第二十六話 創立記念祭で(前編)
すみません。サブタイトルの『〜て』は限界です。
丁度、折り返しに入ったのでサブタイトルはこれからは普通にしていきたいと思います。ご了承ください。
「さて、創立記念祭を三日後に控えたこの日。そろそろ出し物を決めよう。」
「・・・・・・・・・」
教室は静寂に包まれる。そして
「ふっざけんなっっっ!!!」
いつもは大人しい特進クラスの男子達も机に片足を乗せ本や筆記用具が教師に飛ぶ。
「あたっ!?いってっ!?ぎゃーーーー!!!」
特進クラスの教室に教師の悲鳴が響いた。
数分後。
「えーそれでは創立記念祭の出し物を決めたいと思います。」
教壇に立っていたのは穂澄であった。
そして教室の隅にはキリストの様に貼り付けられた教師がぐったりとしていた。
「それでは出し物を出してください。」
穂澄がチョークを握り出し物を決めていく。
まあ、出し物と言っても特進クラスはほとんどの生徒が勉強を主に生活しているので手間が掛かるのは好ましくない。と言うより後三日でそんな手を込んだものを作るのはぶっちゃけめんどくさい。
出てきたのはクレープ屋、お化け屋敷、たこ焼き屋、喫茶店などなど、まあ定番の物であろう。
と、ここでぐったりとしていた教師がピクリと動く。
「あ、ああ、桂・・・お前は・・・・・・」
「黙れ、そのまま下校時間まで寝てろ。」
穂澄は進行をしなければいけなくなった腹いせかそれともただSな穂澄が見え隠れしているだけか。
まあ、今は教師の最後の言葉を聞こうとしよう。
「おまえは・・・一年のメイド喫茶に行くことになってるから・・・・・・当日は一年の出し物を手伝え。」
そして教師は息を引き取った・・・・・・・・・
さて、冗談はさておき。
「一年のメイド喫茶?・・・・・・」
頭の片隅に何かが引っかかる。どこかで聞いたような単語だ。
メイド喫茶―――メイド―――メイド服―――
穂澄の頭の中は連想ゲームの如く動き頭の隅に残っている単語を引っ張り出す。
メイド――――――栞―――狂喜乱舞・・・
「あっ!?忘れていた!」
約一ヶ月ほど前の事である覚えて無くても仕方が無い気がする。竣夜の会社に行く前夜、栞がメイド服の姿をしていった一言。
『創立記念祭でメイド喫茶やるから兄様の許可取ってきて。』とか何とか言われた。
いや・・・だって普通忘れるよ。だって許可とってから変態M女に会ったり風邪ひいたり借金が増えたり誕生日パーディーで酒のことがあったり陸奥庵のこともあったし・・・・・・
―――今更だが、俺のここ、一ヶ月ってめっちゃ労働してないか!?
改めて振り返ってみると密度の高い一ヶ月を送っている事に気が付く。と同時に現実逃避にも走りたくなるのだがそんな余裕はない。
「お、俺。そう言う訳で一年のところ行くから!」
チョークを愁寺に投げ渡しそのまま栞たちの元に向かう。
竣夜と約束した事は穂澄も一緒にメイド喫茶で働いて栞と尊を守る事にあった。しかし栞たちから何の返事も無いと言う事は向こうも忘れている可能性が高い。
―――あの教師に感謝しないといけないな。忘れててそのまま創立記念祭が始まってたら狂喜乱舞は間違いなかった・・・・・・
考えただけでゾッとする。あの獣と化している生徒たちと栞たちを一緒の教室に入れたら大変な事になる。
穂澄はそのまま廊下を走りながら栞たちがいる一年の教室に向かった。
階段を二段飛ばしに降り、そして直ぐそばの角を曲がりそのまま教室の中に入った。
「お嬢・・・さ・・・ま?」
「いらっしゃいませ〜」
入ったと同時に目に入ってきたのは三日前と言うのに完全に喫茶店風に改装された教室であった。
そして穂澄が驚いていると一年の女子生徒たちがメイド服で出てくる。
「あっ!穂澄さん。どうしたんですか?」
「み、尊お嬢様もその格好で創立記念祭に出るんですか?」
教室の奥にいた尊が穂澄に気付き寄って来る。どうやら周りを見回しても栞はいないようだ、多分他の仕事に行っているんだろう。
