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村長は懐から小さめの袋を1つ出し、テーブルに置いた。
「少しだが道中の足しにしなさい。こんなことしかしてやれんが」
「ありがとうございます。遠慮なく頂きます。
どうか気にやまないでください。村長には申し訳ないですが、この村には未練はないです。
じ、師匠と村長しか心を許した人はいません。
師匠も亡くなり、俺がいることで村長に迷惑がかかるなら出ていくだけです。
二人のおかけで生きていく為の知識と術は身に付けることが出来ました。なんとかなるでしょう。
それより、本当に薬とか残していかなくていいんですか?」
小袋の中は音からして貨幣だろう。有難い。
今までの報酬として頂こう。
「構わない。畑にあるものも全部収穫していきなさい。木々も移植出来るようにして全てだ。
君なら出来るし運べるだろう?」
悪巧みしている子供のような顔で言う。
そら出来るけど、村長としてはどうなんだ?
「息子にはそういってある。あいつが勝手に連れてきた薬師も納得している。この小屋と土地は私の資産だからな、あいつの好きにはさせん。
まああいつらも、まさか全部なくなるとは思ってもいないだろうさ。薬や薬草ならまだしも、畑に植えられているもの全て消えるとはな」
よほど息子の所業が許せないのだろうな。
この人はその辺真っ直ぐな人だから。
だから俺も手助けしてきた。息子はどうでもいい。