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step11オッサンには勝てなかったよ

さあ、早速始めよう。取引はなしあいを。


「いやはや、それにしても本当にこの図書館は素晴らしいですね!私もいつか本を買える商人になりたいですね」

「ありがとう、でも、サッサと報酬を寄越せ。無償で働くなんて1番嫌。これ以上誤魔化しは効かないよ?」


このオッサン、私が言わなければ忘れた振りして報酬を払わないつもりだったのだ。

サッサと用意した寝間着に着替えて寝る気満々だった。


「いやいや、忘れっぽいもので申しわけない。報酬は花のブローチとかどうかな?今なら本を守るカバーもあるよ」


このオッサン、私を舐めてるのか?


「商人に記憶力が無ければ潰れるに決まってる。忘れた振りして報酬渡さないのは、人としてどうかと思う。

それに、報酬が花のブローチとか私をコケにしてるの?人間のブローチに大きさが合うわけないし、カバーは報酬とは言ってない、でしょ。騙されると思った?」


そう言えば、わかりやすく目を逸らし、口笛を吹くオッサン。凄い腹立つ!

ここは私が上である事を自覚させねば。


「オッサン、貴方は分かっているはず。私が貴方や貴方の娘を一瞬でバラバラにできるのを。

何だったら貴方を殺して荷物を奪ってもいい、でも私は話し合いで済ます優しい妖精さんだから1回は許す。でも、2回目は無い。

娘の首の上が軽くなる前に態度を直せ」


するとオッサンは力を抜き笑顔を解く。


「残念ですね、妖精に勝つチャンスを逃しました。頭のよさなら妖精だから勝てると思ったんですけど」

「私が特別なだけ。あと、私と話す時は普段の喋り方でいい」

「・・・本当に妖精か?何で娘に隠してる口調まで分かった?」


タバコに火をつけるオッサン。


「っ!助けを求める時、素が出てた。それに、目つきがこちらを敬う気持ちが無かった。あとは勘」


や・ば・い!声が震える。顔が緩みそうだ。何でこのオッサン無駄にナイスミドルなんだ!

このオッサン、茶髪にだるそうな目、咥えタバコと、なかなか渋いオッサンなのだ。昼行灯って感じで今の口調が凄い合う。

何でオッサン達は私の心を乱すんだろう。顔に出てないか心配だ。


「俺はな、少しでも遊びたいんだ。だから、少し騙して勝つか負けるか試す訳だ。だから弱い人間の俺が騙すぐらいで娘に手を出さないでくれ」

「次はない。あと、脅しても殺る気は多分無いから安心して」


今の内に印象を良くしとこう。何でもいい物がいいからね。


「分かってるさ。でもアンタならやりかねないからな。報酬は金でいいのか?」


さて、報酬は何にしよう?金はこれから入る予定だから、別の何かが欲しい。できたら何回も使えるやつ。


「一つ、この図書館に月に1回は来ること、お金はちゃんと払うから、ぼったくりしなければいい」


「オイオイ、一つってまだあるのかよ、嬢ちゃん」


「オッサンを治した、狼を倒した、女の子を救った、三つは聞いてもらえる、でしょ?」


すると、やれやれと言った風にオッサンは目を閉じる。


「で、残りは?」

「二つ、コレをばらまいてきて」

「紙の束?・・・なるほど、宣伝か!しかし紙こんなに使って大丈夫なのか? 」

「大丈夫、そして三つ目は、貴方の娘を貸して貰う


そう言った途端、オッサンの目つきが変わった。


「商人にも超えられない、いや、越えちまったら行けない一線がある。娘を得体の知れない奴の所に送るほど、俺は落ちぶれてないぞ」


ちょっと止めてほしい。オッサン恰好いい!ステキ!ってなっちゃう。落ち着け、素数を数えるんだ。

2、4、6、8、10ってこれ偶数だ!


「オッサン、私は元々人間なの、神様が転生させたの、だから賢いし、怒らせない限り何もしない」

「ハッ!口だけなら何とでも言える!」


しょうがない、オッサンの為だ、神様が悪ふざけで作った質問コーナーに電話する。


「はぁい♡みんな大好き、確率の神です!今日はどんな悩みかな?」

「私が転生した元人間なのをオッサンに証明して」

「はぁい、オッサンに転生の時の映像を送るわ」

「ちょっと待て、そんな怪しいのはいや、アアアアアアア!」


オッサンガクガクしてるけど大丈夫か?


「大丈夫だ!問題ない。だって、ただちに悪影響が出るものではないから「また勝手に何やってるのかしら」っ!」


嘘だからあ、お慈悲をぉ、慈悲などない、と声が遠ざかり、勝手に切れてしまった。あ、オッサンが元に戻った。


「うう、分かったよ、本当らしいな。何で神様と仲いいんだよ」


勝手に懐いただけなんだけど。それより、


「私が人に襲い掛かる可能性ありと、討伐対象にされるのは困る。人と共存出来る証が必要なの。

それに、オッサンについて行ってまた魔物に襲われる心配も無くなる」

「確かに・・・分かった、ただし、娘から嫌がる様な事を聞いたら連れて帰るぞ」

「少しは働いてもらう、賃金もしっかり出す」


オッサンが部屋を出て行った。

とりあえずこんなものだろう。「オッサン好きのがバレなくてよかった」

「へぇ、妖精がオッサン好きねぇ」


え!?オッサン、何でいるの!?


「タバコ忘れたらいい事聞けたな」

からかう気満々だ。こんな筈じゃなかったのに。


ああ、オッサンには勝てなかったよ。




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