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幕間 究極の爆弾(?)投入!?

2-11 冒頭部の話です。


 


 学園から帰宅途中、寮に入る手前にて。


「あー、ショコラにシフォン、それとヴェリー、ちょっといいか?」


 シャイルは休日の間に魔法付加(エンチャント)しておいた指輪を渡そうと、3人を呼び止めた。


 ペキニーからは3個しか受け取っていないため、一遍に全員へと渡す事は出来ない。

 そのため、先に彼女達に渡そうと決めていた。


 なぜなら、ティラに最初に渡している為、ショコラに渡さない訳にはいかない。

 そうすると今度は、シフォンに渡さないとうるさそうだと考えたからだ。


 もちろん、プディンやタルトから文句を言われる事を覚悟した上である。


 ヴェリーに関しては、彼女が文句を言う様な()ではなく、むしろ後でも良いと考えてくれているようではあるが、残りの1個をプディンかタルトのどちらかに渡してしまうと角が立つのが目に見える。


 その上、仲の良いシフォン達4人の中でヴェリーだけ後にするというのも、さすがに申し訳ない。


 もちろん、スコティーは文句を言うような性格ではないし、いつでも渡せるので後でも構わないだろうと考えている。


 シャイルが3人を呼び止めた事で、この場に残っているのはいつものメンバーとスフレール、クーヘンバウムである。


 シェットラン達は自分に関係無いとわかると、感心がないとばかりに寮へ入っていった。

 エクレイアはシフォンとは違い、ああ見えて空気が読める為、この場を去っている。

 マカローナは別にシャイルと親しいわけではないので、ヴェリーともう少し話したそうにはしていたが、渋々といった感じである。


 本当なら3人以外は、彼らのようにこの場を去ってほしいとシャイルは思うのだが、さすがに邪険にするわけにもいかいかと溜息を吐く。


 仕方が無く、他の者もいる中で指輪を渡す事にした。


「ほら、この前頼まれていた物をやるよ。ショコラにはティラと同じで反応速度の上がる魔法付加(エンチャント)がされた指輪。シフォンとヴェリーには空間把握が向上する指輪だ」


 ショコラにはティラと差別化しない為に同じ効能を魔法付加(エンチャント)してある。

 シフォンとヴェリーにも、最初は同じ物でもいいかとは思ったが、それよりも前衛である2人には空間把握が向上する方がいいだろうと考えた。


 その魔法付加の効能としては、自分の感知する領域内での動きを捉える力を向上させる。

 それにより、目の前の攻撃がより的確に見えるだけでなく、死角からの攻撃も関知しやすくなる。


 もちろん、反応速度がなければ感知しても対応は出来ないのだが、そこは前衛である2人なら鍛えればどうにでもなるだろうと考えての事だった。


(へえ、本当に用意してくれたんだね!しかも、まさに今のボクに必要な効果じゃないか)


