第二十五話 S真について
昼休みの団子は好評で良かったが弁当が余る事は誤算であった。
栞と尊が喜んで食べてくれていたのは良いが弁当は手付かずで穂澄はいつもより重い弁当を片手に栞と尊、そして奉里をつれて学校の帰り道を歩いていた。
「ほすみさん。お団子美味しいかったからつい食べちゃって・・・・・・大丈夫だよ。多分灯真さんもそんなに怒らないよ(多分)。」
「・・・・・・う、うん。灯真だって鬼じゃないんだから許してくれるよ(おそらく)。」
「そうだよ、穂澄くん!別に悪気があってやったわけじゃないんだし灯真さんだって許してくれるよ(誰か知らないが)。」
落ち込んでいる穂澄の事を励ますつもりで言っているのであろうがそれが逆に辛い事もあり、しかも本性が隠しきれていない分悲しくもなってくる穂澄。
そう、この弁当はいつも灯真がお嬢様達の栄養バランスを考えて作っている為、昼は団子だけしか食べなかったとは流石に良いにくいのである。
「そう言えば穂澄さんはその・・・・・・」
「・・・・・・陸奥庵。」
「そう!陸奥庵。もし借金を返し終わったら陸奥庵を継ぐんですか。」
尊が陸奥庵の名前を思い出せずにいた所、栞が尊の心を読み取ったように告げ口をする。
「いえ、中学に上がるまではそう思ってたんですけど、一回親父が店を畳んでるし、それに俺には5億3000万の借金がありますから・・・・・・」
最後の借金の事を言うと穂澄はより一層暗くなる。って言うか、5億って一生働いて稼げる金額かどうかも定かではない。
「あっ!」
と、此処で奉里が大声を上げる。
当然、いきなりであった為3人は肩をビクッと跳ねさせる事になった。
「ど、どうした!?奉里。」
奉里は答えない。しかし指だけをその驚いた方へ向けると・・・・・・
そこにはヤンキー座りをしているおじさんがいた。
「お知り合いですか?」
「・・・・・・父親?」
「えっ?え〜と・・・・・・」
奉里は言いにくそうにしているが穂澄の顔色を伺っている。
穂澄は厳しい顔をしてその男を睨んでいる。そして無言のまま奉里に荷物を預ける。そして・・・・・・
「親父っ!!」
「「えっ?」」
そしてヤンキー座りをしていたおじさんもこっちを向いて立ち上がりこちらに寄ってくる。
「オヤ―――」
「死ねっコラァッッッ!!」
穂澄がつられて寄って行ったと思ったら自称穂澄の父親が穂澄の首にラリアットを決めた。
「ゲフゥッ!?」
穂澄はまるで交通安全教室の車に吹っ飛ばされるマネキンの様に栞たちの前に転がってきた。
「だ、大丈夫ですか!?穂澄さん。」
「・・・・・・生きてるかー?」
「お、おじさん。何してるんですか!?」
しかし自称穂澄父は息を荒げたまま地面に伏している穂澄を見続けている。
そして穂澄は喉を抑えたまま、ゆっくりと起き上がった。
「ゲホッ!ゴホゴホッ。な、何するんだ親父!」
「黙れ!このダメ息子がっ!何だ、特進クラスで成績上位だけじゃ飽き足らず、下校に可愛い女子3人連れて!見せしめか!?ハーレム見せ付けてんじゃねえよ!?こちとらアル中に加えてヤニまで辞めてイライラしてんのに見せ付けてくれやがって!!??」
と一方的な言葉だけ押し付けてきていろいろと撲殺したい気分であるが此処は我慢しよう。
「穂澄さん。この方が?」
「・・・・・・お父様?」
「まあ、一応これが俺に借金を押し付けて逃げた父親ですよ。いやーホントにこいつったら・・・ってそれよりオヤ―――」
何か愚痴を喋りそうになりそうだった穂澄だったが気を持ち直した。
「いや〜君達可愛いね。俺は穂澄の父親の桂架捺ね。」
「お嬢様達の手を握って自己紹介してんじゃねえよ!」
「うっせぇっ!こちとら美捺が死んじまってから女成分が足りないんじゃ!それに陸奥庵をまた再会したから金も無くて此処二週間団子しか作って食ってねえんだよ!」
素早く反転して架捺に襲い掛かった穂澄を架捺は叫びながら応戦する。美捺と言うのは穂澄の母、今はもう亡くなっているが元気で活発的な人だったらしいとか何とか(奉里談)
―――腹が減って?
