被害
地雷火だ、飛んでくる火の粉、漂ってくる硝煙の匂い。
眼前の惨状を全身で感じた時それが相手の策略だと悟った。
たが悟った時には既に手遅れだった。
爆発の音と共に森に潜んでいたであろう敵の大軍が姿を現すと同時に父さんの軍を包囲しにかかり、その数は七、八千いや一万程の規模だった。
「ギー様、指示を!」
その言葉でふと我に返った。
いや、まだ抗える!未だ俺の麾下一千の騎兵がいる……
「ファケマル、アデマール!我軍は敵軍左翼に突撃を敢行する。
目的は戦闘下の友軍の両翼包囲阻止、そして父さんの救出だ。
ファケマル切り込みは任せた!!」
「おう!やってやらァ!野郎ども突撃イィ!!」
ファケマルの合図で一千の騎兵の突撃が始まった。
その突破力は凄まじく最初の一撃で敵軍の前列は吹き飛んだ。
「死にてぇ奴からかかってきな!俺が一撃であの世に送ってやるぜ!」
ファケマルの苛烈な攻勢によって敵左翼を大きく押し込む事に成功した。
よし…これで味方の退き口は確保できた、あとは父さんを見つけて脱出するだけ。
そうして自軍の歩兵群を駆け抜けていった。
「動ける者は撤退しろ、後方右側に間隙が生じているそっからだ!」
そう兵士達に喧伝しながら馬を走らせていると明らかに歩兵の密度が高いところがあった。
「何をしているさっさと撤退を……」
そのにはボロボロになった父さんの姿があった。
恐らく地雷火に飲まれたであろう鎧は一瞥するのみではなんとも無いがよく見てみると湯気を発しており非常に高温なのがよくわかる。
ここから見える顔も悲惨なものだった。熱された肌は爛れており鎧とベッタリとくっついてしまっている。
だがこんな様子でもまだ息はあり俺のが駆けつけたことを気づいて何かを伝えようとしていた。
「ギー…撤退しろ…城に帰って防衛準備を進めるんだ…」
「でも…」
「ギー!!これは提案ではない、総司令官としての命令だ!直ちに実行しろ!」
「分かりました……撤退を開始します…」
そう言い残し俺は父さんを置いてその場から逃走した。
その後俺はファケマルが作った間隙から撤退しまた同時に多くの歩兵も撤退を始めていた。
だが歩兵全員が撤退するまでファケマルの戦列が持つことはなくファケマルの部隊も潰走した。
ただ幸いにも敵は逃げる我々を執拗に追撃することは無かった。
そしてその後無事に城まで到達できた兵士は当初の五千から大きく減った二千ほどだった。