「欲しいと言っておきながら言うのも何ですが、わざわざ私にまで用意してくれるなんて、本当にありがとうございます」


 シフォンとヴェリーは嬉しそうに、口々に礼を言う。


 そして、シャイルから説明を受けながら手渡された3人は、手の平に置かれた指輪を嬉しそうに見ていた。


「姉が発端で、シャイルにはご迷惑をおかけしてすみません・・・」


 ショコラが「元々は、ティラだけが貰ってたからでしょうが!」と叫んでいるのを無視して、ティラは更に続ける。


「それで、今更ですが・・・いくらかかりましたか?その分は、きちんとお支払いしますので」


 自分の分だけでなくショコラの分までとなると、それなりに費用が掛かるだろうと考えたティラは、恐縮しながらシャイルに尋ねる。


「いや、気にしなくていい。別に大した金はかかってないからさ」


 と事も無げにシャイルは言うが、実際はそんな事はない。

 ペキニーから原価で買った指輪の金額でさえ、一般的な一日分の収入に相当する。


 しかも普通なら、魔力除去(アンチエンチャント)された武具品というのは、原価よりも金額か跳ね上がるのは当前である。

 ましてや、シャイルは正規品としてペキニーから10個も購入しているのだから、相当の金額である。


 ペキニーが、貰った金額に驚いたのには、そうした訳がある。


 もちろん、そんな事を知るはずのないティラだが、彼女達が受け取った物は魔法付加(エンチャント)された指輪である。

 普通なら、魔法付加された武具品、ただそれだけでも店で売っている物は高いのだ。


 シャイルが魔法付加出来る事を知らないティラが、どこかで買ってきたのだろうと考え、心配するのも無理はない事である。


 しかし、シャイルが自分で魔法付加をしたとはいえ、先に述べた通り、確かに指輪の購入金額はそれなりにかかっている。


 それでもシャイルは全く気にする事はない。

 なぜならば、シャイルは様々な経緯により、お金に困ってはいない。

 というよりも、有り余っているのだ。


 だからと言って、慈善的にお金や物品を購入して分け与えるような事をする気はない。

 シャイルは誰かの役に立ちたいわけでもない上、もしそれをしてしまえばキリが無い事を知っているからだ。


 シャイルは見返りも、名声も、何も求めはしない。


 それが故に、必要であれば対価を要求する事も厭わない


 もし、何かを分け与えるとした場合は、身近な人だけに限定している。

 さらにそれには、分け与える理由と、自分なりに意味がある と判断した上での事。


 そして今回はシャイルにとっては意味があり、対価を必要とはしないのである。


「ですが、そう言われましても・・・」


 と、引き下がろうとしないティラに、ショコラが口を開く。


「まあ、シャイルが良いって言うなら、それでいいじゃない」

「はあ・・・それは、姉さんは良いかもしれませんが・・・」


 ショコラの発言に対して、どこか呆れたように言うティラを見て、ショコラは内心で怒った。

 とは言っても、本気で怒っている訳では無く、さっき無視された分も含めてティラをからかおうと思ったのだ。


 そしてショコラは、決して触れてはならない禁断の爆弾を投入してしまう事になる。


「シャイルありがとね。デザインも悪くないし、大切にするわね」


 ティラを無視しながらそう言ったショコラは、ティラに見えるようにわざと左手の薬指に指輪をはめる、という暴挙を成し遂げてしまったのだ。


 そしてさらなる爆弾を投入。


「うふふっ、これでアタシ達は・・・ねえ、ア・ナ・タ!」


 などと言ってしまった上、シャイルの胸を人差し指で軽く突くという、(ティラ)をも恐れぬ冗談をしてしまった、その瞬間・・・


 ゴォーという音が聞こえそうな程の、ダークなオーラを纏うティラを目にしてしまった。


「ね・え・さ・ん?」

「ティ、ティラ・・・さん・・・?」


 ティラをちょっとからかうだけのつもりだったショコラは、身の危険を感じてプルプル震えながらシャイルの後ろに隠れた。


 しかも、からかう対象はティラだけのはずだったのだが・・・


「ヒィッ!」


 シャイルの後ろに隠れながら、少しだけ顔を覗かせたショコラが悲鳴を上げた。


 ショコラが見たのは、スフレールがクワッ!と目を見開いたと思ったら、今度は生気を失ったゾンビの様な表情と脱力した状態になり、徐々にショコラへと近づいてきる光景だった。


 さらには、あからさまに殺意を隠そうともしないタルトまで。


 プディンとクーヘンバウムは、何がなんだかわからないが、楽しそうと無邪気に応援している。

 何を応援しているのかはわからないが・・・


 そしてシャイルは、この状況を見てふと思う。


(あれ?これって・・・なんか俺まで・・・やばくね?)


 と・・・


 俺は関係無いと言っても、この状況では無駄だとシャイルは諦めた。


 シャイルは助け船を期待して、シフォン達をちらっと見たのだが・・・


「あ、あはは、ボ、ボクはトレーニングをしに行かなくちゃ」

「わ、私もマカローナと話の途中だったのを思い出したわ」

「ぼ、僕はトイレを我慢してたんだった」


 と、薄情な3人は、巻き込まれたくない為にすかさず逃げる事を選択した。


 シャイルは、スコティーはまだしもシフォンとヴェリーには、別に見返りを求めていた訳では無いが、指輪をあげた恩もあるため、少しは助けてくれる事を期待していたのだが・・・

 ただ、スコティーの逃げる理由が一番どうでもいいと、シャイルは思った。


 3人の逃げ足は異常に速く、もうこの場から居なくなっていた。


 頼る者が誰も居なくなり、シャイルは溜息を吐く。

 ショコラを庇うわけではないが、このままでは自分まで被害を受けるため、なんとかしなければとシャイルは考える。


 ・・・が、こんな時の対処法など知らないシャイルには、特に良い考えは浮かばない。


 仕方が無いので、とりあえずは動かなければと思いながら口を開く。


「と、とりあえず、皆落ち着け」


 と言いながら、まずはティラに近寄る。


「い、いつもの、ショコラの冗談じゃないか」


 若干引きつりながらも、無理矢理笑顔を作ってティラの頭にポンポンと手を置く。


 すると、それまで(ホトバシ)るダークなオーラを纏っていたティラが、一瞬何をされたのかわからずにキョトンとしていた。


「え?あ、え、えっと・・・えええ!?」


 そして、徐々に我に返り、驚きに声を上げると同時に・・・


 ホシュッ!


