第二十二話 酒の影に騙されて
次の日。穂澄は恐る恐る自分の部屋を覗いていた。理由はもちろん昨夜の事が原因だ。普通は一日経てば酔いは醒めているはずだがウォッカを飲んだ事と昨日の弾け振りから見て注意しすぎたと言う事はないであろう。そして扉を少し開け中を見ると案の定二人は穂澄のベットの上でスヤスヤと小さな寝息をたてていた。
そして最善の注意を払い部屋の中に入る。そのまま天蓋のカーテンの中に入って肩を揺する。
「お2人共、朝です。おきてください。」
「うぅ〜ん」
「・・・・・・ぐ〜」
尊は目を擦りながら起き上がるが栞はそのまま寝息をたてたまま眠っている。
尊は目の前に穂澄がいることに気がつくと急に掛け布団の中に潜る。
「ど、どどどどどうして、穂澄さんが私の部屋にいるんですか!?」
「えっ?いや、ここは私の部屋ですしそれに私は執事ですから別に起こしに来ても不自然では・・・・・・」
尊は掛け布団から鼻から上だけ出して今の状況を確認する。その時点で尊の顔が茹蛸の様に真っ赤になっていた。
そして尊は此処は自分の部屋ではなく隣には栞が寝ていることにも気付いた。
「そ、そうだ。私、蛍さんからジュース貰ってそれからお風呂入って・・・・・・あれっ?その後は・・・」
どうやら酔いが回っていた時の事は覚えていない。これなら昨日キスしたことも覚えていないであろう。
穂澄は尊に気付かれないように小さく溜息をついた。
「それより、私が起こしに来ると何か悪い事でもあるんですか?」
尊は穂澄がそう言った瞬間、忘れかけていた穂澄の事を思い出したのか、再度出かけていた掛け布団にまた顔を隠す。
「だ、だだだだって!パジャマ姿だし髪だってボサボサだしぃ・・・・・・うぅ〜!!」
尊は掛け布団を蹴っ飛ばし、そして風の様に穂澄の隣を通り抜けそのまま部屋から出て行った。
その姿は毛布を頭から被っていた。それほど寝起きの自分が見られたくないのか?と穂澄は思うが
―――それよりあの状態で走っていたら柱とかにぶつか―――
ガンッ!
「きゃっ!」
心配していた事が的中したのか、遠くで柱にぶつかったような音がしそしてそれと同時に尊の悲鳴が聞こえてきた。
まあ、取り合えず。尊は起きて仕度を始めたみたいなので、次は栞を起こす番であった。
「栞お嬢様。おきてください。朝ですよー」
肩をポンポンッと叩くと栞が寝ぼけ眼でゆっくりと上半身だけ起こす。
穂澄が目線に入っているのだろうがまだ完全に覚醒していないのか挨拶はまだない。
「お嬢様、おはようございます。」
「・・・・・・!」
声を掛けられた事で穂澄の事を認識したのか反応があった。
そして一言。
「結婚しよう。」
ゴトンッ
穂澄は目覚ましを設定していた時計を切る為に持っていたのだが今の一言で落としてしまった。
「なっ!?ななななっっっ!?」
―――お、覚えていた!?
そんな事が穂澄の脳の中を駆け巡る。
と、
「・・・・・・ぐ〜」
再び目を瞑りポテンッと枕に頭を預ける栞。
「ね、寝言・・・・・・だよ・・・な」
まるで自分に言い聞かせるように言う穂澄。流石に栞が昨日の事を覚えていたらこれからの栞への接し方に大きな支障が出る気がしてならなかった。
と、栞がいきなりガバッと起き上がった。
「・・・・・・アイス食べたい。」
「えっ?」
「・・・・・・頭痛い。アイス食べたい。」
「・・・・・・あの、二つの共通点が読めないのですが?」
栞は尊と同じく布団を蹴っ飛ばし起き上がりクローゼットの中に入っていった。
もちろん、クローゼットの中は四次元空間♪・・・とかではないが小柄な栞が入るようなスペースはある。
そして寝ぼけ眼のまま再び出てくる。
「・・・・・・穂澄の匂いしかしない。」
「普通、服で判断しません!?そう言う事は」
栞は穂澄のその一喝で目が覚めたのか完全に目を開け。回りを見渡す。
そして再度穂澄と目が合った。
「「・・・・・・・・・」」
「・・・・・・エッチ」
「何でっ!?」
栞はそう言うと穂澄の疑問には答えずにそのまま部屋を出て行ってしまった・・・・・・
そして食堂。
2人が出て行った後ベットメイクをしていた為少し時間が掛かったせいか、既に2人は食事を進めていた。
既に着替えを済ませ髪もセットし制服を着ている2人の元に穂澄は近づいていく。
「おはようございます。お嬢様。」
「うぅ〜。お、おはようございます。」
尊は再び顔を赤くしてパンをモソモソと口に運ぶ。
穂澄は栞の方を向くと栞は穂澄の顔をジッと見ているが答えない。
「おはようございます?」
再び言うと栞もやっと口を開いてくれた。
「・・・・・・おはよう―――」
―――何だ、さっきの事で怒っていた訳じゃあないのか・・・
「―――エロ澄くん。」
―――前言撤回ッッッッ!!
間違いなくさっきの事引きずっています、中佐!!
まあ、中佐って誰と言うツッコミは無しとしよう。
今は真琴と尊から向けられている軽蔑の目を何とかするべきだ。
「いやいや、お2人共違いますよ。私は何にもして―――」
「―――・・・・・・穂澄はさっき私の寝起きを襲って○○○なことしようとして私が悲鳴を上げようとしたら『いいのか?あの事、学院でばらすぞ』って脅され―――」
「いやいやいやいやいやッ!なんですか!?○○○って!?それにあの事って何ですか!知りませんよ私は。ほらっ、2人もそんな目しないでください。」
さらに強い軽蔑の目を向けられ居心地が悪くなってしまう。
「お嬢様方、穂澄くんで遊ぶのもいいですがそろそろ登校しないと間に合いませんよ。」
「「「は〜い」」」
灯真がキッチンから出てきて三人に呼びかけると、
3人は揃って声をあげそして先ほどの軽蔑の目は消えていた。
そして
「じゃあ行きましょうっ!穂澄さん」
「・・・・・・穂澄は朝ごはんいらないよね♪」
そう、わかっている人もいるかも知れないですか穂澄はまだ、朝ごはん食べていません。
「・・・・・・わかりました。私にはどうせ拒否権はありませんし、そんな笑顔にせられたら断る事なんて出来ませんよ・・・・・・」
そうしてそのまま穂澄は空腹のまま家を後にした・・・・・・
どうも作者です。
サブタイトル、解りにくいと思いますが、これは一応酒の事を考えすぎた穂澄が痛い目にあったとか、そんなことを思って決めました。
分かっている人もいるかもしれませんが、サブタイトルの『〜って』と言うのはそろそろねた切れです・・・・・・
と言う訳で『〜って』は三十話までにしてその後は普通で行きたいと思います。
っと、ここで言い忘れていた事がありましたが十五歳主婦さんよりさんありがとうございました。
まさかリピーターになってくれているとは思っていなかったものでびっくりしました。
本当にありがとうございます。十五歳主婦よりさんを始め読者さんの為に、
投稿頑張ります。。。