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1-5 シフォンと双子

 

「ふわぁ~!」


 同日の早朝、日が昇りかけた頃。

 目が覚めたシフォンは、大きなあくびを隠すように右手を口に当てながら、左手は上に伸ばし大きな伸びをしている。


 まだ同室の人が来ていないので、何も気にする事無くベッドから降りて準備を始める。


 シフォンは早朝トレーニングが日課となっていて、いつも同じ時間に起きている。

 だからといって眠くないわけではない。

 ただ眠気なんかは、早朝の外で綺麗な空気を吸って体を動かす事でスッキリ出来るし、今となってはその眠気すら心地良く感じている。


 シフォンはトレーニングの準備が整うと部屋を出る。

 早朝は寮内であれば、部屋から出ても特に問題ない。

 そして外の訓練場も寮内と扱われるため、寮の管理人に一言告げればいつでも使用は可能である。


 寮から抜け出す者がいないように24時間体制で監視しているので、この時間でも管理人室には誰かしらは必ずいる。

 監視と言っても直接見て周るわけではなく魔力の動きを察知し、抜け出した者がいれば追跡し連れ戻す。

 その際に抵抗をする者がいないとも限らないので、管理人となる者もそれなりの実力者でなければならない。


 シフォンは外の訓練場を使う事を告げるために管理人室へと向う。


 管理人室にはエンゼルランではなく、別の初めて見る男性がいた。

 24時間体制なのだから、エンゼルラン一人で管理をしているわけないかと納得する。


 その男性に外の訓練場を使わせてもらう旨を伝えると、その男性は屈託のない笑顔で了承してくれた。

 ただ、先にもう一人使っている人がいるからと、一言付け加えて教えてくれる。


 シフォンは訓練場に向う途中、エンゼルランといい今の男性といい、ぱっと見では全く強そうに見えないのに、今の自分達よりも強いんだろうなぁと考え、人は見た目に寄らないことを強く実感しつつも嬉しくてワクワクしてきた。

 なぜならば、シフォンは勇者になるために誰よりも強くなる事を決意している。

 そのシフォンにとって彼らは、今は目指すべき目標であり、いずれは超えなければならない存在なのだから。


 そんな人達が、この学園にはそこら中に溢れている。

 シフォンの心が躍らないわけはなかったのだ。


 訓練場に着くと端の方に人影が見えた。

 先程の管理人が教えてくれた、先に来ている人だろうとシフォンは考え、その人の邪魔にならない場所に移動する。


 その人は剣を鞘に入れたまま、繰り返し素振りをしている。


 シフォンはまだそんなに知り合いが居るわけでもないので、誰であるかは大して気にはしていないのだが、それでも少しだけ興味を持つ。

 少し距離はあるが一応顔は確認する事ができた。


 男性だった。

 もちろん知らない人である。


 シフォンは、誰かはわからないけどあの人も張り切っているなぁと思った。

 自分も負けてられないとばかりに、早速ストレッチを始める。


 そしてある程度体をほぐし終わるとランニングを始める。

 途中でインターバル走に切り替え、それが終わればダッシュを行う。

 走り終わった後は、一通りの筋トレを開始する。


 筋トレが終わった頃に、チラッと男性の方に目を向けると、まだ素振りを反復している。

 普通なら色々なトレーニングをしたくなるのだろうけど、あそこまで基本に忠実に無我夢中で剣を振り続ける事が出来るなんてすごいなぁと、シフォンは心の中で素直に賞賛した。