 という音を立てて、顔を真っ赤にさせながら蒸気を噴き出していた。

 自分が怒りに任せてどんな状態であったのかを思い出したのと、それ以上に今シャイルに頭をなでて貰っているという現実を理解したからである。


 そのまま、アワアワし始めていたのだが、その様子を見たシャイルは・・・


(よくわからないが、もう大丈夫・・・なのか?)


 と不安になりつつも、ティラは何とかなったと判断する。


 そこで今度は、生気の失った目をして両手をたれ下げたまま、フラフラとショコラへと近づいていくスフレールの前に立つ。

 そして・・・


「おい、どうしたんだ!?スフレール!」


 スフレールの顔を痛くない程度に両手でパチンと挟み込み、そのままの状態でシャイルはスフレールを正気に戻そうと、顔を近づけて話しかける。


 すると、スフレールの目に生気が戻り始めていく。

 かと思いきや、生気が戻る所かどんどん顔を真っ赤にさせていき、声にならない声を上げようと、口をパクパクさせ始めた。


 さらに、シャイルが触っていた頬は異常なほど真っ赤になり、あまりの熱さにシャイルは手を離した。


「きゅ、急にどうした?熱か?風邪でも引いたか?」

「い、い、いいいいいいいえ、な、な、ななななななんでも、ありませぬよ!!」


 心配して声をかけるシャイルをよそに、どもりながらも何とか取り繕うとして変な言葉遣いになってしまう。


(と、とりあえず、こっちも大丈夫・・・って、ほんとにか!?)


 シャイルは自分で大丈夫と納得させようとしながらも、やはり無理があり、自分自身に突っ込みを入れる。


 それでも後はタルトのみだと、何とか自分を奮い立たせる。


 ある意味、一番危険なのはタルトだとシャイルは感じている。

 何に怒っているのかシャイルにはわからないが、本気で実力行使をされると、シャイルでは止められない可能性があるからだ。


 とりあえず何とか落ち着かせるべく、シャイルはタルトに向かう。


 そして・・・


「よしよし、どうどう・・・ほら、落ち着けよ」


 そう言いながら、シャイルはタルトを抱くような形で、背中をポンポンとしている。

 この学園に来る前に会った時、彼女が興奮した場合は、これで落ち着いたはずだったからである。


 しかし、この行為が万が一、タルトの逆鱗に触れた場合は、今日が自分の命日になると覚悟していた。


 恐る恐る、タルトの顔をのぞき込むと・・・


 淡い褐色の肌に、少しだけ赤みを帯びているようでもあり、かつシャイルとは目を合わせようとしない。


(あ、これは、怒っている?・・・選択を間違えたか!?)


 と焦ってしまうのも無理はない。


 しかも、後ろから2つの視線を感じる。

 シャイルはその視線を確認しようと振り返ると、別に誰もシャイルを見ていない。


 おかしいなと思いつつも、タルトの状態を確認しようと前を向くと、やはり視線を感じる。


 その視線を探そうと振り返ると、やはり誰もシャイルを見ていない。


 そんな事をやっていると・・・


「だ、大丈夫だ!私は最初からなんとも無い!」


 と、タルトが軽くシャイルを手で押し離した。


 それと同時に、安堵したような雰囲気も感じていた。


 全てが丸く収まり、ショコラが安堵したのは言うまでも無い事だが、実はティラとスフレールも安堵していたのである。


 先程までの2つの視線はティラとスフレールであり、自分達の事を棚に上げて、タルトがしてもらっていた行為が羨ましかったからである。


 いいなぁ、と思いつつも、早く離れてほしいと願っていたのだ。



 何だかんだで、ようやく落ち着いたとシャイルは安心した。


 のだが・・・


 プディンとクーヘンバウムの2人が、いつの間にかシャイルの目の前まで来ていて、上目遣い――身長差により、必然的にそうなるのだが――で期待を込めて目をキラキラさせていた。


