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ここら辺?もうちょいふかくしてー。なんてやり取りをしながらスコップで根切りをする。
スコップを土に付けるとまわりの土が柔らかくごっそり持ち上がる。楽チン楽チン。
木の全体を持ち上げるイメージを浮かべると木の重さも何のその。楽に下の根も切れる。
そのまま敷いていた御座の上によいしょと運んでロープで巻き付け固定。
他の木も済ます頃には夕方になった。
箱と同じ袋にポイポイ。
何にもなくなった畑を見回して一礼。
お世話になりました、土地神様。
休むわけにはいかない。絶対今晩中には家を出る。でないと問題事がやってくるんだ。
あいつらは頭沸いてるから。
午前中に葬儀に来た村人の目に触れる場所は、不信がられないようにそのままにしていたので、残りの薬草や薬瓶、調薬道具一式、調理道具食材食器一式を別の袋にポイポイ。
また別の袋に魔道具一式ポイポイ。
既に衣服は済んでて今まで狩ってきた獲物の素材も済んだ。夜営道具も忘れずに。
それらの袋達を1つのリュックサックにポイポイして、背中に背負う。
こっちの世界に迷子になって、師匠に拾われて5年住んだ家。悲しみと苛立ちと迷いと、ぶっきらぼうだけど暖かい思い遣りと感謝と甘えと最後の半年は笑いが絶えなかった家。
普段はじーさん、喧嘩したり拗ねたりしたらじじい、魔法と薬師の勉強の時は師匠と呼び名がコロコロ変わった老人との二人暮らしは、暖かい思い出と感謝しかない。
玄関脇の棚に鍵を置いて、一礼。
もう一度裏に行き、そこに眠っている老人に小さく行ってきますと呟き、山に向けて歩き出した。