 シフォンも剣の訓練を始めようと剣を取る。

 シフォンは実戦を想定した訓練をするつもりだったので、鞘から剣を抜く。


 そして架空の相手を想像して剣を構え、相手に切りかかるように剣を振ったり、相手の攻撃を受けたり回避したり、また攻撃するなどを繰り返し行っていた。


 しばらく夢中で剣の訓練をしていた。

 架空の相手に勝って手を止めると、大分時間が経っている事に気が付いた。

 剣を振っていた男性の方を見ると、彼は訓練を終えたらしく既に居なくなっていた。


 汗を流してから朝食に行く事を考えるとギリギリの時間だと考えたシフォンも、訓練を終えて自分の部屋に戻るべく歩き出す。

 途中、管理人に訓練が終わった事と感謝の言葉を告げておく事を忘れない。


 シフォンはその後、軽く汗を流し朝食を取る為に食堂へと向う。


 朝食を受け取りどこのテーブルで食べようかと考えていると、既に来ていて朝食を取っていたティラとショコラの姿を発見した。


「ティラ!ショコラ!おっはよ~!」

「あ、シフォン!おはようございます」

「うう~、おはよ~。アナタは朝からテンション高いわね・・・」


 元気よく挨拶をしたシフォンに、ティラとショコラも挨拶を返すが、ショコラは少し不機嫌そうにテーブルに突っ伏していた。


「あれ?ショコラはどうしたの?」

「ああ、気にしないで下さい。姉は朝が苦手で、いつもこうなのです」

「うう~、少しは気にしなさいよ・・・朝なのにテンション高い方がおかしいのよ・・・」


「あはは・・」とシフォンは愛想笑いをしながら、双子で顔はそっくりなのに中身が違うんだなぁと思っていると、突然・・・


 ガバッ!!


「え?何!?」


 ショコラが急に勢いよく上体を起こしてシフォンを睨んだ。


「アナタ今、しっかり者のティラにグータラなショコラとか思ったでしょう!!」

「ギクッ!そ、そんな事、お、思ってないよ?」


「嘘つきなさい!顔に書いているのよ!」

「うっ!・・・ごめん、ちょっとだけ・・・」


 ショコラに詰め寄られたシフォンは観念して白状した。


「ムキィ~!アタシがこうなのは朝だけ!朝だけなんだからね!」

「姉さん・・・恥ずかしいから落ち着きなさい・・・」

「むぐっ・・・」


 ショコラがムキになって否定するのを、ティラは恥ずかしそうに宥めている。

 恥ずかしいと言われたショコラは二の句が告げなくなった。


「あははっ、ごめんね。でも、そう思ったのは少しだけだよ。ショコラが本当はそんな人じゃない事はわかっているから。昨日も似たような事を言ったけど、ボクの人を見る目は確かだよ!」

「本当かしら・・・どこからそんな自信が出てくるのか・・・」




 その後、朝食を取り終わった3人は歓談室で話をしている。


「・・・というわけよ」

「ふ~ん、じゃあ二人は国のお抱え魔法士になるのかい?」


 ショコラはシフォンに聞かれて、自分達がこの学校に来た理由をシフォンに聞かせていた。


 二人はそれほど大きくはない町の出身であり、そこではみんな毎日ギリギリの生活を送っている。

 二人の実家も同じで、さらには彼女達の下にも弟妹がいるらしく、親が稼ぐ分だけだとかなり厳しい。

 そこで魔法の才能があった二人が、学費が安い上に卒業すれば安泰であるこの学園に来たとの事。


「仕事はそれなりに給料がもらえれば何でもいいわよ。それよりもアタシは魔道士(ウィザード)であるからには大魔道士(アークウィザード)になる事、果ては聖天導師(アデプト)になる事が夢なの!いえ、必ずなってみせるわ!」


 席から立ち上がり拳を握りながら夢を語るショコラの後ろから、シフォンには炎が見えるような気がした。

 ショコラの言う聖天導師(アデプト)とは、魔法を扱う武器職にとって最高峰の称号である。

 魔道士(ウィザード)で言えば上級職が上位魔道士(ハイウィザード)であり、最上級職が大魔道士(アークウィザード)、そして大魔道士の中でも魔法を極めた一握りの者が聖天導師(アデプト)と呼ばれるのだ。


「おお~!ショコラが燃えている」

「ふふっ、ごめんなさいね。姉がこの話をする時は、いつもこうなんです」


 ティラは一生懸命語る姉の姿を楽しそうに見ながら、シフォンに謝る。


「いやぁ、いいんだよ!夢を語るなら、こうでなくちゃ」

「そこっ!夢じゃなくて、現実にしてみせるの!」

「自分で夢と言ったんじゃないですか・・・」


 シフォンも嬉しそうにショコラを後押したのだがショコラに突っ込まれ、そのショコラはティラに溜息を吐かれながら突っ込まれる。


「ティラもショコラと同じ夢を持ってるの?」

「そうですねぇ・・・私は治癒魔法士(ヒーラー)ですので、基本的には姉のサポートが出来ればと思っていますが、私も魔法を学ぶ者としては治癒大魔法士(アークヒーラー)、そして聖天導師(アデプト)には憧れますね」


