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ミーシャは面食いである。ドランは普通だが内面が表に出たのか気の強い、決して親しみを感じる顔ではない。
ある日村の薬師をしていた老師の元に少年が暮らし始めた。これがまあ、ミーシャの好みドンピシャだった。ニキビなど知りませんといわんばかりのツルツルお肌、さらさらな金茶の髪、整った顔、全てがミーシャを魅了した。
それにいち早く気付いたドランの妨害によって彼は村から受け入れられなかったが、彼はどこふく風で、老師と二人暮らしをしていた。
ドランのいいなりな男達とは違って、そこもまた格好いい。結果通いつめた。
ミーシャは気付かない。年々彼アイリスに対する村人の態度が悪化する原因が自分だと。自分と一緒になれば村の一員になれると必死に口説く事が、アイリスにとって迷惑でしかないことも。
「とっとと帰れ。俺達はあいつに用があるんだ」
「だから命令しないでよ。ろくな用じゃないでしょうが。私も立ち会うわよ」
「大事な用だぜ。あいつにはさっさとここから出ていってもらわないとな」
「なんですって!老師が亡くなって直ぐなのに出ていけですって!どれだけ屑なのよあんた!」
「うるせえ!お前がフラフラするからだろうが!あいつはこの村の者じゃないからな、ここに置いておく理由はなくなったんだ。出ていってもらうに決まってるだろう!」
ドランは呼び鈴を鳴らすことなく扉を開きアイリスを呼びつけた。
呼びつけようとした。
家の中は綺麗に整頓されていた。され過ぎていて何もなかった。大型の家具はあったが、その上に乗っているもの、仕舞っている物がない。人の気配もない。住人は夜のうちにすたこらさっさとでていってるからね。