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徒然枕物語 壱  作者: 緋和皐月
10/15

春の或る日に

ジャンル:……恋愛モノ?


キーワード:春

 カラン……と軽やかな音が響く、とある春の日の午後。


 俺は、あいつが持ってきたトルコキキョウを久しぶりに眺めていた。



「……お前、ほんとその花好きだな」


『ふふふ。毎年この日になると、ついついこの花選んじゃうんだよねぇ〜』


「花言葉はなんだったっけ?」


『花言葉は〜、キ・ボ・ウ♡』


「それだけだったっけ?」


『後は、優雅〜とかって意味もあるよ』


「うわー……」


『あ、今、お前と正反対だな……って思ったでしょー? 酷いよっ』


「……なんで俺の考えてること分かんだお前は?」


『幼馴染ナメんなよー、アンタの考えてることなんてすぐわかるんだから〜』


「なんか釈然としねーな……」



 深々と溜息ついた俺を前にして、あいつは少し笑った。



『んふ……なーんだか、こうやってブツブツ呟いてばっかだと変な人みたい?』


「お前は元から変なやつだよ」



 ふ、と思い出したように、あいつが笑う。



『そうそう、あたしね、もう結婚しない』


「……は? 何言ってんのお前。独身貫くのかよ? うわー、イッタイわー、ないわー」


『だってアンタよりいい男なんていないもん』


「…………」


『ま、あたしよりいい女なんてゼーッタイ居ないけどぉ?』


「……知ってるよ、バーカ」



 ふ、と。

 あいつは一瞬だけ、俯いた。


 だけど、またすぐパッと顔を上げて、俺に向かって微笑む。



『また、近いうちに来るからね』


「や、あんま無理すんじゃねーぞ。たまにでいいんだよ、こーゆーのは。1年に1、2回も来るだけでもう充分だぜ?」


『今年は5回は来ちゃうもんね〜!』


「そーんな無理したら、また体、壊すんじゃねーの?」


『無理してでも来るもん』


「だから無理すんなってば」



 そっと、優しい春風が、俺らの間を吹き抜けた。



『……なんでアンタは先に行っちゃったわけ?』


「……」


『あたしを置いてくなんて酷いじゃん』


「いや、置いてっては、ねぇよ。俺はお前が来なくなるまで、ずっと待っとくつもりだしさ」



 言葉は、届かずに、ふわりと消える。



『……さてと。もう帰るかな』


「ん。気をつけて帰れよ」



 自分の墓の前に腰をかけたまま、俺はあいつに手を振り続けた。




 春の、彼岸。





こんな感じの漫画あった気がしました。

もう、泣いたさ……そりゃもう、泣いきましたさ…….°(ಗдಗ。)°.

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