 先程ショコラの時に説明したが、魔法を極めたものを聖天導師(アデプト)と呼ぶ。

 それは治癒魔法士(ヒーラー)であっても同じ事。

 治癒魔法士(ヒーラー)上位治癒魔法士(ハイヒーラー)治癒大魔法士(アークヒーラー)が上級職となるが、その上が聖天導師(アデプト)となるのだ。

 つまりジャンルは違えど、魔法を扱う武器職は全て聖天導師(アデプト)が最高峰の称号なのである。


「聖天導師・・・魔法を極めたアークの名を冠する者の中でも、さらに突出した一握りの者にしか与えられない称号・・・二人がそれを目指すのならば、ボクも勇者を目指す者としては負けずに剣聖(ソードマスター)にならないとね!」


 そしてシフォンが言う剣聖(ソードマスター)というのが、剣を極めた者に贈られる称号である。

 剣士(フェンサー)は、剣闘士(グラディエーター)剣豪(マスターフェンサー)となり、剣豪の中でも突出した一握りの者だけに与えられるのだ。


「ふふっ、そうですね。お互い頑張りましょう」

「ねえ、でも本当に勇者を目指すつもり?今の時代には必要ないし、誰もなりたいと思わないのよ?」


 シフォンとティラが互いに負けないと声を掛け合っていると、横からショコラが口を挟んできた。

 しかし、ショコラの心配はもっともなのである。


 勇者の存在が確認され邪神を倒してから50年ほど経っている。

 なので、彼女達は本当の(・・・)勇者には資質が必要である事は知らない。


 ただ、邪神が現れなくなってから本当の勇者が現れなくなったものの、勇者と呼ばれた者がいないわけではない。

 では彼女達にとって、勇者とは何を持って勇者と言えるのか。


 自分が勇者と名乗れば勇者なのかといえばそうではない。

 だからといって、困っている人を助けただけでは勇者と呼ばれる事もない。

 戦争が起こり、勝利に導いた者に勇者と呼ぶわけでもない。


 過去に村、町、国が自分達や軍ではどうも出来ない脅威に晒された時、助けにきて守ってくれる存在。

 それが勇者と称えられてきたのだ。

 しかし、脅威そのものが少なくなってきている現代では、勇者を目指したところで勇者になれない可能性の方が高いという事である。


 しかも場合によっては英雄と呼ばれる事もある。


 勇者と英雄・・・

 同じように感じるかもしれないが、人々が捉えるイメージが全く異なってくるのだ。


 勇者は強き者であり弱き者を助け、英雄は強き者であり強大な敵を倒す。

 守る事を前提とした勇者と、倒す事を前提とした英雄では、人々にとっては似て非なる存在となるのだ。



「うん、わかってるよ。でもね、いいんだ!勇者と呼ばれないのであれば、世界がそれだけ平和だという事。正義の名の下に弱きを助け悪しきを挫く、それがボクの勇者像でありボクが成すべき事なんだよ」

