第十一話 散髪しようとして(後編)
尊達の食べ終わった食器を片付けた後、灯真と2人で朝食。その後穂澄は灯真から2時間ほど休みを貰い庭へと向かっていた。
「ああ、穂澄くん。来たね。」
そこにはパイプ椅子が置いてありその隣の机には五十種類以上のハサミが置いてあった。
「・・・・・・真琴さん。このハサミって一つ一つ違うんですか?」
「ああ、そうだよ。これがカット用でこっちがモヒカン用でこっちが逆モヒカン用でこっちがリーゼント用で。これがスーパーサ○ヤ人用で―――」
まあ、いろいろとあるらしいが、今の例えだとほとんどが今回使わないはさみだらけだと思うのは穂澄だけであろうか?
「まあ、いいよ。座って座って。」
半ば強引にパイプ椅子に座らせられた穂澄はまず、シートを付けられる。
「何ですか?これは、てるてる坊主みたいですね。」
「あれ、穂澄くん。これ知らないんだ。ああ、そうかいつも自分で切るって言ってたしね。」
そのまま真琴は1人で納得したようでそのまま作業を続けていく。
「えっと、それじゃあ穂澄くん。何かご注文は?」
「髪型ですか?そうですね。真琴さんにお任せしますよ。」
「わかったよ。じゃあ始めるけど。私相手に起きていられると集中できないから寝ててね。」
「ガフッ!?」
そう言われ何の前触れもなく真琴は穂澄の首筋へと手刀を入れる。
もちろんそんな事をされるとは思ってもいなかった穂澄はモロにダメージを受けそのまま暗闇へと意識が遠退いていった。
その時、穂澄は思った。
―――ああ、今日は厄日なんだな・・・・・・と
「穂澄くん、穂澄くん。終わったよ。」
目を開けると目の前には真琴がいた。穂澄は一瞬送れて今の状況を理解する。朝の夢のことを話し、そしてその経緯で真琴に髪を切ってもらう事になったが始まると同時に種痘を喰らい意識を失っていたのだ。
そうしてよく考えると確かに頭が軽くなっているのがわかる。手で触ってもモヒカンやリーゼント、スーパーサ○ヤ人のような髪にはなっておらずひとまず安心だ。
「あ、ありがとうございました。」
「はい、これが鏡。」
渡されたのはポシェットから出された手鏡。何か少しトラウマのような気もしなくはないがまあいいであろう。真琴の腕を信じて任せた以上その結果に文句を言うわけには行かない。穂澄は心で強く念じ勢いよく目を開けた。
「・・・・・・」
「?・・・・・・どうかしたの」
何も喋らず手鏡を見つめる穂澄に真琴は声を掛ける。
その穂澄の頭は・・・・・・
「黒くなってる・・・」
「ああ、根元が少し黒くなってたから染め直そうと思ったんだけど。結構痛んでたから、いっその事戻しちゃえと思って。」
穂澄の髪は以前までは茶色くて目を覆い顔の半分はあまりよく見えては居なかったが今は長めで目に少しかかっているぐらいで色は黒くなり、前より男前になっていた。
「穂澄くんは結構かっこいいんだから、髪の毛で顔なん隠しちゃったらもったいないよ。」
真琴はそう言うと穂澄の頭をくしゃくしゃとかき回す。
「じゃあそろそろ休憩終わりでしょ。さっさと灯真達にも見せてきな。」
「は、はい解りました。あ、あの真琴さん。」
「何?」
「ありがとうございました。髪の毛すっきりして気持ちいいです。」
そう言うと真琴は満面の笑みを浮かべ喜んでくれた。
「それでは、」
そう言い庭を後にした。
「わぁ、穂澄さんかっこいいよ。」
「・・・・・・結構良い。」
「ありがとうございます。」
その後灯真に見せた穂澄は早速2人の部屋の掃除をまかされて尊の部屋に来た所であった。
最初は尊に見せる事になると思っていたが、尊の部屋には栞も居たためその手間も省けて大助かりであった。
「そうだ!穂澄さん。今からファッションショーをしましょう。」
「・・・・・・イタリアへGO!」
「えっ?お嬢様方のですか」
この際栞のボケは流しておいてまずは尊の疑問から片付ける。
「いいえ、穂澄さんですよ。こんなに髪をイメージチェンジしたんですから服も変えないと。」
「だけど、私は執事服と制服。あと私服は一式しか持っていませんよ。」
「「大丈夫」」
まるで狙っていたかのように二人の声が重なる。と何処からともなく現れた黒ずくめの男達が男物の服を持ってくる。
まあ、このさいあの人たちは誰ですかと言う初歩的な質問をするのはあえて辞めて置こう。
それに本音を言うと・・・・・・めんどくさい。
「じゃあ始めましょうか。はい、穂澄さん。着替えてきてください。」
「・・・・・・ガンバレ」
―――何を頑張るんですか!?
心でそう思いながら穂澄はいつのまには用意されていた試着室へと姿を消した。
数分後。
「着替えましたー」
そう言いながら出て来た穂澄の衣装は・・・・・・
「何かロックバンドやってそうな人だね。」
「ヴォーカルみたい。」
革の手袋したり指輪いっぱいしたり、まあ、要するにちゃらちゃらして落ち着きがない感じである。
「じゃあ、次行って見よう。穂澄さん。」
「・・・・・・GOGO!」
その後いろいろと試した。メガネかけてバンダナして裾の短いズボン履いて『萌え〜』って言ってみたり(個人的には一番苦痛だった。)
ワイシャツ着て背広きて頭七三別けにしてみたり(17でこんなかっこうするとは思わなかった。)
特攻服着てお嬢様達が小さい頃遊んでいた木馬に乗ったり、まあ、本当にいろいろした。
そしてその結果。
「片付け・・・・・・どうしましょう。」
尊の部屋は僅か数十分で服で埋もれて散らかってしまったのだ。
「あ、あの私も手伝うので。」
「いや、いいんですよ!お嬢様。私の手に掛かればこんなのプンプンプンのチョイチョイっと片付きますから。良いんです。」
そして穂澄は無理矢理気合を入れ作業に取り掛かった・・・・・・
散髪イベントはこの小説を書き始めた頃から書こうと思っていたのでかけてよかったです。
これからヤル気があるうちにどんどん投稿していきます。。。