第三十四話 買物上手
投稿遅れました。
すみません。。。
日はあっと言う間に過ぎていった。穂澄と言えば春休み栞たちの相手をし家事をして過ごしたぐらい。しかしそれでも結構な重労働である。それでも今日まで仕事をこなしているのは水穂のおかげであろう。水穂が櫻坂にメイドとして雇われてから数週間。
初日の様な失態は慣れのせいか少しずつ少なくなり今ではほぼ完璧に仕事をこなすようになっていた。
そして今、昼食の食器を洗っている時であった。
「すみません。2人で買物に行って来てください。」
穂澄と水穂が食器を洗っている間灯真はすでに夜の食材を確認していた。それで食材が少し足りない事に気付き二人に頼んだのであった。
「解りました。じゃあ、穂澄。行こう。」
水穂は濡れた手を拭き壁に架けてあった買物鞄を取る。
この数週間で水穂は穂澄への印象を改めていた。
毎日しっかりと仕事をこなし、特に栞たちに何かすると言う行動を見なかった水穂は自然に噂は間違いだったと悟ったようだ。それについ先日、借金の事を水穂に聞かれ今までの事を謝ってきたぐらいだ。
「息抜きも必要ですから買物が終わったら2人とも少し散歩でもしてきてください。」
「解りました。それじゃあ、行ってきます。」
穂澄は灯真に財布と買物メモを貰い水穂とキッチンを後にする。
「・・・もしかして私はメイド服のまま外に出るのか?」
「まあね。」
玄関まで来た水穂はふと気付く。
この数週間水穂は仕事の時間は全て屋敷の中で過ごしてた。と言う訳で今日が始めて仕事中に外に出る日である。
この頃はいつもメイド服で過ごしていた為玄関に来るまでは違和感は感じなかったが扉に手をかけた瞬間そのことを考えてしまった。
そして穂澄に聞くとさも、当たり前の如く肯定されてしまったため決心がつかないのか後一歩が重い。
「抵抗があるですか?」
「だ、だって!ほ、穂澄は執事服でと外に出る事に違和感はないの?」
穂澄の執事服といえばスーツの様に前を止めるタイプではなく何と言うかオーケストラで指揮者が着ているような服。
つまりジャケットみたいな感じである。
スーツならまだ良いがそんな服を着ていたら視線を浴びる事は間違いないであろう。
「確かに最初は抵抗があったけどもう慣れた。」
「そ、それに誰か友達に会うかもしれないし!」
そんなにメイド服で外に出たくないのか駄々をこねる水穂。
「大丈夫ですよ。いつもは弓道場で髪を一つ結びにして凛々しく弓を射ってる水穂がフリル付きメイド服で髪をツインテールにしながら歩いてるなんて誰も思いませんよ。」
棘のある言葉に水穂は顔を真っ赤にする。
「それじゃあ行きましょうか。」
水穂は穂澄に背中を押されながらそのまま半ば無理矢理屋敷の外に出て行った・・・・・・
「ママ〜?あれなーにー?」
「しっ!見ちゃダメよ。」
穂澄たちは商店街に来ていた。穂澄は慣れていている為普通に歩いているが水穂は顔を真っ赤にして穂澄の後ろに隠れながら歩いている。
しかしそれが逆に目立ってしまっている。周りからは訝しげな顔をされヒソヒソと二人の耳に聞こえてくる。
他には携帯を片手に写真を持っているもの。
こっちを向いて拝んでるおじいちゃん。まさに多種多様であった。
「ほ、穂澄。まだなのか!」
水穂はこの視線に耐えられないのか穂澄の肩口を強く掴みながら訴えている。
一方穂澄はどうやら急ぐ気はないらしく水穂に掴まれている事もあるがいつもより歩くペースは遅い。
「え〜と。八百屋は・・・」
穂澄は手短な八百屋に入っていく。
そしてその様子を見ていた野次馬も同時に八百屋の周りに集まる。
「すみませーん。人参と南瓜ください。」
「へいっ!兄さん、今日は彼女を連れて仲がいいねぇ!」
頭にねじりハチマキをした八百屋のおじさんが店頭に出てきて人参と南瓜を袋に詰める。
どうやら穂澄はこのおじさんと知り合いらしい。お代を払った後も悠長に世間話をしている。
「ほ、穂澄!早く行こう。」
水穂は肩を縮め服を引っ張る。
