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幕間 ある者達の会合とシャイルへの来訪

色々あり遅くなりましたが、ようやく更新します。

 



 ある深夜のある一室

 この場所は、入念に防音・遮断結界を張り巡らせていた、


 そしてその部屋の中では、2人の男が対面に並べられたソファーに、互いに向き合い座っていた。

 そして上座に座っていた男が口を開く。


「・・・それで、今年はどんな感じだ?」

「はい、今年はいつにも増して豊作揃いのようで、質の高い者が期待出来そうです」


「ほう?そうかそうか、それは僥倖だな。去年はあまりにも不作だったが、それを取り戻せそうと言う事だな?」

「ええ、仰るとおりです」


「・・・ただ、最初から優秀過ぎれば、逆に扱えない可能性もあるが・・・そいつらは、いつも通りに使えそうなのか?」

「それには問題無いかと。すでに下準備を着々と進めている所で、今の所は上手く誘導できているようです」


「それならいい。そのまま計画通り進めろ」

「はい・・・ただ一つ、気になる事が・・・」


「なんだ?上手くいっていると言ったばかりだろう?」

「ええ、計画そのものに問題はないのですが・・・ただ、何人か実力を隠しているようで、本当の力を測りきれない者もいるのです」


「・・・それは、お前が本気を出しても見極める事が出来ないというのか?」

「・・・いえ、さすがにそれはないでしょう」


「だったら、さっさとそいつらの力を見極めておけ!」

「はい、申し訳ございません・・・・・2年前の彼女以外では、ずっと大した者が現れなかったので気を抜いておりました・・・・・完全に私の怠慢です」


「わかったならいい。ただ、丁度話にも出たから言うが、その女の時の様な失敗だけはするなよ?」

「ええ、もちろんです」


「あれは優秀過ぎるが故に、最初に失敗した時点で我らの手にはおえなくなってしまったのだからな」

「それは私が十分身に染みております・・・・・同じ轍を踏む事などありえません。それを教訓とし、相手の実力とは関係無く作用する方法をとっておりますので」


「・・・そうか。では、このままお前に任せるから、引き続き上手く事にあたれ」

「はい、わかりました」


 指示を受けた男が了承して頭を下げる。

 そして腰を上げようとした、その時。


 コトン


 と、天井裏から物音がした。


「誰だ!?」


 立ち上がろうとしていた男が瞬間的に動いて、天井の物音がした場所へ剣を鋭く突き刺す。

 すると・・・


 チュ~

 トトトトトトッ


 と、ネズミの鳴いた声が聞こえ、逃げて駆けだしていく音が遠ざかっていった。


「・・・何者かが潜んでいるのかと思いきや、ただのネズミだったようですね」


 その男は、そう口にしながら剣を鞘に収める。


「ああ、そのようだな」


 もう1人の男はソファーから一度も立ち上がる事なく、一連の様子を伺っていた。

 そして誰かが居たわけではない事に安堵する。


 というか、そもそも防音・遮断結界を張っている時点で、誰かに盗み疑義などされるわけがない。

 2人共すぐにその事に気付き、何事もなかったかのように振る舞う。


「それでは、私は失礼します」

「ああ・・・・・そうだ、その前に言っておく事がある」


 部屋を後にしようとした男が、その言葉により身を翻す。


「なんでしょうか?」

「・・・天井に開けた穴を塞いでから行け」


「・・・・・はい」





 ◆◆◆





 学園の休日。


 勇者養成学園学生寮に向かって、オドオドした挙動不審な少年が足を歩ませている。


 その少年はおっかなびっくりしながらも、なんとか学生寮の入り口まで辿り着いた。


 そして入り口から中へ入り、すぐ横にある管理人室の小窓をコンコンとノックする。


 しかし何も反応がない・・・


 試しにもう一度ノックをしてみる。


 それでも反応がない・・・


 仕方が無いので、意を決して小窓を開けて声をかけてみる事にした。


「すみませ~ん」


