育ちすぎ注意!プロポテ爆誕!!
数ヶ月後、公爵邸の裏庭には、もはや植物学の常識を軽々と越え、物理法則すら危うくさせる「怪異」が鎮座していました。
「……おい。これは何だ。説明しろ、エルゼ」
ギルベルトは、震える指先でその「物体」を指さしました。
そこには、一般的なジャガイモの概念を根底から覆す、岩石のごときゴツゴツとした巨大な塊が。しかも、皮の表面にはまるで鍛え上げられた大胸筋のような凹凸が浮かび上がり、土を突き破って猛々しく主張しています。
「見てください閣下! プロテイン・ポテト、通称『プロポテ』の収穫です! 閣下の高級粉末を毎日たっぷり注いだら、こんなに逞しく育ちました!」
エルゼは、丸太のように太くなったジャガイモの茎(もはや木)を愛おしそうに撫でながら、満面の笑みを浮かべています。
「逞しすぎるだろう……。ジャガイモに血管のような筋が浮き出ているのを初めて見たぞ。……というか、なぜこれほどまでに巨大化したんだ」
「マックスが言ってたんです。『愛と栄養を与えれば、芋は応えてくれる』って。ほら、見てください、この圧倒的なバルク! 今にも『サイドチェスト!』って叫び出しそうじゃないですか?」
「喋るわけがないだろう、芋だぞ!?」
ギルベルトは頭を抱えました。
この数ヶ月、彼は「愛するつもりのない妻」の気を引こうと、最高級の肥料や、最新の農耕器具を買い与えてきました。すべては、彼女の口から「マックスより閣下の方が凄いです!」という言葉を引き出すため。
しかし、結果として誕生したのは、「夫の財力でマックスへの愛を具現化した究極の筋肉芋」でした。
「さあ閣下! 今夜は収穫祭です! このムキムキポテトをマッシュして、たっぷり召し上がってください。閣下もこれでお体に厚みが出ますよ!」
「断る。私は自分の妻が、別の男の面影を重ねた不気味な筋肉芋を食うほど落ちぶれてはいない」
「えーっ。あ、もしかして閣下、この芋の大きさに嫉妬してるんですか? 大丈夫ですよ、閣下の腹筋もこの芋の凹凸に負けないくらい立派ですから。自信を持ってください!」
「比較対象が芋になった時点で私の負けだろうが!!」
ギルベルトの叫びが響き渡る中、エルゼは「よいしょー!」という掛け声と共に、成人男性でも持ち上げるのが困難なサイズのジャガイモを、軽々と抱え上げました。
「とりあえず、一個はマックスに送りますね! 『閣下のおかげで、あなたのような立派な芋が育ちました』って手紙を添えて!」
「やめろ! そんな呪いのような手紙を国境に送るな!! 公爵家の名誉に関わる!!!」
追いすがるギルベルトをよそに、エルゼは意気揚々とキッチンへ向かっていきます。
冷酷無比だったはずの公爵は、今や「妻の心」ではなく「ジャガイモの規格外な成長」に翻弄される日々。
その日の晩餐。
テーブルに並んだのは、明らかに密度がおかしい「超高タンパク・マッシュポテト」でした。
一口食べたギルベルトは、あまりの弾力に「……マッシュなのに、噛み応えがステーキ以上とはどういうことだ……?」と絶望の淵で呟くのでした。




