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2-10 最大の精神的ダメージを受けるシャイル

今回、登場キャラがかなり多いです。

わからなくなったら、後書きの登場人物で確認をお願いします。

 


 週明けの今日から、座学・訓練に加えて、魔法の授業も取り入れられていく。


 本格的な魔法理論や魔法構築などは、選択が分かれる2年からとなるが、魔法の成り立ちや基礎魔法などは全員が習う事になる。


 最初は、魔法史をざっくりと説明されていく。



 魔法とは、遙か昔に悪魔が使用していたものとされる。

 彼らは、魔法を行使するのに、詠唱・触媒・魔方陣などを必要とはしていない。


 人が生まれてから次第に歩き出せる様になるのと同じように、彼らも自然に感覚で魔法を行使する事が出来るようになる。

 そのため、詠唱や触媒などに意味を持たず、魔方陣は描くものではなく発生させるものと捉えられていた。


 そして悪魔が何かしらの原因で現世に顕現した際、悪魔と遭遇し魔法を見た者が自分達でもなんとか支える様に出来ないかと、試行錯誤や研究を重ねた結果、詠唱などを用いる事で使える様になったと言われている。


 では具体的に、なぜ悪魔には詠唱がいらなかったのに対し、人には詠唱が必要なのか。

 先にも述べた通り、悪魔は魔法を歩くのと同程度の感覚で使う事が出来る。

 魔法の理論などを考える必要はなく、使いたい魔法をイメージする事で発動させている。


 以前シャイルが言っていた様に、使用する魔法を明確にイメージする事が必要になる。

 悪魔はそれが当たり前のように出来るが、人はどうしても完全なイメージというものが出来ない。

 それは、途中で雑念が入る事もあるし、こうなるといい程度でしかイメージ出来ないからだ。


 それをはっきりとイメージ化させるための過程として、詠唱が用いられたのだ。

 全ての魔法に当てはまるわけではないが、例えば1小節目に使う魔法の属性・質、2小節目に効果・規模、3小節目に使用場所・力の方向、そして最後に使用する魔法名を唱える。


 こうして言葉に意味を持たせ、発動させる魔法のイメージを作り上げる事により魔法を使う事が出来るのだ。

 と言う事は、その言葉の意味を理解せずに、呪文だけを唱えても効果が無いという事になる。

 さらには、意味を理解してもイメージが出来ないのであれば、それもまた然り。


 現代で魔法が使えないという者の大半が、そうした理由からなのである。



 逆に無詠唱で魔法が行使出来る者にとっては、必要の無い詠唱という余計な工程が組み込まれる事で、魔法が発動しない事がある。


 それにあたるのが、タルト、プディン、そしてシャイルである。

 クラスメイトの中には、他にも詠唱しても魔法が発動しない者がいるようだが、理由は様々である。


 詠唱魔法を使う事が出来て、彼らの事情を知らない者の中には、詠唱魔法を使えない者に対してあざ笑う者もいた。


 タルトは魔族であり、魔族は悪魔が受肉して派生した種族であると言われている為、悪魔と同じように魔法に詠唱の必要はない。

 しかし元来、魔族は忌み嫌われている種族であり、直接目にする者はほとんどいない。


 そのため、タルトが無詠唱で魔法が使えるという事実を知らない者の方が多い。


 プディンに関しては、彼女が行使するのは厳密に言うと魔法ではない。

 天人族は魔族とは逆に、天使が受肉して派生した種族であると言われている。

 そのため天人族が扱うのは、神聖術となる。


 とは言え、実際は魔法と神聖術にはそれほど違いはない。

 魔法は使用する魔法を直接イメージして発動するのに対し、神聖術は神から力を借り受ける事をイメージして発動するという違いと、神聖術は比較的に光属性が多いというくらいなのである。

 そして、天人族が使用する神聖術にも詠唱は不要。


 従って、本来プディンとって必要な工程である、神から力を借り受けるイメージを除外し、かつ不必要である詠唱を唱えなければならないのでは、魔法が発動しないのも当たり前なのだ。



