見舞い
「よっ!坊」
「ギ、ギー様…」
ファケマルはベッドで横になっており全身包帯でグルグル巻きになっていた。
「今日はいっぱい客が来るな。
アンリ、客用に出す用の酒残量大丈夫か?」
「いや、酒は大丈夫だ」
「ハハ、皆そう言って一滴も減っちゃいねぇ」
どうやら調子はいつも通りのようだ。
「そういえば母さんが来たようだが…」
「あぁ来たぜ、俺の所は近くに寄ったから来ただけらしいが、敗戦の報を聞いてすぐに戦死者の家族の元に出向いて回っているらしい」
強い人だ…
「どうだファケマル怪我様子は?」
「何も問題ねぇ、だけどコイツがよぉこんな大袈裟に処置するもんだから参ったもんだ」
そう言いながらもファケマルはどこか嬉しそうだった。
普段は滅多に怪我しないが今回の怪我でよっぽどアンリに大事にされたのだろう。
「なぁそろそろこの包帯ほどいてくれねぇか?動きづらくてたまらねぇ」
「ふふ、それが目的です、だってあなたこうやって縛りつけて置かないとまたすぐどっか行って傷増やしてくるじゃないですか!」
確かに包帯はファケマルとベッド一緒に巻いている物もちらほらみえた。
だがその横でどこか気まずそうな顔をしたアデマールがいた。
「アデマール、お前も来ていたのか…」
「えぇ…まぁ」
先日半ば喧嘩別れのようになってしまったせいでどう話せばいいのか分からず言葉に詰まる…
だがその横でファケマルとアンリは面白そうにニヤニヤとこちらを見ていた。
「なんだ?どうしてそんなに笑っているんだ?」
そうするとアンリが答えた。
「だってアデマールさん別にこの人のお見舞いに来たわけじゃないです」
そしたらファケマルも乗っかってきた。
「そうそうコイツ今朝早くに来て、あっ見舞いに来てくれたのかと思った、なんと言ったと思う?
「ギー様と喧嘩してしまったどうしたらいいだろうか」って真剣な顔で言ってきてよぉ
そしてさっき相談して謝ろうって決めたら
今坊が来たらこうやって黙りこくちまった!ハハッ!
さらにな!」
ファケマルが調子に乗ってまだ喋ろうとするとついにアデマールがガタリと椅子から立ち上がるとファケマルを睨みつけた。
「怪我人は黙っていろ、あとその妻も夫の悪ふざけに乗るんじゃない。
乗るんだったらしっかり手綱を握ってろ!
ファケマル…君は先の戦いで更に頭のネジを失ったようだね」
するとアデマールは俺の方を向くと深く頭を下げた。
「先日出過ぎた真似をしてしまい申し訳ありませんでした」
「いや、大丈夫だ、もう気にしていない」
またアデマールは側の袋から大量の資料をドサッと出して来た。
「六日後の進軍計画書と兵種の割り当てです、どうかお役立てください」
「ありがとう、これからも股肱之臣としてよろしく頼むぞ!」
「はい、今後もこの身を粉にして尽くしてゆく所存です」
「坊!俺もココウノシンだぜ!」
そうして六日後には城に総勢一万三千の兵があっまった。
前回の出陣の際は歩兵が大半を占めていたが今回は半数は騎兵となっており前回よりも量も質も段違いだ。
ニコシア陥落の報も未だ来ていない。
ファケマルも理解しがたい自己修復力で完全に復活した。
準備は完璧だ。
「いざ!出撃!!」