「ふぅ~ん。まあ、アナタがいいなら別にいいけどね。応援はしてあげないわよ?」


 シフォンは勇者を目指すと言いながらも、勇者と呼ばれるかどうかにはこだわっていなかった。

 それは志の問題であって、勇者だから人々を守るのではなく、弱き者を強き敵から守り続ける者が自分の中での勇者なのだと考えている。


 ただ、このご時世に勇者になると言うとバカにされる事の方が多い。

 それがあるからこそ、ショコラは応援しないと言ったのだとシフォンは理解した。


「うん、もちろんだよ。ボクが勝手に目指している事だからね。ショコラ達に迷惑をかけるつもりはないよ!」

「・・・」

「ふふっ、シフォン。姉さんは天邪鬼なんです。何か困った事があったら力になると言っているんですよ」


 シフォンにとってティラの言葉は予想外だった。


「え!?」

「ちょっとティラ!!」


 シフォンは驚きに声をあげ、ショコラは慌てたように手をばたばたさせて、ティラの口を塞ごうとしている。


 シフォンは早合点をしていた。

 それも仕方がないだろう。


 今まで勇者になると言って、本気で受け取ってくれた人なんていなかったからだ。

 もし、自分を肯定でもすれば、同じようにバカにされ哀れみの目で見られてもおかしくはない。


 それを考えると、まだ学園は始まってはいないけどシフォンはこの学園に来て良かったと心底思った。


「えへっ、ありがとうショコラ!それとティラもね!そんな事言われたら二人とも頼りにしちゃうよ!もちろんボクの事も頼ってね」

「ふ、ふん。せいぜい頑張りなさいよ」

「ふふっ。私もシフォンを頼りにしますよ」


 シフォンに素直な言葉を口にされたショコラは、照れを隠すようにそっぽを向いた。

 そんな二人の様子を笑顔で見ていたティラも、シフォンを頼りにする事を口にした。


「あ~、なんかこんな話をしていたら、またトレーニングしたくなってきたなぁ」

「ふふっ、シフォンは勇者になる為、強くなる事に余念がないんですね」


「そりゃそうだよぉ。だってこの学校には、ボクよりも強い人達が沢山いるんだと考えると・・・ボクは勇者になる為に誰よりも強くならないといけないんだから」

「まあ、気持ちはわからないでもないわね」

「そうですね・・・そういえば、この寮にも室内訓練場がありますよね?」


「うん、そうみたいだね。ボクはさっき外の訓練場を使ったけど、室内のはまだ使って無いし見てもいないなぁ」

「あきれたわ・・・アタシ達と会う前に既にトレーニングを終わらせていたなんて。それでまたトレーニングがしたいとか・・・」


「いくらやっても、やりたりないよ?」

「・・・」

「まあまあ。では、とりあえず室内訓練場を見るだけでも行ってみませんか?」


「うん!行こう行こう!」

「ええ、そうね。見るだけなら申請も要らないでしょうし、行ってみましょう」


 ティラの提案にシフォンとショコラは賛同し、室内訓練場へと向うため歓談室を後にする。


「そういえば、二人は同室なんだよね?」

「ええ、そうですよ」

「アタシ達二人が違う部屋なんてありえないわね」


 歩きながらシフォンは二人に話しかけている。


「ボクの部屋はまだ同室の娘が来て無いんだよね」

「そうなの?」

「まあ、昨日から寮に入れるというだけで、昨日からではないと駄目と言うわけではありませんからね」


「うん、確かにそうだね。でも、どんな娘なのか気になるなぁ。早く会いたいなぁ」

「そんなに焦らなくても、その内に嫌でも会うことになるでしょうに」

「シフォンの気持ちはわかりますけどね」


 三人が話している内に、女子寮から通じる室内訓練場の入り口に差し掛かった。

 すると・・・


「あっ!」

「ああ!ちょ、ちょっと待って!」


 ティラとシフォンが同時に声を上げた。

 男子寮側の出入口から人が出て行く姿が見え、その姿には見覚えがあったからだ。


 しかし二人の声も空しく、その相手は気づく事無く訓練場を去って行った。


「絶対あの時の人だよね?」

「はい、間違いないと思います」

「・・・ねえ、何二人だけで納得し合っているのよ?ねえ、誰かいたの?」


 ティラとシフォンが確認し合っていると、二人の後ろに居たショコラは誰かが居た事すら気づかなかった為、しきりに聞いている。


「あ、ごめんね。う~んとね、えっと~・・・」

「姉さんにも、私がシフォンに助けてもらった話をしたでしょ?その時にもう一人いた事も話したじゃない?」


 シフォンが何と言っていいのか考えていると、ティラがショコラに説明を始める。


「ああ、そういえば言っていたわね。ティラの想い人の話」


 ショコラはティラが語って聞かせてくれた時の事を思い出しながら、うんうんと頷いている。


「ほえ?想い人??」

「ちょ、ちょっと、姉さん!違うでしょ!シフォン誤解しないで下さい!お礼が言えなかったと話しただけです!!」


 そのショコラの言葉によりシフォンは目が点になり、人差し指を顎につけながら首をかしげた。

 ティラはショコラの思いがけない言葉に動揺し、あたふたと弁解している。


「え?でも、あの時のティラの顔は・・・」

「姉さん!!」


 さらに続けようとしたショコラを遮るようにティラが怒鳴った。