 ではなぜ、授業で詠唱魔法を行うのか。

 それは先に述べた通り、人は魔法をイメージだけで発動する事が難しい。

 そして、これまで勇者養成学園の入学生で無詠唱魔法を使える者などいなかったためだ。


 しかも、卒業するまでに無詠唱魔法を使えるようになる者など極少数しかいない。

 それほど、無詠唱魔法というのは難しい事なのだ。


 教えない・やらないのではなく、無詠唱では魔法を使えない・出来ないという理由から、無詠唱魔法を教える事はないのである。

 そもそも、無詠唱魔法を教える事が出来る人間がほとんどいないのも現状ではあるが。



 逆に、元々詠唱魔法を扱える者にとっても、最初の授業はあまり面白いものではない。


 ティラとショコラがそれにあたる。


 しかしティラは真面目なので、授業で教えられた通りに何度も何度も反復する。


 それに無詠唱魔法を教えてくれると言ってくれたシャイルに、後から聞いた事なのだが、無詠唱魔法を使える様にするためにも、まずは詠唱魔法を完璧にした方がいいとの事だったから。

 そして詠唱で魔法のイメージをしっかりと持てる様にして、詠唱の部分を徐々に言葉ではなく直接イメージへと変換出来る様になる事が一番の近道だと教えてくれていた。


 ティラはその教えを忠実に守り、まずは自分に出来る事を精一杯頑張ろうとしている。


 ショコラは不真面目というわけではないが、初級の魔法よりも高度な魔法を扱えるようになりたくて仕方が無い。

 そのため、どうしても初級の魔法を蔑ろにしがちである。


 他の魔法以外を武器職とする者達は、魔法が使えないわけではないが得意なわけでもないため、それなりに真面目に行っていた。




 ・・・・・・・

 ・・・・・

 ・・・




 シャイルは思う・・・


 ・・・どうしてこうなった?


