開戦
行軍中に俺はは常に父さんと馬を並べて進んでいた。
「ギー、今回の敵軍はこれまでと少し様子が違う。規模も斥候が殺られすぎて今の今まで正確な数は分かっていない。
しかも我々が少し出張って来ただけですぐに森林地帯に逃げ込んだ。
前回までは姿が見えたら点でバラバラに攻撃してくるだけで全く統率なんか取れてなかった。
だが今回は違う、何かが臭う…どこかきな臭い」
「だったら少しだけでも情報を集めてから出陣すればよかっんじゃないか?
そうすれば相手の数や思惑も分かった上で戦いに挑めると思うけど…」
「確かにそれも一理ある、だが今回敵は領土を切り取りに来た訳では無い、ただの略奪だ。
その場合においては時間すらも我々の敵になる、敵放置すればその分国土は疲弊する。
それに敵が何かしら企んでいたとしても、体勢未完を突けばそれだけで相手を叩き潰す事も可能だ」
そう話しているうちに敵が陣取っている森林地帯の縁まで到着した。
「さぁ作戦はいつも通り。
お前に預けてある騎兵一千は後詰めとして待機、それまでに俺が敵に楔を打ち込むそこにお前が騎馬突撃で敵を崩壊させる。
では合戦後、論功行賞でまた会おう!」
「はい!」
その後自陣に戻りファケマルとアデマールに作戦概要を説明した。
「またいつも通りかよ、たまには俺が切り込みたいぜ!」
そう言いつつファケマルは自分の斧槍を振り回していた。
「そう文句を言うな、私達の騎兵こそ戦場の花形だ。
しかも直接戦を決める一撃を叩き込む役目だ、一番美味しい役目と言っても過言ではないぞ?」
「まぁ確かにな…」
未だ不満げなファケマルを他所に戦の気配が近づいてくるのが分かった。
互いの歩兵が戦列をしっかりと組み睨み合いが続いていた。
「まぁ二人ともそろそろ開戦だ、気を引き締めろ」
それを聞いたファケマルはニヤリとわらっていった。
「大丈夫だ、坊も知ってるだろ?騒がしい限りは開戦なんて始まらないぜ?
それにしても坊あれを見てみろよまだ春だってのに蜃気楼が出てるぜ珍しいものも有るも…んだ…な」
途端両軍がシンッ…と静まり返った。
「始まるぜ…坊、アデマール…」
次の瞬間け甲高い喇叭の音と共に父さん率いる歩兵四千の突撃が始まった。
だが戦が始まってもさっきのファケマルの言葉が頭から離れなかった、蜃気楼か…ここらへんは特段地熱がある訳でもない。
それに父さんが言っていたように何かおかしい…父さんが突撃しているのにも関わらず敵軍は一歩も前進していない、どっしりと構えている。
まるで父さんたちが特定の位置に来るのを、待っているかのように。
「なぁアデマール、何かおかしくないか?
父さんが突撃しているのに相手は前進すらしない」
「恐らく相手は真正面からやり合うのでなく取り敢えず最初は守ってこちらの消耗を待つ気なのでは?」
「確かに…それならあり得るか…」
そう納得しかけたとき、それまでの考えをひっくり返すことが起こった。
突撃してた部隊が相手と接敵する直前轟音が鳴り響き歩兵部隊の後方が一気に火に包まれた。