 中に声を掛けても何も反応はない。


 誰もいないのかな?と思いつつも、もう一度だけ声を掛けてみた。


「すみません!誰かいませんか?」


 それでも何も反応が無く、管理人室に誰もいないとか無用心だなと思いつつも、これ以上はここにいても仕方が無いと出直す事に決めた。


 と、その時・・・


 ドタバタ、ガン! 「あいたぁ~!!」 ドタバタ


 と、慌てて走る音と、何かにぶつかったのだろう・・・何か激しい物音が聞こえたかと思った瞬間に痛がる悲鳴が聞こえ、それでもこちらに近づいてくる音が聞こえてきた。


「うう~、いたたたたぁ~・・・ご、ごめんね~、お待たせしちゃったね~」


 痛みを堪え目に涙を浮かべながら、急いだ様子で窓越しに姿を現したのは幼い容姿の少女だった。


 それはもちろん、エンゼルランである。

 その右頬には腕を枕にしたと思われる赤い跡が見える事から、おそらく仕事をサボって昼寝をしていたのだろうと考えられる。


「あ、ああ、いいえ、大丈夫です」


 その少年は苦笑いを浮かべながらも、なんとか取り繕う。


 そして、エンゼルランも気を取り直し、改めて目の前の少年と向き合う。


「それでそれでっ・・・君はどなたで、何の用事かな?」


 その少年は、エンゼルランにとっては初めて見る顔であったため、誰であるかの確認と寮へ来た目的を尋ねる。


「あ、はい。僕はペキニーといいまして、鍛冶錬金学校の生徒です」


 そう、その少年はペキニーであった。

 シャイルに頼まれていた、魔力除去(アンチエンチャント)をした指輪が完成したため届けに来たのだ。


「貴方がエンゼルランさんでお間違いないですか?」


 シャイルからは、ペキニーが寮に来たらエンゼルランという女性に取り次いでもらえるように頼んでおくと言われている。

 その際になぜか、エンゼルランは(れっき)とした大人だと、念を押されていたのを不思議に思った事を思い出していた。


 そのためペキニーは、目の前の女性を見てピンと来た。

 シャイルは、彼女の容姿について言っていたのだろうと理解する。

 そして、そうは思いつつも間違っていては困るため、彼女がエンゼルラン本人であるかを確認した。


「うん、私がエンゼルランだよ~!」


 ペキニーは彼女の事に付いて、シャイルから予め聞かされていてよかったと思った。

 そうでなければ間違い無く彼女を子供扱いして、彼女に管理人がいるかどうかを確認してしまう所だっただろうと考えたからだ。


 そう考えながら、余計な事を言わなくて済んだとほっと胸を撫で下ろす。


「ん?私に何か用事があったのかな?」

「あ、いいえ、この寮にシャイルという方がいらっしゃると思うのですが、頼まれていた品物を届けに伺ったのですが」


「あ、ああ~、思い出した。そういえばシャイル君から、いつになるかはわからないけど届け物を持って来るはずだと聞いていたよ。その子が、ペキニー君という名前である事も聞いていたんだったよ!」

「あ、そうですか。よかったです」


 ペキニーは最初、エンゼルランの様子を見てシャイルが話をしてくれていないのかと不安に思ったのだが、ただエンゼルランが忘れていただけだという事を知って安堵した。


「了解!シャイル君は今、部屋にいるはずだからすぐに呼んでくるね!少しだけ待っててね~!」

「はい、お願いします」


 エンゼルランの話し方や、シャイルを呼びに行くと元気に駆けていく姿を見て、確かに大人だと疑わしく感じてしまうが、それを口に出来るペキニーではなかった。

 ただ、なんだか微笑ましい気分になった事は間違いない。



 ・・・・・・・

 ・・・・・

 ・・・



 エンゼルランがシャイルを呼びに行ってから数分後。


「やあ、ペキニー。待たせたな」

「おっまたせ~!」


 声をかけられたペキニーは声の主を確認するべく、その方向に顔を向けると、「えっ!?」と驚きの声を上げてしまった。


 というのも、声の主はシャイルとエンゼルランで間違いないのだが、問題はなぜ彼が彼女を背負っているのか、という事だった。


(いやいや、なんで!?)