 と、周りを見ながら頭を悩ませる。


 放課後になり、シャイルは帰路についていた。

 そこに、スコティー達やシフォン達が付いて来ているのはいつもの事。


 しかし、今日はそれだけではなかった。


 なぜか、スコティーに絡みながらも一緒にいるシェットラン・・・

 その後ろにはドーベルとデーン・・・


 シフォンと剣技について言い合いをしながらも、話に花を咲かせているのはエクレイア・・・


 ヴェリーと戦術談義で盛り上がっているのはマカローナ・・・


 ティラに纏わり付いているのはクーヘンバウム・・・


 そして、シャイルの隣にはスフレールが・・・


 何がどうなって、こんなに大所帯になったのか。



 まだスフレールはわかる。

 シャイルが先日、プディンやタルト、そしてシフォンと仲良くすればいいと言ってあるから。


 他の者達については、シャイルには理解出来ずにいた。


 スコティーとシェットランの(ワダカマ)りがある程度解消されたとはいえ、一緒に帰ろうと思えるほど良好になったのか。


 エクレイアも、事あるごとにシフォンに絡んでいなかっただろうか。


 ヴェリーとマカローナ、ティラとクーヘンバウム、こちらは同じ武器職だったはずだから、訓練授業を受けている間に何かあったのだろうか。


 と、シャイルには疑問が尽きなかった。


 何かと注意深い彼ではあるが、人の友情や恋愛などの機微に関しては拙い。

 というよりも、あまり興味が無いと言う方が当てはまるだろう。


 そんな自分を自覚しながらも、別に彼らが仲良くするのは勝手だが、自分を巻き込まないでほしいと切に願っている。


 現在の状況になった理由として・・・

 シャイルが帰ろうと教室を出ると、スコティーとシフォンが付いてきて、後にはいつものメンバーがそれに(ナラ)う。

 そこまではいつもの事。


 しかし今日はさらに、シェットラン達やエクレイア、マカローナにクーヘンバウム、そしてスフレールまでも自然に付随してきた結果、こんな状態となってしまっている。


 仲良くなったのなら、仲良い者同士で帰ればいいものを・・・と心の中で嘆くしかなかった。



 そしてさらに、シャイルの頭を悩ませる要因がある。

 それは、後ろから感じる2つの視線と、右から熱い視線、左からチラチラ感じる視線とその横からジトーとした視線を感じている事だ。


 後ろからの視線は、プディンとタルト。

 熱い視線はスフレール。

 チラチラと感じる視線は、クーヘンバウムに纏わり付かれながらも気にしているティラ。


 その横でショコラがジトーと見ながら、ティラに何かを耳打ちしてティラが静かに切れるといったやり取りがされていた。


 彼女達にしてみれば、先週までは一緒にいなかったはずのスフレールが一緒で、かつシャイルの隣にいる事が不可解なのだろう。

 まだ、一緒に付いてきた他の者達ならば、何かしらの接点があり仲良くなったと考えられ、わからなくもない。


 しかし、シャイルとスフレールには、全く接点が無いはずだったからだ。

 それなのに、スフレールがニコニコしながら熱い眼差しを送っていれば、彼女達にとって面白くはないのであろう。


 シャイルは、プディンとタルトには個別に詳しい事を伝えておこうとは思っているが、皆のいる前で話せる事ではないため、まだ説明していない。


 逆にシフォンには、スフレールの事を詳しく話す気は最初からない。

 というのも、シフォンの場合には種族を明かして仲良くさせるよりも、仲良くなった結果、相手は人間ではなかったと知る方がいいと判断したためだ。



 ただどちらにしろ、このままでは精神をガリガリと削られる一方である。


 そう考えるシャイルは、こちらをチラチラ気にしているティラを含めて、他の者にも聞こえる様にプディンとタルトに振り返って話かける。


「なあ、2人してさっきからずっと、なんで俺を睨んでるんだ?」


 必要の無い事に関して、聞かれない事には自分から話す気のないシャイルは、敢えて惚けてみる。


「む~、シャイルがそれを聞くかなぁ~!」

「そうだぞ!わかっているのだろう!?お前の横にいるその女はなんだ!?」


 プディンとタルトにそう言われ、やはりそうだよなと溜息を吐きつつ説明をする事にした。


「彼女はスフレールだ。クラスメイトだし、お前らも知っているだろう?」

「む~、それくらい知ってるよ~!もしかしてシャイルは、私をバカにしてる~!?」

「そうだ、私達が聞きたいのはそういう事じゃない!なんでその女が、お前と仲良さそうにしているのかだ!」


 やれやれと肩を落としながら、シャイルは話を続ける。


「仲良さそうに見えるかは知らんけど、別に大した事じゃないさ。彼女とは、この前たまたま公園で会って、屋台の買い方がわからないと言うから、教えてやっただけだ」


 相変わらずシャイルは、筋が通る様に真実をねじ曲げながら話す。


 そして横では、シャイルの前半の言葉を聞いて、今度はスフレールが「む~」とふくれっ面をしたかと思うと、後半の言葉で少しだけ口元をニヤけさせていた。


 スフレールにしてみれば前半の言葉は、仲良くもないし、自分と出会った事も彼にとっては大した事ではないと言われた様に感じた為にむくれた。

 そして後半では、シャイルは出会った時にはスフレールの為ではないと誤魔化していたが、事実は少し違うがやはり自分のためにクレープを買ってくれていたのだと思うと、にやけずにはいられなかったのだ。


 シャイルの言葉を聞いていた者は、特にティラなんかは少しだけ安堵を見せたものの、ただそれだけの事でスフレールが懐いている理由とするには、納得がいかないという表情を伺わせていた。


