第九話 お手伝いをして(後編)
「愁寺。この前借りた袴どこにやった?」
場所は愁寺が神主をしている陸奥神社。ちなみに穂澄の家の名前も陸奥である。確か団子屋の名前はここから取ったと昔に行っていたような気がする。
「はい、これ。」
愁寺は本堂の奥から袴を持って現れた。しかし良く考えると穂澄の頭は茶色。純和風の袴に茶髪と言うのはいつ見てもおかしい気がする。しかも追い討ちをかけるように穂澄の茶色はどちらかと言うと金色に近い茶髪なのだ。と言う訳でいつも着替えるときに置き鏡を見るのだがそのときの口癖はやはり・・・・・・
「似合わなねぇな・・・」
「まあ、気にするな。俺は本堂で憑き物落としの客が来るまでここにいるから何かあったら声を掛けてくれ。はい、これ箒。」
愁寺はそう言い穂澄に竹箒を手渡す。
ちなみに愁寺が言っている憑き物落としとは代々陸奥神社に伝わる秘伝技とかなんとか。結構有名らしく1週間で大体10人ほど祓っているらしい。
まあ小さい頃は穂澄と亮平、蛍が練習に使われ落としている途中蛍が倒れて何か痙攣しながら口の周りにきめ細かい泡がぶくぶく出ていたり、そう考えると穂澄達の犠牲の上に今の人気が成り立っていると言う事だ。まあなんとも理不尽な気もするが・・・この際置いておこう。
「そう言えば奉里はどうして今日休ませて欲しいって言ってきたんだ?あいつは真面目だからそんな事滅多に言わないだろう。」
「ああ、何でも買いたいCDがあるから休ませて欲しいって言ってたな。」
なんとも高校生らしい休みだ。確かに昔から愁寺は妹の頼みには弱く洪水警報が出てるのに川に流された奉里の靴探しに行ったり人気ゲームが欲しいと言われて学校休んで徹夜で並んだり。まあ、奉里も話に聞くほど悪女と言うわけでもないのでそこはただ単に兄離れとかが出来ていないのかもしれない。
穂澄はそんなことを考えながら本堂を後にし外に出た。
季節は1月。そんなに落ち葉が多いというわけではないがこの頃はマナーの無い参拝客も増えたらしく空き缶やビニール袋なども片付けなければいけない。と言う訳で1月の寒空の下。通気性抜群の袴をはいて掃除をするのはある種苦痛である。そんなことを考えていると余計に寒くなるのハメに見えているのだがそれが人だ。案の定考えてしまい案の定さっきより寒くなった気がした。
穂澄が肩をブルブルと震わせていると後ろから誰かに抱きつかれる。
「ぬおっ!?」
いきなりの事でびっくりした穂澄はその抱きついた相手の手を振り払い距離をとりながらその相手を見る。・・・と
「いたたたた」
「何だ奉里か。びっくりさせるなよ。」
払いのけた時に尻餅を付いたらしくお尻を擦りながら立っていたのは社奉里。もちろん愁寺の妹でさっき話題に出ていたCDを買いに行っていた少女である。
黒髪を腰の辺りまで伸ばし身長は愁寺とあまり変わらず少し低め(愁寺も特進クラスの中では一番小柄)。誰にでも優しく勉強の出来る少女。
「えへへ、ごめんね穂澄くん。あんまり寒そうだったからつい、」
ついにも程がある。一応もう高校生になったんだから少しは女性らしく振舞えないのか。
と心の中で言う。まあ、奉里は少し天然が入っているからそんなことを言っても無駄なので言わない。
「それでお目当てのCDは買えたのか?」
「えへへ、実は発売は明日だったんだよね。だから買いそびれちゃった。」
良い忘れていたが奉里はそそっかしい。まあ、何と言うか玉に傷という奴だ。
「じゃあ私は着替えてくるから穂澄くんはここで待ってて、良い?逃げたりしたらだめだよ。」
―――チッ!バレたか。
奉里が来たのならもういいだろうと一緒に本堂に向かおうとしていた穂澄であったがそれも奉里に抑えられてしまって結局この寒空の下。最後まで仕事をする羽目になってしまった・・・・・・
その後穂澄に悲劇が襲い掛かった。
「・・・・・・・・・愁寺、これはなんだ?」
場所は本堂。いるのは穂澄、愁寺、奉里。そして穂澄が指を指した先にはボロボロになった布がポツンと置いてあった。
「・・・・・・ぬ、布だ。」
「違う。それは知っている!そうじゃなくて何で俺の制服が見るも無残な姿になってるんだ!?」
そのボロボロになった布とは、もはや制服としての機能をまっとう出来ないほどになってしまった穂澄の制服であった。
「実は、さっきつき物落としをしている時。ネコが入ってきて。その猫の中に祓っていた物が取り付いて最終的には爪とぎの餌食に・・・・・・」
「これは・・・穂澄くん。今日は悪いけどその格好で帰ってくれるかな?それあげるから。」
「いやいやいやいや!?待て待て待て待て!??良く考えろ奉里。俺は茶髪だ。なのにこんな格好で外歩いたらめっちゃ変な目に見られるだろがうが!」
―――それにお嬢様達のこともある。こんな姿で帰ったらゼッッッッッッッッタイ。それをネタに就寝まで弄られる。それどころか下手をすれば明日で持ち越される可能性だって否定できない。
「じゃあ裸で帰る?」
「このまんま帰らせていただきます!さよなら。」
―――そうさ!俺はこんな事には負けない。きっとお嬢様達にだって話せば解ってくれるさ☆ガンバレ俺!負けるな俺!!
もちろんその後そんな淡い思いも虚しくみんなに弄られた事は言うまでもない・・・・・・
投稿したはずなのにされてなかったので書き直してまた投稿。
辛いです(泣)。
でも頑張ります。。。