 とは思ったものの、それを口にする度胸はペキニーには持ち合わせていなかった。

 なので・・・


「や、やあ、シ、シャイル君。ぜ、全然待ってないから大丈夫だよ」


 と、何とか必死に平静を装おうしたのだが、動揺を隠す事が出来ずにどもりながら答えた。


「・・・いや、無理しなくていい。お前の言いたい事はわかっている・・・わかっているからさ」


 そんなペキニーの心情など、シャイルには言われなくてもわかっている。

 むしろシャイル自身の方が、なんでこんな状態になっているのか理解不能だった。


 まあ理由については、特別な事があったわけではない。


 シャイルを呼びに行ったエンゼルランが、出会った初日と同じように両手を伸ばして「はい!」と言っただけである。


 もちろんシャイルは、「いや、意味がわからないから」と断ったのだが、「ふ~ん、そういう態度を取るんだ?じゃあ、これからはシャイル君の頼みは聞いてあげないんだからね!」と言われてしまえば、泣く泣く言う事を聞かざるを得ない、という選択肢しか存在せず、現状に至るというわけだ。


「ほら、もういいだろう?ペキニーが反応に困ってるだろう」


 シャイルはそう言いながら、背負っているエンゼルランの足を抱え込んでいた腕を離した。

 ・・・のだが、エンゼルランは両手を首周りに、両足はシャイルの腰周りに上手い事しがみ付かせて、降りるのを断固拒否した。


「こらっ、早く降りなさい!」

「い~やっ!!私を一生背負って生きていく約束でしょ!?」


 身体をゆすって振り落とそうとするシャイルに対し、エンゼルランは嫌だと必死にしがみついて抵抗する。


「ちょっと待て!いつそんな約束をした!むしろ、それは最初の時に断っただろうが!」

「断られた記憶なんて、私にはございませ~ん!」


「なんて自分に都合のいい記憶なんだよ・・・」

「ふふ~ん、自分に都合の悪い記憶を忘れるのは、女性と貴族だけに許される特権だよ!」


「都合の悪い記憶だと覚えてるんじゃないか・・・」

「ギクッ!ちょっとシャイル君!人の揚げ足をとらないの!」


「はあ、まあいいや・・・悪いな、ペキニー。この背後霊は気にしないでくれ」

「ちょっと、シャイル君!!言うに事欠いて背後霊って何さ!この愛らしい天使ちゃんにむかって!」


「いや、天使って・・・どっちかと言うと悪霊・・・」

「んもう!シャイル君のツンデレ!!」


 それは違うんじゃないかとシャイルは思うが、これ以上構っていても放置されているペキニーに申し訳ないので、口にする事はしなかった。


「あははっ」

「ほらペキニーにも、エンジーの奇行を笑われてるぞ」

「私は奇行なんてしてないよ!?笑われたのは、むしろシャイル君のツンデレでしょ!?」


 エンゼルランがシャイルの背中から降り、2人がエンジーだ!シャイル君だ!と低レベルな争いを繰り広げている間も、ペキニーは楽しそうに笑っていた。


「ははっ、笑っちゃってごめんね。別に2人が可笑しいとかそういう事じゃなくて、なんか・・・すごく仲が良くて羨ましいなぁと思って」

「そうか?エンジーと俺はそんなに仲が良かったか?」


 ペキニーが笑った理由を告げると、シャイルは首を傾げながらエンゼルランを見た。


「もう!ほら~!シャイル君のツンデレ~!!」

「ちょっと待て!今のはツンの要素がない上に、どこにデレがある!?」


「だって私たちは、もうすでに一線を越えたというかぁ、一つの線になったというかぁ・・・ねえ?」

「だから言い方!・・・まだそのネタを引っ張るのか・・・」


 案の定、エンゼルランの言葉を聞いたペキニーは、スコティーの時と同じように「ええええ!!??」と大声を上げて驚いていた。


「ほら、ペキニーも驚いているだろうが・・・ペキニーもあまり真に受けるな。俺がエンジーを背負った事を言っているだけだからさ」

「んもう!シャイル君はいつも、ネタをばらすの早すぎだよぉ!」


 シャイルの説明を聞いたペキニーは、「あ、ああ、だから一つの線なのかぁ」と1人勝手に納得していた。


 シャイルはこれ以上、エンジーを構っていてはいつまで経ってもペキニーと話が出来ないと考え、とりあえず談話室へと場所を移してペキニーをソファーに座らせた。


 シャイルは対面のソファーに腰を下ろす。

 そして、なぜかこの場にいるエンゼルランはソファーには座らずに、シャイルの座っているソファーの後ろで背もたれに両肘をかけ、両手に顔を乗せながら一緒に話を聞くようだ。


