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第六話 好きだと言われて

次の日。穂澄は弁当を抱えて走っていた。

理由は二つ、とても単純だ。一つは灯真の指示で昼は二人と一緒に食べるように言われていたから。

そしてもう一つは・・・・・・追われているから♪


―――そこの二年。止まれ。―――櫻坂姉妹の平穏な日常を脅かす物は断じて許さん。―――おおお、俺の栞ちゃんに近づくなぁああああぁああ!?


変な奴もいる気がするが気に掛けている余裕はない。つーか男子生徒一人追いかけるだけの為にだって後ろを振り向くと額に血管浮かべて走ってくる男子生徒が十人ほどいるんだもん♪って言うか男子生徒1人追うだけの為に拡声器使うな!よく先生に見つからないな。お前ら。

とり合えず弁当を抱えて全力疾走をしていた。流石に後ろの奴らも二人の前に出れば大人しくなるだろう。予測ではあと二十メートルほどで二人の教室に着く。しかしあの狂気に満ちた男どもを振り切る力は穂澄にはもう残っていないであろう。


だが後ろを振り向いたら殺られるので全力疾走をする。

昨日お嬢様達ともお昼を誰かに目撃されていたらしく、今はこの有様らしい。


階段を二段飛ばしで降りて一年のクラスがある教室の廊下に差し掛かる。

―――よし、後、10――――7―――3―――


男達の手が穂澄の背中をかすった瞬間。穂澄の足が教室に入る。


「あっ穂澄さん。待ってました。」


「・・・・・・どうした?」


二人の声が聞こえると制服を掴んでいる手が離される。しかし男達は帰り際に穂澄の耳元でしたうちをし行ったのには少し驚いた。

つーか地味な嫌がらせだなーおい。


二人が駆け寄って来る。


「穂澄さん。さっき教えてもらったんですけど。屋上には今誰もいないらしいです。行きましょう。」


「・・・・・・屋上で女二人と男一人(野獣)」


「栞お嬢様、変な付け加えしないでください。お願いしますから。」


栞は少しブーブー言っていたが直ぐに取り消してくれたようだ。だけど栞お嬢様からみた俺ってどう見えているんだろう?

移動する途中もそんなことを考えながら二人についていった。









屋上は尊が言っていた通り誰もいなかった。一月にしては暖かい日差しで確かにここは絶好のスポットかもしれない。

「そうだ。私シート持ってきますね。」


「あっ!尊お嬢様。私が行きますよ。」


階段を再度下りて教室に戻ろうとする尊を穂澄が止める。

しかし尊は私の鞄の中にあるのでと言い、その代わり気遣ってくれてありがとうと言う満面の笑みを貰った。

そして尊は足早に階段を下りて言った。


「・・・・・・穂澄。座って。」


「えっ!?ああ、はい。」


栞はコンクリートむき出しの地面に座っていたがそんな事は気にしていない様子である。穂澄は言われた通りに栞の隣に座る。

―――何か気まずい。

そう思っていると栞から声を掛けられる。

「・・・・・・二人っきりだね。」


「ええ、まあ。」


今少し思ったのだが今の言葉栞と会ってから一番愛想が良かったような気がする。今ので愛想が言いなんて言ったら今まではなんだったんだ見たいな事にもなるが、まあ今はその事実を密かに喜ぼう。


「・・・・・・ねえ穂澄。」


考え事をしていて反応が遅れる。慌てて栞を見ると。

「?・・・・・・さっきより近くないですか。」


何か二人の距離が縮まったような気がしていた。しかし栞は気のせいと言い張る。

まあ少し距離が近づいたぐらいで同って事も無いが。


「いやーそれにしても今日は暖かいですね。」


「・・・・・・うん、そうだね。」


一回空を見た後もう一度栞の方へ向く。


「・・・・・・いや、近くなってますよ。」


栞は肩をビクッと跳ねさせて瞳をキョロキョロさせる。

いやだって、ホントに近いよ、さっきまで一メートルぐらいの距離が今は栞が頭を傾ければ穂澄の肩に乗るぐらいの近さだもん。

栞はこれでも近づいていないと言いきれると思っていたのだろうか?


