春の或る日に
ジャンル:……恋愛モノ?
キーワード:春
カラン……と軽やかな音が響く、とある春の日の午後。
俺は、あいつが持ってきたトルコキキョウを久しぶりに眺めていた。
「……お前、ほんとその花好きだな」
『ふふふ。毎年この日になると、ついついこの花選んじゃうんだよねぇ〜』
「花言葉はなんだったっけ?」
『花言葉は〜、キ・ボ・ウ♡』
「それだけだったっけ?」
『後は、優雅〜とかって意味もあるよ』
「うわー……」
『あ、今、お前と正反対だな……って思ったでしょー? 酷いよっ』
「……なんで俺の考えてること分かんだお前は?」
『幼馴染ナメんなよー、アンタの考えてることなんてすぐわかるんだから〜』
「なんか釈然としねーな……」
深々と溜息ついた俺を前にして、あいつは少し笑った。
『んふ……なーんだか、こうやってブツブツ呟いてばっかだと変な人みたい?』
「お前は元から変なやつだよ」
ふ、と思い出したように、あいつが笑う。
『そうそう、あたしね、もう結婚しない』
「……は? 何言ってんのお前。独身貫くのかよ? うわー、イッタイわー、ないわー」
『だってアンタよりいい男なんていないもん』
「…………」
『ま、あたしよりいい女なんてゼーッタイ居ないけどぉ?』
「……知ってるよ、バーカ」
ふ、と。
あいつは一瞬だけ、俯いた。
だけど、またすぐパッと顔を上げて、俺に向かって微笑む。
『また、近いうちに来るからね』
「や、あんま無理すんじゃねーぞ。たまにでいいんだよ、こーゆーのは。1年に1、2回も来るだけでもう充分だぜ?」
『今年は5回は来ちゃうもんね〜!』
「そーんな無理したら、また体、壊すんじゃねーの?」
『無理してでも来るもん』
「だから無理すんなってば」
そっと、優しい春風が、俺らの間を吹き抜けた。
『……なんでアンタは先に行っちゃったわけ?』
「……」
『あたしを置いてくなんて酷いじゃん』
「いや、置いてっては、ねぇよ。俺はお前が来なくなるまで、ずっと待っとくつもりだしさ」
言葉は、届かずに、ふわりと消える。
『……さてと。もう帰るかな』
「ん。気をつけて帰れよ」
自分の墓の前に腰をかけたまま、俺はあいつに手を振り続けた。
春の、彼岸。
こんな感じの漫画あった気がしました。
もう、泣いたさ……そりゃもう、泣いきましたさ…….°(ಗдಗ。)°.