 シャイルはなぜエンゼルランに、仕事はどうした!?と突っ込みたい所だったが、それをするとまた話が進まなさそうだったので、グッと我慢する事にした。


「それで、ここに来てくれたと言う事は、頼んでいた魔力除去(アンチエンチャント)の指輪が全部出来たのか?」


 シャイルはペキニーに頼んでいた物が出来たのかどうかを確認する。


「うん、折角シャイル君から頼まれたから、優先して7個全部作り上げたよ」

「ああ、何もそんなに急がなくても良かったんだけどな・・・だけど、助かるよ。ありがとな」


 シャイルが礼を言うと、ペキニーは嬉しそうに指で頬をかいていた。

 そして身を乗り出して、シャイルに指輪を手渡す。


 手渡されたシャイルは指輪を一個一個確認していく。

 その様子を、エンゼルランがすすすっと移動してシャイルの背後に回り、首に手を回して抱きつくような体勢で、シャイルの顔の横から自身も顔を覗かせて眺めていた。


「・・・エンジー、なぜ俺に抱きつく・・・?」


 シャイルはエンゼルランへ顔を向ける事も無く指輪を確認しつつも、はあっと溜息を吐きながらエンゼルランに問いかける。


「へえ、ペキニー君もシャイル君の同級生だとは聞いていたけど、確かにそれでこれだけ魔力除去(アンチエンチャント)が出来るのはすごいね」


 エンゼルランはシャイルの質問に答える事もなく、シャイルの手にある指輪の一つを取り上げながら呟いた。


「そんな、僕なんて全然大した事ないですよ・・・魔法付加(エンチャント)も全く出来ないので、本当にこれしか出来ないだけですし・・・」


 はははっと苦笑いを浮かべながら、ペキニーは自分を卑下するように答える。


「ううん、そんな事ないよ!・・・一般的には魔法付加(エンチャント)が重要視されがちだから、みんな勘違いしているけど、魔法付加(エンチャント)魔力除去(アンチエンチャント)という土台が無ければ、何の意味もない事なんだよ!」


 エンゼルランは自分を卑下するペキニーに、以前シャイルがスコティーに説明していた様な事を力強く言う。

 ペキニーはその強い口調に驚いた顔を浮かべながらも、エンゼルランの言葉に耳を傾ける。


 そして、エンゼルランが更に続ける。


魔法付加(エンチャント)が出来るから偉い?そんなバカな話はないんだよ!確かに魔法付加(エンチャント)は、程度がどうあれ出来る人は多いよ。でも、だからって出来なきゃいけないわけじゃないし、むしろ出来る人が少ない上、絶対に必要である魔力除去(アンチエンチャント)が出来る人の方が私はすごいと思うよ」


 エンゼルランは、魔法付加(エンチャント)が出来る方が優れていると思われている現在の風潮が気に入らないようだ。


 確かに魔法付加が出来なければ、武具はただの武具でしか有り得ない。

 魔法付加をすれば、それだけでも普通の武具と比べれば格段に性能が良くなる。


 しかし、魔力除去(アンチエンチャント)がされていない状態で、魔法付加をした所で程度はしれている。

 エンゼルランが言うように何の意味も無い事ではないが、それこそ全く同じ効能であれば、性能の差は如実に現れるのだ。


 その下地を作る、縁の下の力持ちの存在を忘れて、魔法付加士(エンチャンター)の方が魔力除去士(アンチエンチャンター)よりも優れているなんて、馬鹿げた話なのである。


 更に言えば、エンゼルランは自分で魔法付加をする事が出来るが、魔力除去は出来ない。

 なぜならば、以前シャイルが言っていた様に、魔力除去にはかなり繊細な作業が必要であるからだ。


 そんな事がエンゼルランに出来るはずがないのである。


 それを自分で理解しているからこそ、エンゼルランは魔力除去士(アンチエンチャンター)はすごいと思っているのである。


「・・・・そこまで言って頂けるとは思いませんでした。ありがとうございます・・・・・そして、すみませんでした」


 ペキニーは自分自身を卑下した発言に対して、エンゼルランがそこまで本気で怒ってくれるとは思ってもいなかった。

 だからこそ、エンゼルランに対して感謝の気持ちと、自分の軽はずみな発言が恥ずかしくなり謝罪の言葉を口にしていた。


「ペキニーと初めて会った時に、俺と一緒にいたもう1人の人物もそうなんだが・・・ペキニー、お前は自分を下に見過ぎだ。他の人に何を言われようと、自分のしている事に自身を持て。じゃないと、折角の才能が埋もれてしまうぞ」