「・・・・・・穂澄ってさ。」

栞は慌てた様子で話しかける。要点を逸らそうと必死なのであろう。しかし逆に不自然です。

「はい、なんでしょう。」

だがそのことで勢い良く顔を覗き込まれてドキッとする穂澄。

しかしそれでも執事として平常心を装う。


「私の事好きなのかな?」


―――・・・・・・これは天文学的な質問なのか。それとも何かこう幼稚園の先生みたいな感じの好きなのか、純粋に女性として好きなのかが解らない。だけど今の言葉で。を置かないで喋った栞お嬢様を始めてみたような気がする。


迷っている穂澄にさらに栞が追い討ちを掛ける。


「私は・・・・・・好きだよ。もちろん異性として。」


栞は穂澄の肩に寄りかかり上目使いで聞いてくる。

―――その顔は反則ですお嬢様。


なるべく意識しないようにしてはいたが栞と尊はカワイイ。もうメッサカワイイ、ゴッサカワイイ。穂澄も何回欲情しそうになったかもわからない。

しかし相手は雇い主。穂澄は高鳴る心臓の音を抑え集中した。


―――落ち着け、落ち着くんだ。穂澄。ほら、あれだ、あれだよ最初の朝にやられたジョークだよ。やだなーもう栞お嬢様そう言うの好きそうだからなぁHAHAHAHAHAHA。いや、マジでそうだよ。絶対罠だよ。何か・・・・・・えーと、そう!執事適性検査とか、そんな感じでドッキリ!!みたいな看板持った人がどこかに隠れているんだよ、多分。だって俺の特技と言ったら運動と勉強と団子作り・・・・・・最後のはおかしい気もするが三拍子揃っちゃってるよー!!どうしよう、何て答えればいいんだ!????


そんなこんなで慌てている穂澄に栞は

「そんなに信じられない?それなら。」


チュッ


穂澄の思考が停止する。栞は穂澄の顔に近づき頬にキスをしたのだ。

この行動で穂澄の理性は吹っ飛んだ。


「栞お嬢様、私はお嬢様が―――」


「穂澄さーん。持ってきましたよ。」


二人の方が大きく跳ねる。穂澄の声は尊によりかき消され二人は背中合わせなって尊を出迎えた。

そしてその後穂澄が栞の顔を全く見れなかったのは言うまでもない。











「「ただいまー」」


学院が終わり帰宅した三人葉それぞれの部屋に散っていた。穂澄は灯真に少し休憩してきても良いですよと言われたので素直に休憩を取っていた。

「ああ、穂澄君お帰りなさい。」


そのとき目の前に現れたのは泥まみれの作業服を着た真琴であった。

穂澄にはその真琴の姿は天使にも見えただろう。

「ま、真琴さーん」

「わわっ!?どうしたの」

穂澄は真琴に今日学校であった事を話した。






「栞ちゃんが普通に喋って好きですって言われたの?」

穂澄は頷く。

「いつもみたいに間を置かないで一言で?」

穂澄は再度頷く。


真琴は穂澄の話を聞いた後黙り込んでしまった。

その顔は真剣そのものである。そしてやっと重い口を開いたかと思うと。


「穂澄君。栞ちゃんがね普通に喋る時は嘘はないよ。」

「・・・・・・えっ?」

「今からシャワー浴びてきな。夜のためにもね。」

あいた口が塞がらないと言う言葉があるが自分は今多分その状態であろう。

「な、なななんでですかぁ?」


「栞ちゃんは一度決めた事は最後までやる。どんな事をしてでもね。だから多分夜、部屋に呼び出されて何か言われると思うよ。僕は穂澄君がそれに耐えられるとは思わないからね。」


真琴の頭の上にピンク色をした想像が立ち込める。いや妄想と言ったほうがしっくり来るのかな?

「あわあああああっ!?だめです、真琴さん。自主規制です!!」


「ああ、ごめんごめん。」


妄想に浸っていた真琴を連れ戻す。


「と、とにかく俺はそんなピンクな事はしません!」



穂澄はその場から走って逃げていった。







来週の水曜日から修学旅行。場所はまさに定番。奈良、京都。

出来れば北に行きたかったんだけどなぁ。。。

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