第十話 散髪しようとして(前編)
「穂澄さん、残念ながらクビです。」
部屋には残念そうな顔をする灯真と真琴。そして栞と尊が立っていた。
「えっ?ど、どういうことですか!?俺が・・・・・・クビ?」
いまだに信じられない穂澄。しかし残酷にも灯真の首は縦に振られる。
「何でですか。り、理由を教えてください。」
「そ、それは・・・・・・」
「それは?・・・・・・」
灯真が躊躇しながらも言おうとする。その灯真の溜めは実際二秒ぐらいだったが今の穂澄には何十分にも感じられ額からは汗が滲んでいた。
「それは・・・・・・穂澄くんがハゲてしまったからです。」
「・・・・・・は?」
「ハゲです。」
「いやいや、ハゲの意味に疑問を持ったわけではなくて。俺はまだ17ですよ。そんなハゲだ何て・・・・・・」
「穂澄くん・・・」
穂澄の言葉が遮られ今にも泣きそうな真琴がポシェットから手鏡を持ち出し穂澄の顔を映し出した。
「あ、真琴さん。ありがとぉ!?」
お礼を言う途中穂澄は鏡に映った自分に絶句した。
それはもう見事なぐらい太陽の光を反射して力強く光っている頭。
―――OH,YES!!hey,元気か?My head!!お前いつの間にそんな力強く光を放つようになったのか?HAHAHAHAHA
「じゃなくてっ!?危なかった。危うく変な世界に閉じ込められる所だった・・・・・・」
「すみません!穂澄さん。私達が迷惑をかけてばかりいたせいでこんなに立派に・・・・・・」
「・・・・・・ストレスからくる円形脱毛症。怖いね・・・」
尊は目尻に涙を為、泣いている。その横にいる栞はめっちゃ穂澄に哀れみの目を向けていた。
「と言う訳で、ハゲがお嬢様方の執事となると櫻坂の評判が落ちますのでクビです。」
―――おい、コラ!今の言葉訂正しろ。頑張って働いている日本のお父さん一人一人に謝罪しろ!
と心の中では思っていたが流石に口には出せず・・・
「それではご縁があればまたいつか・・・・・・ああ、借金の残りの額は穂澄さんの臓器で払ってもらいますからお体には気を付けてくださいね。」
「そ、そんなーーーーーーーーーーー」
こうして穂澄は暗闇の中へと沈んで言った・・・・・・
執事になる50の方法 ☆完☆
「はぁっ!?・・・・・・・・・」
目を開けるとそこはいつものベットの上であった。
「ゆ、夢・・・・・・か。」
朝、食堂で食事中。
「―――と言うことがありました。」
朝から穂澄の元気がない事に気がついた4人はその理由を聞くと大笑いした。
「あはははは、穂澄くんが円形脱毛症でクビねぇ。ないない灯真はそんな事でクビになんかしないから大丈夫だよ。」
「そうですよ穂澄さん。灯真さんは夢のようにそんな悪人ではないんですから。」
「・・・・・・まあ、円形脱毛症になったら私はもう穂澄は要らないけどね。」
「あれっ?栞お嬢様。今凄く気になること言いませんでした?」
「・・・・・・気のせい。」
栞は顔色一つ変えないで朝食のチョココロネをモフモフとほお張っている。
「お嬢様。口の端にチョコが付いていますよ。」
穂澄は栞に近づき頬をふきんで拭う。
「・・・・・・っ」
途端に栞は顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
しかし穂澄に顔を抑えられている事によってそれもかなわず。自然に穂澄と目が合ってしまう。
「・・・・・・ぅ。ありがとう。」
「いえ、どういたしまして。」
恥ずかしがっている栞の様子など鈍感な穂澄には解るわけがない。そのままふきんを綺麗にたたむと再び自分の立ち居地へと戻る穂澄。
「穂澄くんも執事が板についてきたみたいだね。鈍感なのは変わってないけど。」
「はい、そうですね。穂澄さんはいつも鈍感です。」
「・・・・・・うぅ〜」
「?」
2人で笑う尊と真琴、その様子を見て不思議がる穂澄と再び顔を茹蛸のように赤らめる栞。
「それはそうと、穂澄くん、そろそろ髪は切ったほうがいいのでは?」
いままで笑って聞いていた灯真が口を挟む。
「ん?そうだね。今日は学校お休みだから特別ボクが切ってあげるよ。」
真琴はのりのりでポシェットからはさみを取り出す。
確かに自分でもそろそろ切った方が言いかと思っていたぐらいだ。元々髪が伸びるスピードはあまり速くない穂澄だ。まあ、流石に一年中放っておくわけではなく、いままで自分で切っていたのだ。
親父は働かないし授業料だって収めなくてはならない。そんな中で散髪にお金を使っている暇はないのだ。まあ、ちなみにこの茶髪も自分で染めたので結構安上がりなのである。
「じゃあ、ご飯食べ終わったら庭に来てよ。それまでに準備しておくからさ。」
「はい、わかりました。ただ、ボウズだけは辞めてくださいね。」
そう言い穂澄は髪の毛を切る事となった・・・・・・
ファイトーーーーーーーーーーー!
イッッッッッッッッッパーーーーツ!!
投稿、頑張ります。。。