 最近はマシになってきたとは言え、シャイルはスコティーの最初の頃を思い出して溜息を吐きながら、ペキニーに対して自分に自信を持つように伝える。

 そして、シャイルは考える仕草をして、少し間を開けてから再び口を開く。


「・・・俺はお前以上に一つの事以外は全く何も出来ないやつを知っているが、そいつは自分に出来るただ一つの事を徹底的に突き詰めていった。その結果、誰にも真似する事が出来ず、誰もが羨み、そして誰もが欲する必要とする程の技量を身につける事が出来たんだ」

「そう・・・なんだ・・・その人も、すごい努力をしたんだね・・・」


「ん、まあ、簡単に努力の一言で片づけて良いのかどうか・・・」

「え?どういう事?」


「そいつの場合は、人から罵声を浴びせられ、物をぶつけられ、集団に殴る蹴るの暴行を受け・・・それでも血反吐を吐きながら、一心不乱に突き進めた結果だからなぁ」

「あ、そ、そうなんだ・・・ごめん、軽はずみな事を言って」


「いや、それはいいんだが・・・ただ、俺が言いたいのは、そいつの様になれって事じゃなくて、自分の出来る事を自分なりに必死こいてやれば良いって事だ」

「う、うん・・・・そっか、そうだよね」


 スコティーはシャイルの言葉を受け、納得するように自分に頷いていた。


「・・・今までの僕は、否定された事しかなかったから・・・でも、そうだよね。僕がそれしか出来ない・・・いや、それが出来るのであれば、周りを気にせずに一生懸命やればいいんだよね!」


 ペキニーは今まで周りからの扱いなどもあり、自分自身を認める事など出来るはずがなかった。

 しかしエンゼルランとシャイルは、そんなペキニーのやっている事はすごい事なのだと諭してくれた。


 それがペキニーにとっては嬉しくて、少し照れくさそうに頬を書きながらニコッと笑っていた。


 それを見た2人も互いに顔を合わせて、シャイルはフッと笑みを浮かべ、エンゼルランは満面の笑みを浮かべていた。



 もう大丈夫だろうと感じたシャイルはそれ以上は何も言わずに、指輪の確認作業を続ける。


「うん、大丈夫だな。指輪は全て以前と同じように9割近く魔力除去(アンチエンチャント)されているようだ。ありがとな、全て貰い受けるよ」


 シャイルは全ての指輪を確認し終え、感謝の言葉を口にした。


「僕の方こそ・・・ううん、僕の方が2人に感謝してもしきれなくらいだよ。本当にありがとう」


 ペキニーは自分が感謝されるのではなく、自分こそが2人に感謝しないといけないと告げた。

 それに対して、エンゼルランが首を横に振る。


「そんな事は全然気にしなくていいんだよ。それよりも、もし何か困った事や相談があったらシャイル君でもいいし、もちろん私でもいいから、また気軽に訪ねておいで!お姉さんがいつでも相談に乗ってあげるからね!」

「・・・・・全く、勝手に人を持ち出すなよ・・・・まあ、確かにエンジーは俺と違っていつでもここに居て暇を持て余しているはずだから、俺がいなければ遠慮無くエンジーを頼るといいさ」


 シャイルの言葉にエンゼルランは、「ちょっとシャイル君!?」と詰め寄り、再び2人であーだこーだと言い合いを始めていた。


 ペキニーはそんな2人を微笑ましそうに見ながら


「うん、本当にありがとう」


 と笑顔で頷いていたのだった。






登場人物

★シャイル:謎多き主人公。

★エンゼルラン:勇者養成学園、学生寮の管理人。教師であるアルストロメリヤと仲が良い。見た目は幼いが立派な大人。

★ペキニー:鍛冶錬金学校の生徒。魔力除去(アンチエンチャント)しか出来ないが、それが故にシャイルの気を引き知り合う事になった。



予定としては、もう1話幕間を入れるつもりです。


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