目の前に過去
眩しい。
そう、思った。
淡い光に包まれた、俺の周りには、沢山の仲間がいた。皆、笑顔だった。俺もつられて笑う。幸せだ。これ以上の幸せはない。
何か言おうと俺の口が開いた。しかし、出たのは言葉では無かった。黒い。どこまでも黒い煙だった。煙は直ぐに広がった。視界が黒くなる。
俺は何故か手を伸ばしていた。手の先には人の首。俺は、一人の女の子の首を締めていた。女は泣いていた。しかし、笑っているようにも見えた。訳がわからない。自分がどうして、こんな事をして居るのか。女の子は何故、笑っているのか。自分は一体誰なのか。
気が付くと、淡い光は完全に失せ、黒い煙が当たりを包んでいた。足元に当たる、何かの感触。
下を見てみた。肉だった。肉を踏み潰していた。生前は何かだった肉を。視界を辺りに移す。何処もかしこも肉の山。肉達の顔は、ぼやけて見えないが関係なかった。嗚咽は出ない。寧ろ、自分の口元が横に広がっているようだった。
笑み。
笑っていたのだ。淡い光の時とは違う笑み。
もう一度、目の前の首を締めている女の子を見た。微妙だが呼吸をしている。俺は安堵した。そして、首を更に強く締めた。簡単にへし折れた。俺は肉と化した物を投げ捨てた。
そして、笑った。声を出して。血の海に一人で立ち。笑った。嗤って、笑った。
俺は、最後に思うのだ。コイツラとオレとの違いは何なんだって。
夢の続きはない。此処で途切れる。それの繰り返し。
俺は飛び起きた。
いつものベットに、いつもの壁。紛れもない、自分の家の自分の部屋だ。
随分と嫌な夢を見ていた気がする。体から冷や汗が流れていた。しかし、夢は、あくまで夢なので、それ程、気にする事はない。
何故だか二度寝する気にもなれず、俺は布団から出て、クーラーにリモコンで電源を入れてから、台所に向かった。
自分で言うのもおかしいが、随分と綺麗に手入れされて、汚れが殆ど無い台所だ。
俺は、冷蔵庫から卵を取り出し、茶碗に飯を盛った。もちろんTKGだ。
割って、かけて、かき混ぜる。
醤油も忘れない。醤油がないと今一つ味が足りない。他に余計な物を入れずに、目の前のTKGを凝視する。よし、食べるか。右手で箸を持ち、左手で茶碗を持った。ご飯を一掴み、そして、一口。うん、上手い!!