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第三十六話 霧音の悩み、灯真の笑み

櫻坂の家に執事として働き始めてから数ヶ月。毎日毎日波乱の日々で元々出席の少なかった穂澄はより一層学院に行く事が少なくなっていた。

まあ、そんな事言っても何とか三年生に進級できた穂澄。

そして普通クラスに飛ばされること無く穂澄は二年のときと同じ生徒と一緒に特進クラスの教室に居た。

なのに―――


「―――なんで俺はこんな事をしているんだ?」


朝、穂澄は遅刻して担任に怒られた。

そして今、春の暖かな日差しを浴びながら・・・・・・廊下で水をいっぱい入れたバケツを両手に持って立ってます・・・・・・


「つーか!いつの時代っ!?」


「おい、五月蝿いぞー」


明らかに笑いが含まれる担任からの注意。

廊下からでも教室内で笑いを堪える生徒達の息遣いが聞こえる。


「・・・・・・こんな所お嬢様達に見られたら、三日はそれをネタにいじられる。」


穂澄はいつ終わるかわからない拷問を受けつつ時が早く経つのを待っていたが、実はもう授業時間は終わっている為。下の階からは生徒達の声が聞こえる。

元々穂澄の学年は特進クラスは一つしかなく、今現在穂澄たちがいる階は穂澄たちのクラスだけであったが授業が終わったとなると『櫻坂親衛隊(非公認)』が来たら一瞬で襲われる可能性がある為、穂澄は今現在はっきり言うと生きた心地がしなかった。


「放置プレイが好みなんですか?」


後ろから声がした。

うん、誰かわかるぞ。こんな事を言ってくるのは霧音以外にいるわけが無い。穂澄はバケツの水をこぼさない様にゆっくりと後ろを振り向くとそこには車椅子に座っている霧音がいた。

二年の教室から車椅子に乗りながらどうやってきたかは聞かない。聞きたいけど聞かない。

見た目からも想像できる通り車椅子というものは結構重い。それを明らかにか弱そうな霧音が片手で持ってこれるわけがなかろう。

とり合えず今は自分が考えている疑問を霧音にぶつける。


「何でここにいるんですか?」


「そんな、私の存在から否定するだなんて・・・・・・なんて深い侮辱。」


いきなり頬を染め車椅子の上で体をクネクネさせる霧音。

先手を打たれたせいか穂澄は手に持っているバケツの重さが数倍にもなったように感じる。


「別にそう言う訳ではなくて、何故、二年生のあなたが三年の特進クラスの前にいるかということですよ。」


なるべく解りやすく、尚且つ、霧音を喜ばせないように質問を変えて言う。

穂澄が質問をわかりやすくした為霧音も『なるほど』と、首を縦に振りながら再び何やら考え始めた。

そしてなにやら答えを導き出したのか下を向いていた顔を上げ、真っ直ぐと穂澄のほうを向く。


「・・・・・・何か言い答えが見つかりましたか?」


まあ、今向き合っている状態で理由を考えていると言う事は今から霧音が言うであろう、理由は今考えついたものであってぶっちゃけ聞かなくてもいいのだが車椅子に座っている霧音も結構真剣に考えていたっぽいので穂澄もそう言う。


「・・・・・・実はこの頃彼のS度が低くなってて、そこでいつも私をなぶってくれる穂澄さんに助けを求めようと・・・・・・」


「今考えたわりにはもの凄いめんどくさい事頼みますね!」


穂澄はバケツを置き額に手を当てて考える。

別にいつも霧音を嬲って遊んでいる自覚はないが霧音はそう受け取っていたらしい・・・・・・


「し、しかし私はSでもなければ霧音さんの彼氏の事も知りませんし、それに何よりめんどくさいです。」


―――あっ、今少し本音出てたな・・・・・・


穂澄は最後に言ったことを少し後悔しながら霧音の方を見て返事を待つ。

しかし穂澄が見ると霧音は車椅子の上で自分の体を捻りながら顔を赤くしている。


―――帰りたい・・・激しく帰りたい・・・・・・


穂澄は額に嫌な汗をかいているのを感じ早く教室に帰りたくなってきた。


「・・・イイッ!・・・・・・イイですっ。それですぅ。その『別にお前が困ってようが俺には関係ないZE』って言う感じが私の心を刺激するのっ!」


「・・・・・・人って頭をめぐらせると何でも自分の思うように解釈かいしゃくできるんですね・・・まあ、さっき言ったとおり私は手伝えないので、それでは・・・」


「ああっ!?そんな事言ってっ!放置プレイ!?そんなに私のツボを知ってるなんてやっぱり穂澄さんは―――」


ピシャッ!

霧音がまだいろいろと言っていたがまあ良いだろう。多分今の霧音には何を言っても光悦こうえつとした顔で『もっと!もっとぉ!』とか媚びて来るであろう。ああ、言う相手には栞で慣れているので対処法も知っている。それはやはり『無視』するのが一番なのであろう。


「穂澄、ノート貸して。」


「何でお嬢様達の周りには変な人が多いんだろう?ドナルドとかもそうだし(著作権的な意味で)―――」


「穂澄!」


「うおっ!?」


穂澄は耳元で叫ばれた事でびっくりして妄想の世界から引きずり出された。

まあ、あれは妄想とは言わないと思うか・・・


「何だ、愁寺か。何か様か?」


「ノート。」


「ああ、机の上にあるよ。勝手に持っていって。―――ああ、それにしてもどうすればいいのか、たぶんあの後霧音さんは栞お嬢様のところに行くし・・・・・・」


まるで周りが見えていない穂澄はそのまま教室の自分の席について暫く霧音への対策を考えていた・・・・・・







「穂澄さん。会計をお願いしますね。」


邸に着いた穂澄は食堂で灯真と邸の会計作業をしていた。これはいつもは灯真が済ませてくれているのだが、この頃は水穂に仕事を覚えさせる事に専念していた為少し会計をサボっていたのだ。


「灯真さんが会計を遅らせるなんて珍しいですよね。」


「まあ、私も人間ですので少しぐらいの失敗はありますよ。」


灯真は苦笑いを浮べながらレシートや領収書を片手に電卓を打ち続けている。

この邸の資金源は竣夜から貰っているので多く貰う事も可能なのだが、それは灯真いわく、『幼い頃から贅沢な暮らしをしているともしもの時に困ってしまう』らしい。まあ、今の状態でも十分贅沢といってしまえばそうであるが水穂の分の生活費を加えても全体量の資金源が増えていないのは灯真がやり繰りしているからでそう考えると灯真の能力はやはり高いと改めて知らされる穂澄であった。


「それに、お嬢様たちは今後の為にも―――」


灯真の電卓を見る目がキュウっときつくなるのが解った。

穂澄は一瞬その目を見ただけだったが背筋がゾクッとするのが自分でも解った。


「灯真・・・さん?」


「えっ?ああ、なんでしょうか?」


こちらに向けられたのはいつもの笑顔

まあ、気のせいであろう。


「いえ、頑張りましょうね。」


「ええ、・・・・・・そうですね。」


その含んだ言葉に今の穂澄は気付く事が出来なかった。

会計を行う灯真の目は先ほど見たとおりのキツイ目をしていた・・・・・・




パソコンが壊れる物だと始めて思い知らされた作者です。

すみません。パソコンが壊れてました・・・

一応、兄が帰ってきてくれたのでパソコンをバックアップし買い換えずにすみましたが、一ヶ月以上パソコンに触れない生活をしていて自分がどれだけパソコン中毒化と気付きました。。。

まあ、投稿頑張ります。。。

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