と、それより今気になるのは尊の格好だ。
当然メイド喫茶であるからしてメイド服は着るであろう。しかしどちらかと言うと栞より常識人の尊の事だ。恥らいを持って裏方の仕事をする事を心の隅で願っていたのだが・・・・・・案の定、フリフリのメイド服を着てはしゃいでいた。
穂澄は一瞬現実逃避をしそうになりながら、何とか声を振り絞って尊に聞く。
心の底では本番は裏方をやると言う答えを期待しながら・・・・・・
「うん、喫茶店のメイドリーダーに選ばれたの!」
―――うん、現実は甘くない♪
この際、メイドリーダーって何?と言う疑問は放っておこう。とり合えず穂澄は今何故此処に来たのかを説明した。
「―――えっ!?兄様がそんな事を行っていたんですか!?すみません。聞いていなかった物で。」
突然の事で教室内も騒がしくなる。穂澄の周りには見渡す限りの女子生徒・・・・・・
「・・・・・・あれっ?男子生徒はいないんですか?」
今更ながら当然の質問。見渡す限りの女子生徒。その中には男子生徒の姿は一つも無い。
普通創立記念祭などの大事は男子の力仕事が主になる為男子の存在は必要不可欠なのであるが・・・・・・
「・・・・・・ふっふっふ、此処は女の園。一歩踏み入れた男子はメイドたちに心を奪われ骨抜きに〜」
「栞お嬢様。後ろからいきなり出てこないでください。」
こんな事をするのは栞しかいない。それに言葉の独特の貯めから振り向かずとも栞と言う事は容易に想像できた。
「ちっ!」
「いや、舌打ちされても困るんですが・・・・・・」
「・・・・・・わかってる。今はこれを預かって来ただけ。」
栞が取り出したのは一枚の紙切れ。そこには。
『桂穂澄をメイド喫茶の助っ人と処す。by担任』
―――と言うものであった。
その紙を見ると周りの生徒たちも担任の言う事なら良いかと納得しながら再び作業に付いた。
「で、でも。栞。穂澄さんは男だから女の園の実現には大きな障害に・・・・・・」
「尊お嬢様。何、野望ゲームみたいな台詞を言ってるんですか・・・・・・」
尊の言葉に呆れる穂澄。
「・・・・・・大丈夫、穂澄には女装してもらうから。」
「・・・・・・・・・はっ?」
数秒の間。
そしてようやく理解する穂澄。
「いやいやいやっ!私はそんな特殊な趣味は持っていません。」
「・・・・・・いやぁ強制だし。」
「そんな軽く言わないでください。私にとっては新たな人生の道が開ける可能性があるんですよ!?」
そんな事思う穂澄に少し引き気味の周り。
「そ、そうだよ!穂澄さんが女装なんて・・・・・・うぅ、女装。」
「何、満更でも無い顔してるんですか!?」
頬を染め『女装』と言う単語を連呼している尊にツッコミを入れる穂澄。
「・・・・・・さて、冗談はさておき。穂澄は執事服で手伝って。」
「冗談だったんですか!?」
栞はニヤリと笑みを浮べる。多分さっき、後ろから話しかけて驚かなかった為の嫌がらせなのであろう。
そう考えると簡単に引っかかった自分に嫌悪しながら穂澄はガクッと肩を落とした。
ちなみにその後、尊が栞に『やっぱり穂澄さんは女装させない?』と提案していた事は穂澄は知らずにいた・・・・・・
どうも、作者です。この頃、見てくれているかも解らない後書きが趣味です。
本編とは違った形で読者様と接する事が出来るのが面白いのか、ただただ、自分の愚痴を聞いてもらっているのかは定かではないのですが・・・・・・
はい、と言う訳で。祝、執事になる50の方法、本編折り返し!!
連載を始めて早半年とちょっと・・・・・・ようやく此処まで来ました。ここからラストスパートを掛けたいと思います。まあ、早くかけすぎて残り五話辺りで息切れしない事を願いながら頑張ります。
後、感想&評価をくれたユウさん。ありがとうございました。出版されたら買うと言うところまで書いてもらって感謝感激雨あられ・・・古いかな?
まあ、投稿頑張ります。。。