表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/50

第十七話 風邪をひいて(穂澄の場合)中編

穂澄は深い眠りから目を覚ました。特に夢を見ていたわけでもなくベッドが寝苦しかったわけでもない。

しかし何処か疲れている。と、言うかなんだか体がいつもより重く感じたのは事実だ。カーテンの隙間から朝日が丁度、目に入る。眩しくて窓ではない方のカーテン。つまり天蓋のカーテンに手をかけ、そして引く。

ただそれだけの動作なのにどうしても辛い。前にも何度か会った事のある倦怠感、これはもしかして・・・・・・


「ゴホッ・・・・・・風邪、ひいた?」











「・・・三十九度ジャスト。これは栞ちゃんに貰ったね。」


真琴に額をポンッと叩かれる。それだけでも辛い。息をするだけで喉が焼けそうだ。

横では心配そうに穂澄を見つめる尊と居心地が悪そうにした完全に風邪を完治させた栞。袋から薬を取り出している真琴がいた。


「これ、灯真が貰って来た薬だからこれ飲んだらゆっくり寝ててね。灯真がまた医者の所に行ったから、今日は私しか居ないの。と言う訳で大人しくしててね。」


真琴は看病が面倒らしく目で『動くな』と訴えてくる。いつもならこんな事はしないがたぶん昨日の夕飯の時、放って置かれたことに腹を立てているのであろう。


「さて、2人は学校でしょ!さっさと行って!」


「で、でも穂澄さんが心配で・・・」


「・・・・・・それに穂澄が居ないと、学校怖い。」


なかなか渋って動かない2人。


「って言うか私が居ないと学校怖いって事は=私が居れば怖くないというわけですか?」


まあ、そうなるであろう。2人は少し答えを渋るがゆっくりと頷く。

そして、この行動が穂澄の執事魂(?)に火をつけた。


「ふふふ・・・・・・」


「あれっ?どうしたの穂澄くん。熱の上がりすぎで壊れちゃったかな?」


「ふふ・・・はーははははっ!こんな事で休むだと?否!私はお嬢様方に南国パラダイス行きを阻止してもらった恩があります。これぐらいでギブアップ?否!さあ登校しましょう。」


穂澄はクローゼットから制服を取り出すと目の前に女性さんにんが居るのにもかかわらず執事服を脱ぎ捨て着替えだす。

一応、真琴が寸前のところで2人の目を隠してくれたが、その2人も穂澄が何をしていたのかはわかっていた。

クローゼットを開けてから僅か10秒足らず、制服を着てそして鞄を持つ。

もちろん顔色は肌色と言うより、土器色に近い・・・って言うか下手すると死にます。


「ほ、穂澄くん。落ち着いて、ね。いくら穂澄君が頑丈でも三十九度の熱で学校に行くなんて。」


しかし聞く耳を持たない穂澄は無言で尊、栞の腕を掴み、自室を出て行った。取り残されたのは真琴1人・・・・・・







「ほ、穂澄さん。あ、熱い。無理しなくても良いんです。私たち2人で行きますから。」


「・・・・・・無理しないで寝てていいの!」


「いえいえ、お2人だけで学校に送り届けるという事。それはパンダの檻に笹を投げ込む事と同じです!パンダだってナメちゃぁいけやせんで!アイツもね愛らしい顔してるくせに迂闊に近づいたら殺られるんです。学校はそんな人ばかりなんです!そんなところにお2人を行かせるなんてお父さん!許しませーん!!」


