第十二話 誘惑に負けて
「それじゃあ、私達は栞の部屋に居ますので掃除をお願いしても良いですか?」
「・・・・・・働けワカゾウ!」
ファッションショーを終了させた穂澄は服で埋もれた部屋を片付け始めていた。
「はい、その為に来たのですからしっかりとさせていただきます。」
顔は笑顔であったが心では泣いていた。まあ、これも試練だと思い忘れることにした穂澄。
「あっ、それじゃあ一番上の引き出しはあけないでくださいね。それ以外は大丈夫なので。」
そういい残し、二人はさっさと走っていってしまった。
穂澄は2人を見送ると、まず散らかった衣服を片付ける。幸い何処からか来た黒服の人たちが手伝ってくれたので思っていたよりは早く終わった。その後はベッドのシーツをはがしかごに入れ、その後洗濯とアイロンを済ませた服をタンスにしまい、その後は掃き掃除をしていた。
と、その時ふと尊の言っていた机の一番上の引き出しが気になった。
鍵付きの引き出しだがその鍵穴には現在鍵がささっていた。これは尊らしいミスである。と、ここで穂澄の頭の中では天使VS悪魔の対決が繰り広げられていた。
『ダメよ穂澄。あなたは雇い主の1人から見ないでと言われたのよ、あなたはその雇い主の信用を裏切るの?』
『YOU,いいんだよ。自分の欲望に素直になれば、見たいんだろ?気になるんだろ?大丈夫だって、尊も栞も今は2人で遊んでるんだから誰も来ねぇよ〜。ほら、YOU,見ちゃいなよ!』
―――天使の行っていることも一理あるが、少しぐらいなら良いかな?それに今は他の人たちは出払ってるからどうせ誰も来ないし・・・・・・って言うか今改めて思うと俺の頭の中の悪魔ってジャ○ーさんじゃなかったか!?
そんな事を考えている間にも穂澄の手は引き出しを触りそして、ガラガラと小さな音を立ててあいた。そこには・・・・・・
「日記帳?」
少し調子抜け出あった。穂澄的には0点の答案とか、自分の恥ずかしい写真とか、彼氏の私物とかを想像していたのだから、まあ、尊なら日記を見られたくなくてああ、言うのも解らなくない。とここでまた天使と悪魔が出てくる。
『だ、ダメよ穂澄!い、今ならまだ間に合うわ。だから早くその手に取った日記を引き出しにしまって!』
『HEYHEY,良いんだよ穂澄。YOU,見ちゃいなよ!』
「あっ!どうもジャ○ーさん。お久しぶりです。では早速。」
もはや天使の声など届いていなかった穂澄は。何の迷うもなくその日記帳をあけた。
「ん?使用日(初)1月1日。ああ、今年から書き始めたのか。」
そうして開いた穂澄はその内容を読み始めた。
1月1日晴れ
『今日もいつもと同じ良い日だった。昨日から新しく来た執事さんとは初対面で緊張してまったので執事さんに変な子だって思われてないと良いけど・・・・・・良く考えると私って他人といえば灯真さん以外の男の人とはあんまり話したことがなかった。やはりそのせいなのか初めて会うときには心臓が痛いほどドキドキした。だけど新しい執事さんは笑顔がとっても優しくて良い人だった。』
―――流石に誰も居ないと解っていても照れるな・・・・・・
穂澄はそのまま読み続ける。
1月2日晴れ
『今日は穂澄さんが真琴さんと会うと言うことを聞いて栞と一緒に庭に向かっていた。だけど二人を見つけたときは驚いた。だって穂澄さんが真琴さんを押し倒していたから・・・・・・あんなに優しそうな人もやっぱり怖いんだと思ってしまったけれど後で誤解だとわかったときは少しホッとした。それは穂澄さんが怖い人じゃなかったということもあるけどやっぱり本当の理由は私が穂澄さんに―――』
続きを読もうとしたがその部分で終わっていてそれ以降は消しゴムで消された痕が残っていた。
仕方がなくそこは諦め次に行く。
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1月9日晴れ時々くもり
『冬休みも終わって学校に登校する日だった。私はてっきり栞と2人で行くと思っていたのだけれど、灯真さんとお兄ちゃんが何とかしてくれたみたいで穂澄さんも一緒に学校に行くことになった。私はあまり嬉しそうには言わなかったけれど内面は穂澄さんともっと話が出来ると思い凄く嬉しかった・・・・・・学校に行くと穂澄さんの友達の遠藤蛍さんにあった。蛍さんはとてもフランクな方で昔の私だったら苦手だったかもしれない、だけどこの一週間穂澄さんのお陰で男の人にも緊張しなくなったのだ。そのお陰で蛍さんとも仲良くなれて本当に良かった。』
―――あれっ?お嬢様達にお兄様なんていたんだ。初耳だな。
1月10日晴れ
『今日屋上でご飯を食べる時私はシートを取りに行って戻ってきた時、聞いてしまった。』
とここで穂澄の手が止まる。そこには栞に告白された時のことが書き込まれていた。
『栞が穂澄さんに寄り添って好きだよって告白している所を聞いてしまった。そしてその後キスをしている栞を見てしまった。何故だかわからないけど私は少しショックだった。私は栞の恋は応援したい。だけど穂澄さんにキスをしている所を見たときなんでか胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われた。本当だったらここは見届けなければならない。出て行ってはダメだと心では解っていた。だけど、私は動いていた・・・・・・穂澄さんの言葉を遮り何も知らないふりをして2人の間に割って入ったのだ・・・・・・本当に私は最低だ。』
とその時後ろから物音がする。穂澄は肩をビクッと跳ねさせ後ろを向くとそこには・・・・・・尊が立っていた。
「どうしたんですか?穂澄さん・・・・・・っ」
穂澄に向けられていた笑顔が急に強張る。尊の視線の先には穂澄が持っている日記帳があったから。
「み、見ないで!」
尊は今までで一番大きな声を出して穂澄から日記帳を奪い取る、と力なくその場に座り込んでしまった。
「ぅ・・・・ううぅ〜」
尊の目からは大粒の涙が流れていた。
「あ、あのお嬢様。すみませ―――」
「いいの!わ、私が悪いから、鍵を付けっぱなしだったし、表紙にも見ないでって書いて置けばよかったんだよ。」
尊は自分に言い聞かせるようにそう言う。
「ご、ごめんね。穂澄さん。私ちょっと1人にさせてくれないかな?私の替わりに栞と一緒に遊んでて。」
「で、でも。」
「お願い!1人にさせて。」
その尊の言葉に圧倒された穂澄は言われた通りそのまま静かに部屋を後にした・・・・・・
人はヤル気を出せばなんでも出来るらしい。
この話は五分で書いた超ハイスピード。
白紙から五分でよくかけたと自分でも結構満足してます。それでは投稿頑張ります。。。