「うんうん。若いねぇ!兄さん。これはおまけだよ。」
そう良い穂澄はおじさんに野菜の詰め合わせを受け取る。
「ああ、ありがとうございます。それじゃあこれで、また来ますので。」
「おう。彼女もまた来てくれよな。」
「わ、わわわ私は彼女なんかじゃありません!!」
穂澄たちは野次馬を通り抜け次の店に向かう・・・・・・
どれぐらい時間が経ったであろうか。穂澄はその後、肉屋、魚屋、本屋などなどによってしかもそこの店主は全員知り合いらしく必ず買う時に三十分は世間話をして必ずおまけを貰って帰るとまさに主婦の鑑とも言える買物をしていた。
だがしかしその間水穂はなんと言うか生きた心地がしなかった。野次馬からの写メの嵐。
そして人ごみを通る時にはお尻を撫でられる始末である。
「それじゃあ、そろそろ帰ります。」
「あらぁ!?そう、それじゃあこれはおまけね。取っといて!」
最後に寄ったのはデザートの店。栞たちにと1ホールの苺のケーキを買うと最後におまけでチョコレートケーキを1ホール貰うと言う始末。
この際、こんなことして大丈夫なのかとか・・・穂澄の体からおまけをしたくなる様な気体が出ているのでないかとか考えるのは辞めよう。
そしてケーキを貰った穂澄はそのままゆっくりとした足取りで屋敷へ歩を進めた・・・・・・
「灯真さん。ただいま戻りました。こっちが頼まれた物で、こっちがおまけでもらった物です。」
穂澄が袋をドンッとテーブルの上に置く。この際おまけの袋の方が二回りほど大きかった事はそっとしておこう。
「ありがとうございます。それではお嬢様達のところに行ってください。午後は遊び相手がいなくて少し機嫌を悪くしてますので悪しからず。」
灯真はそのまま袋を持ってキッチンの方へ消えて行った。
「それでは私たちは行くぞ。」
既に真っ赤になった顔を普通の状態に戻し平常心を取り戻している水穂を先頭に2階へ上がる。
と、上がっている途中栞たちとばったり会う。
「・・・・・・買物なんて速く済ませられないの?」
明らかに不機嫌そうな顔をする栞。2人で遊んでいたらしいが穂澄たちがいないとやはりつまらないらしい。
しかしこんな時の為に灯真が忠告してくれていたのだ。対処法はもう考えている。
「さっき、買物に行って来ましてね。苺のケーキを買ったらおまけでチョコレートケーキも貰いましてね。今から少しどうかと思っていました。」
その一言で栞の眉がピクリと動く。
「ケーキですか。私は食べたいですけど。栞は如何する?」
「・・・・・・うっ」
先ほどきつめに怒った為食べたいなどとはいえない。しかし口の端には既によだれが垂れている。
「・・・・・・許していただけるでしょうか?」
「・・・・・・許す。」
栞は頷きそのままと足早に食堂に行ってしまった。尊もその後を追う。
「・・・・・・慣れてるわね。」
感心しているのか呆れているのか解らないような声を上げる水穂。
まあ、顔を見る限り前者であろう。
「まあ、結果が良ければいいですし・・・・・・あのケーキだったら紅茶はフォションにしましょうかね・・・・・・」
穂澄はそのまま楽しそうな顔をし栞たちの後を追った・・・・・・
どうも作者です。前書きにも書きましたが、いろいろ不運が重なり投稿遅れましたすみません。三日ほど前に書き終えたこの話。
達成感に打ちひしがれながら保存しようとしたその時・・・・・・ブツンッと言う音と共に停電・・・
もちろん一度も保存していないので最初からやり直しと言うことになり2日ほどショックで書く気が湧きませんでした。私事で投稿を遅くしてすいませんでした。この頃の目標は三日に一話なので出来るだけ頑張りたいと思います。
あと最後に出てきたフォションと言うのは紅茶のブランドでフランスが発祥地。全て直輸入らしくアップルティーなどが美味しいらしいです。やはり栞たちはお嬢様なので紅茶のストックもたくさんあるということを表現したかった為出てきたブランド。ちなみに私は一度も飲んだ事はありません!
それでは投稿頑張ります。。。