「ねえ、私には~?」

「ねえ、クーは?」


 シャイルには2人が何を訴えているのか、全くわからなかった。

 それでも、とりあえず丁度良い高さにある2人の頭を撫でてやる事にした。

 すると・・・


「えへ~」

「んふぅ~」


 にへらっと、だらしない笑顔をしながら喜んでいた。


 これが正解だった・・・のか?と疑問に思いながらも、2人が喜んでいるならいいかと納得させておいた。


 その後、スフレールが何かを思い出し、訴えかけるように無言でじーっと見つめてきたかと思うと、今度はクーヘンバウムが直接、「クーも、ティラとおそろいが欲しい」と催促してくる始末。


 シャイルは一瞬、何のことかわからなかったが、おそらく2人とも指輪を催促しているのだと理解した。


 行く手を阻まれたシャイルは、指輪をあげると言うまでは離してくれなさそうな2人に、仕方が無いと肩を落としながら渡す事を約束する。


 どちらにしても、この2人にはその内作る予定であったので、それが前後しただけだと納得させる事にした。

 さらには、後1つ余分に作っておかないとな、とシャイルは考えていた。


 その後、タルトとプディンにも早く寄こせと怒られる事になる。




 色々あったが、とりあえずは全員落ち着いた為、みんな寮に入っていく。


 シャイルもそれを見送ると、自分も寮へと入る。


 すると・・・


「シャ~イ~ル~く~ん・・・)


 と、どよどよとした雰囲気と手をダラ~ンと垂れ下げて、それこそ先程のスフレールの様な状態のエンゼルランが、ゆっくりとシャイルに近づいてきた。


「み~て~た~よ~!」

「な、何をだよ!」


 エンゼルランの一種異様な雰囲気に、若干びびるシャイル。


「んもう!タラシでスケコマシで天然ジゴロなんだから!この、女の味方!!」


 急にいつものテンションに戻ったと思ったら、シャイルにとっては意味不明な事を言い出し始める。

 ただ、さすがにいくらシャイルでも、最後の言葉は流れとしておかしくないか?と、気づいたのだが。


「何人にも結婚指輪を渡した挙げ句、渡してない娘には、優しく頭を撫でたり頬を撫でたり抱きしめたり!うらやま・・・じゃなくて、けしからないんだよ!ほんとに女の味方だよ!!」