 その顔は笑顔なのに、背後にはどす黒いオーラを纏っているようにシフォンとショコラには感じられた。


「ご、ごめんって!もう言わないから、落ち着いて!」


 さすがにティラの雰囲気にビビッてしまったショコラが、ティラを宥めようとする。


「何を仰っているのですか?私はいたって落ち着いておりますよ?」

「恐い!恐いって!笑っているのに笑っていないその目とか、そのいつもより無駄に丁寧な言葉遣いとか!本当に恐いから、落ち着いて!」


 ガクブルになってしまったショコラが、若干涙目でティラに訴える


「ふぅ~、私も少し大人げなかったですね。すみません・・・」


 冷静さを取り戻したティラが二人に謝った。


「ティラって、怒らすと意外と恐いんだね・・・」


 ティラの様子を見ていたシフォンがショコラに耳打ちする。


「そうよ、アナタも余計な事を言わないように気をつけた方がいいわよ」


 まだ少しだけ震えていたショコラが、シフォンに忠告している。


「何か言いましたか?」

「いえ!何も言っておりません!」

「べ、別に何も言って無いわよ」


 ティラがギロッとした目で二人を見ると、シフォンは敬礼するような姿勢になり、ショコラもティラと目を合わせようとはしなかった。


「はあ、まあいいです。でもあの人も、同じ学校で同じ寮にいるという事がわかりましたね」


 ティラは諦め気味に溜息を吐きながらも、あの時お礼を言いそびれた人物(シャイル)が同じ寮に住んでいる事がわかり安心していた。


「そうだね。でも、ランさんと仲良さそうにしていた所を見ると、上級生なのかな?」

「へえ、その人はあの“自称お姉さん”と仲良くしてたんだ?」


 シフォンは彼の去り際の姿を思い出しながら何気なく呟き、その光景が見えなかったショコラが聞き返す。


エンゼルランは間違い無く年上なのだが、ショコラにしてみれば彼女の見た目や言動から年下にしか見えない為に、年下でありながらお姉さんぶっているのでは?と思っている。


「うん、なんか手を繋いでいる姿が見えたよ?」

「へえ、それはそれは。二人はデキて・・・」

「・・・」


 シフォンの言葉に、ある事ない事言おうとしたショコラがビクっとした。


「って、ちょ、ちょっと、ティラ!恐いって!!」

「おほほほほ、どうかされましたかショコラお姉さま?」


 先程の笑顔よりもさらに笑顔なはずなのに、纏うオーラはそれ以上のものを醸し出している。

 それに加えていつもとは違う笑いや口調がより一層恐怖を掻き立て、ショコラは怯えシフォンは後退りしている。


「や、やっぱりティラは・・・」

「はい?何かおっしゃいましたか、お姉さま?」

「い、いえ、何もおっしゃっておりませんです、はい・・・」


 ティラのあまりの迫力にショコラはたじたじとなりながら、おかしな言葉遣いで誤魔化す。


「ええ、私はお礼が言いたいだけです。ただ、それだけなのです。ええ、本当にそれだけです・・・」


 ティラは自分に言い聞かせるように、ブツブツと呟いている。


「もう、わかったわよ!今度見かけたらすぐに教えてちょうだい!ちゃんと捕まえてティラにお礼を言わせるから」

「い、いえ、そこまでは・・・」

「うん、それにはボクも協力するよ!彼にはまだ名前も教えてもらってないしね」


 今度はショコラとシフォンの勢いにティラが押される形となり、ティラがたじたじとなっている。


「というか、ランさんに聞けばいいだけじゃないのかな?」

「ああ、そっか。あの自称お姉さんは一緒にいた訳だし、何よりも管理人なのだから、わからないわけがないわね」

「え?え?え?」


「そうと決まれば、早速レッツゴー!」

「そうね、善は急げというしね」

「え?あ、ちょ、ちょっと・・・」


 シフォンとショコラが矢継ぎ早に喋り、話が勝手にどんどん進んでしまう事に、ティラは目を白黒させていた。

 そのティラの両脇を二人が抱えて、引きずるように訓練場を後にした。




 その後3人は、エンゼルランと会う事が出来たのだが「う~ん、個人情報だしねぇ。勝手に教えるのも・・・」と言われ、結局は名前すら知る事が出来なかった。

 ただ「でも貴方達と同じ新入生だから、もしかしたら同じクラスになるかもしれないよ?それまでのお楽しみってことで」と学年が同じ事だけは教えてくれた。


 それを聞いた3人は同じ学年だからといって、確実に同じクラスになれるというわけでもないし、必ず会えるとも限らないので、良かったのかどうか頭を抱えていた。





登場人物

シフォン:勇者を志す少女

ティラ:絡まれていた所をシフォンに助けられた少女

ショコラ:ティラの双子の姉

エンゼルラン:学生寮管理人


武器職

魔道士(ウィザード)

上級魔道士(ハイウィザード)

大魔道士(アークウィザード)


治癒魔法士(ヒーラー)

上位治癒魔法士(ハイヒーラー)

治癒大魔法士(アークヒーラー)


聖天導師(アデプト)


剣士(フェンサー)

剣闘士(グラディエーター)

剣豪(マスターフェンサー)


剣聖(ソードマスター)



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