶える者。汝らの願いは何だ?」
像から聞こえる声も困惑しているような雰囲気を醸し出していた。
少女の中のからリーダー格らしき1人の女性が前に出る。
「私たちは、NPAA90という名のアイドルグループです。ここに来れば、願いが叶うとマネージャーさんから聞いて、ここまで来ました。どうか、私たちを日本一、いえ、世界一のアイドルグループにしてください!」
リーダーに合わせて他のメンバーも頭を下げる。
「我には人の心を操る力は無い。故に、その願いを叶えることはできないが、近いことなら可能だ」
「その方法を教えてください!」
「簡単だ。汝ら1人1人が有名、もしくは人気になりたいと思えば良い。さすれば、願いはかなうであろう」
「それは、最初のものとどう違うのでしょうか?」
「汝が最初に言ったのは、今のままで売れるようになりたいというものであった。我の提案は汝らが持つ潜在的な魅力を引き出し、それによって人気を得るというものだ。故に人気が出るかはその後の汝らの努力が伴う。しかし、有名になれる確率は今よりも大きく上がるだろう。さあ、どうする?」
「わかりました。私たちは人気を得るためにここに来たんです。今までの苦労に比べれば努力なんて気になりません!」
「承知した。では、汝ら個々人で人気になりたいと願うのだ」
少女たちは目を閉じ、願い始めた。その後像から淡い紫の光が現れ、少女たちを包んだ。
それから、しばらく経ったある日、再び謎の男が像のもとを訪れた。
「今回の願いは売れないアイドルたちを売れるようにするか…確かに人の心に直接作用するようなことはできない。今回は考えたようだな。結果としては、最初は成功した。彼女らはよく頑張ったようだ。ところが、ある程度経過すると徐々に内部格差が生まれ始めていった。どうやら、ここでの願い方の違いらしい。全員が売れるようにと願った娘がいれば、自分だけが売れたいと願った娘もいたようだ。その差が内部格差を生んだ。そして、その格差は嫉妬や妬みへと変貌し内部で事件を引き起こした。簡単に言えば殺人だ。売れない娘。ここで言えば皆で売れたいと願った優しい娘だ。それが、ここで自分だけ売れたいと願った向上心の高い娘を殺した。その結果、グループは解散となったらしい。いやはや、人間の妬みや嫉妬とは何とも恐ろしいものよ。…この話はおまえにも耳が痛い話であろう。忘れたとは言わせないさ。お前の罪とそれに対する贖罪としてここに縛られているお前としてはな…。今回は90人分か…。不本意だが、契約は守らなければな。残り3つか…。唐突に飛んでしまったが、あと少しか…せいぜい頑張るといい」
男はゆっくりと姿を消し、後には像だけが残っていた。
新年1作目少し長くなってしまいましたが、楽しんでいただけると嬉しいです。
ちなみにですが、今回登場したアイドルグループNPAA90はNot popular at all の頭文字を取ったもので全く売れないという意味になります。
アイドルグループらしからぬ名前ですが、彼女らはそれを知りません。
それでは、また、次回もよろしくお願いします。