とここで穂澄は何やら思いついたらしくニヤリと悪い笑みを浮べる。
そして手提げ鞄から弁当を取り出す。
「むっ!それはっ!?」
「ほらほーら親父。メシだぞ。」
穂澄はまるで野良犬にご飯をあげるかのごとく架捺の目の前で弁当を左右に揺らす。そしてノリが良いのか、それとも空腹で自我を失い掛けれているのか、まあ、とり合えず第三者から見ると青年がオッサンを手懐けていると言う世にも奇妙な光景が広がっている。
「良しっ!取ってこーい!」
幻のトルネード投法!で穂澄はそのまま結構重量のある重箱を空高く放り投げた。
そしてやはり穂澄の父親。ノリが良いのかそのまま四速歩行で弁当の方へ走っていった・・・・・・
「良し、行きますよ。2人共。奉里!お前はあっちだから送らなくて良いな。」
「うん、大丈夫。また明日ね。」
穂澄は呆然とした顔で架捺を見送っていた二人の手を持ち、そして奉里に形だけの気を向け、そのまま走っていった・・・・・・
「え〜と、全部で125万円ですね。」
ニッコリと笑いながら灯真はソファーに座りながらパチパチとそろばんを弾いていた。
目の前には200kgと書かれている重石を足の上に乗せ正座している穂澄。
「高ッ!?」
穂澄が声を上げると灯真はそろばんから目を離し、穂澄の方を見る。何気ない普通の顔、だが妙な威圧感を感じる。
主に『誰が喋って言いと仰いましたか?』って言う感じの威圧感だ。
穂澄は口を紡ぎ重力の力に抵抗する。
「と、灯真。これはやりすぎじゃないかな?」
最初は笑って見ていた真琴であったが流石に冗談じゃなくなって来ている事を察したのかオロオロして灯真に辞めさせる様に言う。
確かにその判断は賢明だ。だってさっきから足の感覚がなくなってきてるんだもん♪
「真琴。私はね、やはり甘かったんですよ。穂澄くんに対してしつけと言う物を怠っていたんですよね。だって、私が丹精込めて作った栄養弁当を穂澄くんのせいで手をつけてもらえず、終いに父親から逃げる為に弁当を投げ与えたって、はっはっはっ」
声では笑っているがもちろん顔は笑っていない灯真。
「だ、だけど2人のお弁当入れの重箱って125万もしたっけ?」
「いいえ75万ですよ。あれは、比較的安く売ってもらったんです。」
一般常識を考えると75万って言ったらお父さんの一大決心並みの値段です。
「ちなみに後の50万は私の心の治療費です。」
「高いっ!高いよ灯真!そんな事言って実はS真になってるでしょ!?」
注)S真とはSの灯真のことです。
「はっはっは。今更何を言ってるんだ真琴。当たり前だろ♪」
その後、数時間に渡り正座をさせられていた穂澄。もちろん重石は200kgではないであろうが、精神的な面でボロボロになった穂澄は足の痺れもあってその日は夕食にありつく事は出来なかった。
そして正座が終わった時灯真は穂澄と出会ってから一番の笑顔をしていたらしい。
「穂澄くん。借金に125万追加しておきましたから後、5億3125万円ですね。頑張ってください。」
125万と言ったら大金だ。しかし5億3000万と比べるとチリに等しく感じてしまうせいか穂澄は借金が増えた事によるショックは少なくて済んだようであった・・・・・・
どうも、遅れました。作者です。
なんて言うか・・・飽きてきた。
これも九月の最初に飛ばしすぎた影響かな、思いますがSな登場人物たちを書いていると何だか楽しくなるのは自分がMだから?それともSだからいじめられているキャラを見るのが嬉しいのか・・・自分的には後者の方がまだいい気もしなくはないですが・・・・・・
と、話は変わりますが75万の一大決心と言うところがありましたが、アレは家の父親です。
24年間使ったダイニングテーブルの支柱が折れた為とても不安定になってしまいました。元々折りたたみ式だったのが支柱がボロボロになり。現在資材をボルトでくっ付けた即席とキャスターでこれ以上不安定なものがあるのかと言うぐらいヤバイ支柱。
計、三本で支えています。って言うかさっさと買えと言いたい今日この頃・・・
投稿頑張ります。。。