もう何がなんだかわからないがとり合えず、お仕事頑張ってるみたいです・・・・・・





学校。いつもと同じ地獄に校門の前に到着し、二人の手を握ったまま校舎へと向かう穂澄。当然の事ながらいつも通り男子の目がそこら中から降り注ぐ。

とここで・・・・・・


「ほっすみぃ〜」


この声はやはり蛍だ。この禍々しい殺気を感じないのか、穂澄の間合いに簡単に入ってしまう。


「あ゛っ?」


「・・・・・・ど、どどどど、どうしたの?穂澄、今日はメッチャ殺気立ってるけど・・・」


平常心を保とうとしているが声が震えていて怯えているのが目に見えている。


「いや、今日は、体調が悪くて。」


「・・・・・・う、うん。あれ、女の子の日」


「違います!」


「・・・もしかして、熱あるの?お前。だから髪も黒く―――」


「―――それ以上、戯言ざれごと言うならお前が中学生の時の秘密校内放送で全部暴露するぞ。」


穂澄は現役の不良に一睨み利かせ、そのまま学校内に行ってしまった・・・・・・

階段を駆け上がり一年の教室に2人を送り届けるとそのまま特進クラスの教室までダッシュ。

階段を登るごとに段々穂澄の顔色が悪くなっている気もしなくはないが、誰もその事について声はかけない。なぜかと言うと理由は簡単だ。

凄く怖い。

目が会ったら殺されそうな勢いの穂澄、階段を降りてくる生徒は全員端の方へ避けていく。


「おはようございます。」


時間ぎりぎりに教室の飛び込んだ穂澄。まだ、時間ではなかったがすでに教卓には教師がおり、生徒もみんな着席している状態であったので、今日室内の視線を一斉に浴びる。

もちろん散髪してからまだ一度も学校来ていないので初見の生徒達からは歓声が上がる。

女子は黄色い声をあげ、男子も珍しいものを見るような目で穂澄を見る。しかし一番目に付くのは、穂澄の顔色が教室の奥から見ても悪いことがはっきり解るという事だ。

しかし妙な殺気に包まれている穂澄に誰か言い出す勇気を持てずクラス全員が息を呑んでいる。

穂澄も最初の一言だけでそれ以上喋ろうとせず自分の席につき、そして机に倒れこむように寄りかかる。

その時クラス全員はやはり体の調子が悪いんだということに気付く。


「か、桂。もし調子が悪いなら今日は早退しても良いんだぞ。」


「あ゛っ?」


顔だけ起こした教師に話しかけんじゃねえよと言う感じの目で訴える。

教師は穂澄を無視してそのまま授業を始めることにした。

これは後から気付いた事なのだがその時、教師の足は少し震えていたという・・・・・・





そして昼休み。弁当は灯真が昨日、穂澄が出かけた後用意して冷蔵庫に入れておいたらしくちゃんと鞄の中に入っていた。

ちなみに授業はほとんど覚えていない穂澄。教師も生徒も殺気を感じながら授業を受けていたのでひきつけを起こす人や保健室に逃げる生徒が続出したほどだ。


「この時間を抜ければ、後は下校だけだ。ふふふふっ。誰もお嬢様達には指一本触れさせませんよ。」


目の前の椅子に向かって話しかける穂澄。しかし当然目の前にあるのは椅子だけだ。誰も座っては居ない。

穂澄にしか見えないらしい。

話を終えた穂澄は弁当を持って立ち上がる。そして教室を出た。

廊下にはいつもと同じ男子生徒達が待ち伏せしていた。


「来たぞ!桂穂澄だ!行けえええー!」


穂澄が出て来た瞬間、男子生徒の波が突っ込んでくる。


「ちっ!」


もちろん穂澄はそれを避けるべく走り出した。

しかし熱のせいか。いつもよりペースが遅い。直ぐ後ろに波が迫ってきた。

と、ここで穂澄が携帯を取り出す。


「おい、蛍か?今何処だ?」


どうやら相手は蛍らしい。

と携帯からは陽気な声が聞こえてい来る。


『ん?今は購買にいるよー。なあいいか?よく聞け。なんとあの伝説の焼きソバパンアンコ添えが買えたんだよ!』


「今、特進クラスの廊下で男子生徒に追いかけられてる。そんなゲテモノ食ってる暇あったら助けろ!いいか?後10秒で来い。じゃないとここでお前の秘密を暴露するぞ。」


『えっ?ちょっと待て。購買から特進クラスの廊下って、走っても三十秒はかかるぞ!如何すれば二十秒のハンデ乗り越えるんだよ!?』


「9・・・8・・・7・・・」


『わかった!わかったから、今から10秒にしろ。直ぐ行くから!』


ブツンッ!そう言い電話は切れた。穂澄は荒い息の中とり合えず時間稼ぎをするべく、遠回りをして波を回避する。

しかし息が荒い、目の前が少し歪んで見える。視界が狭い。などの末期症状に苦しむ穂澄。


「おい、来たぞ!まだ時間じゃないよな!?」


慌てて飛び出てきたのは蛍だ。穂澄のスピードに合わせて隣を走っている。

顔は真っ青だ。そんなに中学の秘密をばらされたくないのか。そこまで真剣だと逆に聞いてみたいものだ。

穂澄は汗だくの頬を制服で拭い、ニヤリと邪悪な笑みを浮べる。


「ああ、まだ時間じゃない。それじゃあ頼んだぞ!」


そう言った瞬間穂澄は蛍の制服を掴み、後ろの男子生徒の波の中へ押し出す。

バランスを失った蛍はそのまま波と衝突しそして男子生徒の波は衝突した事により先頭が倒れ、その後ろも倒れとドミノ倒しの様に倒れた。


「悪いな、蛍。今度団子作ってやるから勘弁してくれ。」


そういい残し穂澄は特進クラスの廊下から姿を消した。








誰か私に感想を書いてください・・・

何か読者数は出てるけど誰も感想をくれないのでちょっと鬱気味・・・・・・

でも、頑張ります。。。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