出陣
話が終わった俺はすぐさまファケマルの家に向かった。
城を出て5分くらい歩くと見慣れた民家が見えた。
すると家の前で鶏の世話をしている女性がいた。ファケマルの妻アンリだ熱心な信奉者でその影響か結婚して以降ファケマルは首から十字のネックレスを掛けるようになった。
「アラ?ギー様!!いらっしゃい、今日はどうされたのですか?」
「ファケマルに用があって、ファケマルもう帰ってますか?」
「えぇ既に、ですが…」
そう答えるとアンリは急に言葉に詰まりだした…それ同時に家の中がガヤガヤと騒がしいのがわかった。
「どうした?大丈夫か少し中が騒がしいみたいだけど…」
「あっいえ、大丈夫です、夫には私から説明しておきますので…」
アンリが話を切り上げようとした途端家の扉が開いた。
「アンリちゃん今日はありがとねー、アタシもう帰るわ………あっ!ギー!!」
なんとクレイがファケマルの家にいたのだ。
「何で…姉さんがファケマルの家に…」
「なんでって、アンタがファケマルをよこしたんでしょ?
アンタもいい根性してるわね家臣を囮にして訓練をサボろうだなんて…」
「いや…そんなわけ…なぁファケマル!!
「……」
コイツさっきから全く目を合わせようとしねぇ、俺を売りやがったな!
自分が助かりたいから他人を売るだなんて…裏切り者が!
「なぁにさっきからファケマルの方見てんのよ!
さぁさっきの続き始めるわよ!
試したい新技が今!増えたわよ!」
その日寝る頃には身体で痛まないところはなくなっていた。
そこから5日間は兵数の確認兵糧の手配などでバタバタと過ぎていった。
そしてその準備は城下の皆が総出で準備を進めた。
だがその中で唯一文句言う者がいた、クレイだ。
「何でアタシは留守番なのよ!ギーが行けるんだったらアタシも行けるのに…
つか、何でアタシがそんなギーの出陣準備を手伝わなくちゃいけないわけ?まったく…」
そうぶつくさ文句を言いつつも何やかんや準備を進め予定の5日後には滞り無く準備が完了した。
出陣の際城下を通る時の熱気は凄まじいものだった。
騎士様頑張って!
異教徒なんてぶっ飛ばしてやれ!
そんな熱い声援が背中に沢山ふりかかった。
まるで自分達が物語の主人公であるかのようでとても誇らしかった、それはファケマルも同じらしい。
「いやぁこれまで幾度と無く出陣はして来たがこの瞬間だけは毎度最高だ!」
「君は全く単純だな、確かにこれらの歓声は甘美なものだがそれだけ我々に責任が課せられているということを自覚したまえ」
「あー歓声が大きくてノリが悪い奴の声が全く聞こえねぇなぁ」
「なんだと!?」
うん、二人はいつも通りだ。