 プディンとタルトに関しては、安堵する要素が1つもなく、全てに納得がいかない。


 シャイルは溜息を吐きつつも、話を続ける。


「いや、その時にスフレールと話をしたんだけど、彼女は遠くから来ているため、知り合いとかいないらしいんだよ。だからお前達も、そう邪険にしないでやってくれ」


 それを聞いて、ようやく周りの雰囲気が少しだけ柔らかくなったように感じる。


 プディンとタルトは未だに、納得がいかない様子だが、その2人に近づいたシャイルが小声でボソッと呟く。


「2人には後で、彼女について話しておく事がある。公で・・特に人間の前で話せる内容じゃないと言えば、察してくれるだろう?」


 2人はその言葉で、ようやく合点がいったという表情を浮かべ、小さく頷いていた。


 そんな2人の様子を確認したシャイルは再び前を向き、今度は左側に向かって話しかける。


「ティラも何が不満なのかわからないけど、スフレールと普通に接してくれると有難いな」


 仲良くなるかどうかは本人達次第なので、シャイルは仲良くしてやってほしいなどと、出しゃばる様な事は口にしない。


 そしてシャイルの言葉を受けたティラは、ハッとした表情を見せ、自分はそんなにわかりやすい表情をしていたのかと自己嫌悪をしながら反省する。


「・・・ごめんなさい・・そ、そうですよね・・・」


 ティラは聞こえるか聞こえないか位の声で、ボソッと呟く。

 相手の事をよく知りもしないで、勝手に羨んだことに対しての謝罪と、自分を納得させる為の言葉を。

 そして・・・


「スフレールさん、でしたね。私はティラと申します。今後とも宜しくお願い致します」


 と、スフレールに笑顔を向けて挨拶をした。


「あ、はい。私はスフレールです。ティラさん、こちらこそ宜しくお願いしますね」


 互いに顔も名前も知っているが、面と向かって話をした事が無かったため、互いに笑顔を向けて自己紹介と挨拶をする。


 そして。そのやり取りを見ていて、うずうずしている者がいる。


「ねえ、クーも!クーともよろしくしようよ!」


 ティラに纏わり付いていたクーヘンバウムだ。

 もう我慢できないとばかりに、2人を凝視しながら会話に参加してくる。


「そう言われましても・・・私はもう、クーちゃんとは既にしていますよね」


 クーヘンバウムがティラに纏わり付いている事からわかる様に、互いに自己紹介などは済んでいる。


 2人の間に何があったのかというと・・・

 それは、シャイルが指輪をあげた事に起因する。

 とは言っても、指輪をあげた行為や、指輪そのものに関係しているわけではない。


 訓練授業にて、クラスメイトの中でクーヘンバウムに対抗できる者がいなかったのだが、ティラがシャイルから貰った指輪により反応速度が上がると、彼女の動きに対応出来る様になっていた。


 自分の動きに付いてこられるクラスメイトがいなくて、退屈に感じていた矢先の出来事である。


 そのため、それが余程嬉しかったようで、手合わせが終った後には、目をキラキラさせながらティラに纏わり付いていたのだ。

 彼女もまた、自分と対等な者、もしくは強い者が好きだという事らしい。


 それからは、何かとティラの後を付いて行動する事が多くなったようだ。


「ティラちゃん、そういう問題じゃないんだよ!あの時はあの時、今は今だよ!」


 クーヘンバウムは、挨拶している2人が笑顔だったため、何か楽しそうに感じたのと自分が除け者にされた感じを受けた為、自分も仲間に入れろと言う事らしい。


「ふふっ、わかりました。宜しくお願いします、クーちゃん」

「うん、よろしくね!ティラちゃん」


 相手の気持ちを思いやるティラは、素直にクーヘンバウムの言葉に従っている。

 それにクーヘンバウムは、嬉しそうに笑顔で応えていた。


 ちなみに呼び方だが、ティラは最初『クーヘンバウムさん』と呼んだのだが、「クーでいいよ」と言われ、『クーさん』と呼ぶと、堅いと怒られて『クーちゃん』に落ち着いたのだ。



 ティラとのやり取りには満足したクーヘンバウムは、今度はスフレールに向かって話しかける。


「クー・・・ウチはクーヘンバウムだよ。よろしくね!」


 クラスメイトとは言え初対面の相手な為、わざわざ一人称を言い直して自己紹介をする。


「私はスフレールと言います。こちらこそ宜しくお願いしますね」


 そしてスフレールも『クーヘンバウムさん』と呼んでしまい、そこからの流れはティラと同じで、最終的にやはり『クーちゃん』になった。

 クーヘンバウムは、スーちゃんと呼ぶようになったようだ。


 そしてその間に、シャイルは影を潜め空気と化していた・・・


 つもりだったのだが、そう上手く行くはずがないのである。


「ねえねえ、ウチはクーヘンバウムだよ!」


 クイと袖を引っ張りながらクーヘンバウムは、シャイルに向かって話しかける。

 シャイルは溜息を吐きながら、これは逃げ切れないと諦め返事をする。


「あ、ああ、俺はシャイル。宜しくな」


 まあ、でも考えようによっては、これはこれで良かったのかもしれないとシャイルは思う。

 それは自分にとってではなく、彼女達(・・・)にとってではあるが。


 元々スフレールには、いずれは彼女と仲良くさせておく必要があると考えていた。

 そしてもう1人とも・・・


 ただ、まだ彼女達の目的や理由が確実ではないため、互いにそれを打ち明けさせるなどと、軽はずみな事は出来ない。

 その辺りは、タイミングを見て確認し、その上で打ち明けさせるかどうかを判断すればいい。

 と、シャイルは真面目に考えていた所に・・・


「うん、よろしくね!シャイちゃん!」

「ぶっ!!」


 シャイルの思考が一気に吹っ飛んだ。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!なんだ!?シャイちゃんって!?」

