その2 珍味を求める女
こんばんは!碇亜琥翹です
第2話、楽しんで頂けると嬉しいです
出世欲の男が現れてから数か月が流れた。謎の像の噂はネットで細々と流れ続けていた。しかし、半信半疑というよりは一信九疑のような話のため、スルーされることが多かった。
そんな中、一人の女性が洞窟へとやってきた。
「ここが例の洞窟ってことで良いのよね?誰もいないけど、変な像とかあるし」
女性はゆっくりと奥へと進み、像の前へとたどり着いた。
「我は、汝の願いを叶える者。汝の願いは何だ?」
低く、暗い声が洞窟内に響く。
「え?な、なにこの声?」
女性は辺りを見回すも誰もいない。
「もしかして、この像が喋った?ま、まあいいわ」
女性は、一呼吸おいてから
「私の願いは、日本人があまり食べたことのない珍しい珍味を食べることよ」
と、声高らかに宣言した。
「わかった。では用意しよう」
女性の前にどこからかテーブルクロスのひかれた小さなテーブルとイス、ナイフとフォーク、皿が出現した。
「まずは、スコットランド料理のハギスだ。これは羊の内臓を羊の胃袋に詰めて茹でたスコットランドの伝統料理だ。じっくりと味わうといい」
女性は椅子に座り目の前のハギスを凝視する
「わかったわ。いただきます」
ゆっくりとナイフを入れ、口に運ぶその瞬間表情が曇る。
「こ、これは…うん。そうよね。珍味だし。うん」
と、いろいろ呟きながらも完食した。
「では、次の珍味だ」
テーブルの上に黒い豆のようなものが現れる。
「これはウイトラコチェというメキシコ料理だ。黒穂病に感染したトウモロコシを乾燥させたものだ」
女性はゆっくりと手を伸ばす。そして口に運ぶ。
「これは…鳥のレバーに近いわね、うん。悪くない」
女性は何事もなかったかのように完食した。
「では、次の珍味だ」
テーブルの上に干物のような塊が現れた。
「これはハカールと言う、ウバザメを砂の中で発行させたものを乾燥させたアイスランドの料理だ」
テーブルの上に現れた瞬間から周囲に漂うアンモニア臭。それに女性は顔をゆがめていた。
「これは…強烈ね。アンモニア臭しかしない」
ゆっくりと口に運ぶ。その瞬間立ち上がり外へと走り出した。
「これは無理!」
と、叫びながら。その後しばらく経ったが女性は戻ってこなかった。
それからしばらくして、謎の男が洞窟へとやってきた。
「今回は世界の珍味か…まだアンモニア臭が残っているな。シュールストレミングを出さなかっただけマシといったところか。まあ、良い。契約は契約だ。残り97。しっかりとやるがいい」
と、言うとそのまま姿が消えた。後には、ほのかに臭い洞窟と像が残されていた。
読んでいただき、ありがとうございます
本編に出てくる珍味は実在するものを選びました、興味のある方は調べてみてください。
グロテスク系や虫系は避けたので閲覧注意ではないので安心してください。
個人的には食べたくないですね。
それでは、また次回お会いしましょう!
平日は仕事の関連で更新できないかもしれませんが、気長に待っていただけると嬉しいです。