「いや、確かに状況はそうかもしれないが真実ではないぞ、それ。・・・しかも、さっきから最後の言葉は明らかにおかしくないか??」


 エンゼルランの物言いに、シャイルは訂正しようとするのと同時に、さすがに「女の味方」という言葉に突っ込まざるを得なかった。

 シャイルが誰の味方だ敵だとかいう事に対してではなく、シャイルを否定していながらも味方という言葉に繋がる意味がわからなかったからだ。


「そんなのは些細な事なんだよ、シャイル君!問題は・・・なんで私には、それが無いのかなって事なんだよ!」

「それが無いって、どれの事だよ・・・」


 エンゼルランは自分で話を振っておきながら、真実や自分の言葉なんてどうでもいいと切って捨てる。

 それよりも、自分に対するシャイルの行動の方が重要だと言う。


 ただ、あまりにも漠然とし過ぎていて、シャイルはエンゼルランが何を求めているのかが、皆目見当つかない。


「それは、もちろん!!・・・全部だよ!!」

「・・・・・」


 どれかではなく、全部を要求している事に、シャイルは絶句する。

 一瞬、思考が停止したシャイルは、1つ1つ整理しようと自分自身に問いかけるように口に出す。


「まず、指輪が欲しいと・・?」

「うん、結婚指輪ね!」


「それから、頭を撫でて欲しいと・・・?」

「私が満足するまでね!」


「さらに、頬を撫でて欲しいと・・・?」

「私の目を見つめて、そっと触れてね・・・」


「そして最後に、抱きしめて欲しいと・・・?」

「優しく・・・抱きしめてね・・・」


 シャイルは返事を求めていたわけではないのに、エンゼルランはシャイルの言葉に反応を返す。

 しかも後の方は、身体をクネクネとさせながら、モジモジしているような仕草をする。


「いちいち反応しなくていいわ!つーか、指輪は結婚指輪じゃねえよ!」


 と叫んだ所で、シャイルはようやくショコラの行為を理解して、だからそれを見ていたエンゼルランが結婚指輪と言ったのだとわかった。


 ただ理解はしたが、ショコラがやった事はシャイルでも冗談だとわかる。

 それが、なぜあんな事態に発展したのかについては理解出来なかったが。


「エンジーには魔法付加(エンチャント)のアクセサリーなんて必要ないだろう?」


 シャイルは、結婚指輪ではないしエンゼルランには必要のない物だという事を強調する。


「ふ~ん、やっぱりあれには、魔法付加がかかっていたんだね?」


 シャイルはエンゼルランの言葉を聞いて、がっくり肩を落とす。

 なぜなら、エンゼルランは最初からわかっていながら、結婚指輪とか騒いでいたという事だからだ。


「でも、それはそれ!これはこれ!だよ!」


 魔法付加が掛かっていようがいなかろうが、そんなものは関係無いとエンゼルランは主張する。


「はあ・・・わかったよ・・・じゃあ、魔力除去(アンチエンチャント)してある指輪を手に入れたら、それをやるよ。魔法付加をするなら自分で出来るんだろう?」


 エンゼルランほどの実力があれば、魔法付加程度はたやすい事だろうとシャイルは考えている。

 だから、自分がやる必要は無いだろうとの判断である。


「んもう!違う、違うんだよ、シャイル君!」

「何が違うんだよ・・・エンジーが直接やる方が、効果が高いだろう?」

「そういう事じゃないんだよ!シャイル君は、乙女心がわかってないよ!」


 乙女心って・・・と口から出そうになったが、無闇に藪を突く様な真似はするべきではないと、なんとか押しとどめた。


「そういうものは、心なんだよ!わかる?こ・こ・ろっ!」


 片目を閉じながら、人差し指で一文字ずつ指すようなエンゼルランの仕草に、シャイルは若干イラッとしてしまう。


「貴方が私の為に、心を込めてくれたと言う事が大事なの!効果じゃないんだよ!」


 何となく言いたい事は理解出来たが、別に自分が心を込めてエンゼルランに指輪を贈る意味がわからないと考えるシャイル。

 それでも、そうしないと終らないだろうと考え、折れる事にした。


「わかったよ。何か考えておくよ」

「ふふっ、ようやくわかってくれたようだね!期待してるよ♪」


 更にもう一つ、魔法付加させた指輪を作らないといけないのか、とシャイルは溜息を吐く。


「でも、やっぱりシャイル君は、自分で魔法付加が出来たんだね」

「・・・まあ、今更エンジーに隠しても仕方が無いか・・・でも、俺の魔力はたかがしれてるから、そんな大した物は出来ないぞ」


「うん!さっきも言った通り、シャイル君が私の事を考え、私の為に付加してくれたというのが大事なんだよ」

「そ、そうか・・・エンジーがそれでいいなら、別にいいけどな」


 両手を胸の前で組み、どこか遠くを見つめながら語るエンゼルランに、若干引きながら魔法付加をした指輪をあげる事を約束するシャイルであった。




登場人物


★シャイル:謎多き主人公。

★スコティー:シャイルと同室でクラスメイトの少年。剣士(フェンサー)

★シフォン:勇者を志すクラスメイトの少女。剣士

★ティラ:シフォン、シャイルに助けられたクラスメイトの少女。治癒魔法士(ヒーラー)

★ショコラ:ティラの双子の姉でクラスメイト。魔道士(ウィザード)

★ヴェリー:シフォンと同室でクラスメイトの少女。槍士(ランサー)

★タルト:シャイルと知り合いでクラスメイトの魔族の少女。双剣士(クロスセイバー)

★プディン:シャイルと知り合いでクラスメイトの天人族の少女。武器職無し


★シェットラン:シードック家の嫡男であり、スコティーと同郷のクラスメイトの少年。剣士


★エクレイア:剣術の名門フィナンジェ家の長女でクラスメイトの少女。剣士


★スフレール:入学式の自己紹介でシャイルが気にしていたクラスメイトの少女。人間と偽っているが実はエルフ。狩人(ハンター)

★クーヘンバウム:入学式の自己紹介でシャイルが気にしていたクラスメイト。ティラに懐いている。隠密者(アサシン)

★マカローナ:入学式の自己紹介でシャイルが気にしていたクラスメイト。ヴェリーと意気投合した。槍士(ランサー)


★エンゼルラン:学生寮の管理人の女性。シャイル達よりも年上であるが、見た目や言動が若干幼い。




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