「ん??クーは、何か変な事いった?」


 クーヘンバウムは心底わからないというように、人差し指を口に当てながら小首をかしげている。

 そして、一人称はすでにウチからクーに戻している。


「マジで勘弁してくれ・・・普通に呼び捨てで構わんから・・・」


 と項垂れるシャイルに、周りから容赦のない言葉が投げつけられる。


「くくくっ・・い・・いいじゃ・・ないか・・・ぶはっ!!・・・シャイちゃん!」


 笑いをこらえきれないタルトが、どうにか笑いを噛み殺そうとしながら話す。


「うぷぷぷ~、可愛いよ~シャイちゃん!」


 笑いを隠そうともしないプディン。


「・・・ぷっ・・い、いえ・・・い、いいと・・思いますよ・・・シャイちゃん」


 一瞬噴き出してしまったが、なんとか取り繕おうとしながらも、笑いがこらえられないスフレール。


「ちょ、ちょっと皆さん。そんなに笑ったら悪いですよ・・・でも、私も良いと思います。可愛いですよ、シャイちゃんだって」


 ティラも少しは可笑しかったが、3人の様に笑ったりする事はなく、他意のない満面の笑みでフォローしている。

 ・・・つもりなのだが、結果としてティラが彼に止めをさす。


 精神的攻撃をチクチクと受け続け、最後にティラからクリティカルヒットを受けたシャイルは、「グハッ!」と言いながら地面に倒れ伏す。

 普通に笑い者にされるよりも、意外と悪意のない真面目なフォローが、一番ダメージを受けたりするものである。


 その事に気がつかないティラは、「えっ?えっ?」と慌て始め、オロオロしていた。


 そして、倒れ伏しているシャイルをツンツンしながら、クーヘンバウムが話しかける。


「ねえ、だめかな?シャイちゃんって呼んじゃ」

「グッ・・・た、たのむ・・・よ・・呼び捨てでよんでくれ・・・」


 シャイルは今にも死にそうな状態で、何とがそう口にする。


「う~ん・・・もう、わかったよぉ。シャイル!」


 その言葉を受けて、シャイルはようやくスクッと立ち上がった。


「ふぅ・・・危なかった。俺の人生の中で今のが一番、死を覚悟したわ・・・」


 その後も、プディンとタルト、さらにはそれまでのやり取りを聞いていたシフォンなどにまで、「シャイちゃん」とからかわれ続けて、シャイルがぶち切れるといったやり取りがあった。


 とは言え、なんだかんだでスフレールを含め彼女達(・・・)も馴染んでいる事に、シャイルは安堵するのであった。




登場人物


★シャイル:謎多き主人公。

★スコティー:シャイルと同室でクラスメイトの少年。剣士(フェンサー)

★シフォン:勇者を志すクラスメイトの少女。剣士

★ティラ:シフォン、シャイルに助けられたクラスメイトの少女。治癒魔法士(ヒーラー)

★ショコラ:ティラの双子の姉でクラスメイト。魔道士(ウィザード)

★ヴェリー:シフォンと同室でクラスメイトの少女。槍士(ランサー)

★タルト:シャイルと知り合いでクラスメイトの魔族の少女。双剣士(クロスセイバー)

★プディン:シャイルと知り合いでクラスメイトの天人族の少女。武器職無し


★シェットラン:シードック家の嫡男であり、スコティーと同郷のクラスメイトの少年。剣士

★ドーベル:シェットランの護衛でクラスメイトの少年。剣士

★デーン:シェットランのお目付でクラスメイトの少年。剣士


★エクレイア:剣術の名門フィナンジェ家の長女でクラスメイトの少女。剣士


★スフレール:入学式の自己紹介でシャイルが気にしていたクラスメイトの少女。人間と偽っているが実はエルフ。狩人(ハンター)

★クーヘンバウム:入学式の自己紹介でシャイルが気にしていたクラスメイトの少女。ティラに懐いている。隠密者(アサシン)

★マカローナ:入学式の自己紹介でシャイルが気にしていたクラスメイトの少女。ヴェリーと意気投合した。槍士(ランサー)


※名前の由来をもう一度。

男子学生・犬猫から、女子学生・スイーツから、大人男性・動物から、大人女性・花からとなっております。

なので、名前で男女、学生、大人を区別出来るようにしております。



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