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悪夢への不時着

戦争という非情な世界の中で、人々は時に敵を前にしても生きるために共闘しなければならない。だが、それがどれほど困難なことか、誰が想像できただろうか。大空を舞う零戦の中、斉藤一は日々の死線を潜り抜けながらも、ただ戦うことしか知らない。しかし、ある墜落事故をきっかけに彼がたどり着いたのは、戦場とはまるで異なる不気味な土地。そこには、アメリカ兵という異国の戦士がいた。信じられるのは、自分の力だけ──そう思っていたはずの彼だが、予想もしなかった共同戦線が彼を待ち受けていた。


これは、戦争の裏側で繰り広げられる未知の恐怖と、二人の兵士が直面する試練の物語である。

雷鳴のような音が空を貫く。斉藤一は機体の操縦桿を必死に握り、振り乱れる零戦のコックピット内で視界を確保しようとしていた。両翼の先に見える、グラマンF6Fヘルキャットの影。空中戦の命運を賭けた瞬間が、彼の眼前に迫っていた。

「くそっ、グラマンか…!」

一は目を細め、背後で旋回するアメリカ戦闘機を確認する。零戦はその機動性で敵機を引き離すことができるが、目の前に迫るヘルキャットの速度は、一瞬の隙を許さなかった。

「こちらも負けていられない!」

一はアクセルを全開にし、急旋回をかけて敵機との距離を開けようとした。が、すでにその動きは読まれていた。F6Fはあっという間に後方に回り込み、攻撃の準備を整えていた。

爆発音が響き、一の機体は猛烈な揺れに見舞われる。後方からの機銃掃射により、零戦のエンジンに損傷が走った。

「まずい、墜落するか…!」

機体は制御を失い、目の前が回転しながら地面に引き寄せられる。

そのとき、眼下に広がる島が見えた。見たことのない、荒れた土地。まるで人の手が入っていないような、古びた建物が点在している。

一は必死に操縦桿を引き、パラシュートを開こうとしたが、その前に機体が木々をかき分けながら地面に衝突した。

墜落後、無事に地面に降り立った一は立ち上がり、荒れた島を見渡した。

「ここは…どこだ?」

一の心は、墜落した瞬間の混乱から抜け出しきれずにいた。周囲はただの荒地に見え、どこか異様な雰囲気を漂わせている。

そのとき、後ろから音がした。振り向くと、アメリカ兵が立っていた。

「…何だ?」

一の目は鋭く光り、警戒心を露わにした。アメリカ兵だ。敵国の兵士。まず間違いなく、敵である。

「名前を聞いてもいいか?」

アメリカ兵は、まるで気にせず言った。だがその態度に、一はすぐに不快感を覚えた。戦争中、互いに信頼などあり得ない。相手がどんな顔をしていても、敵は敵だ。

「斉藤一。軍の者だ。」

アメリカ兵は少し笑いながら、「ああ、そうか。こっちの名前はアンダーソンだ。よろしくな。」と言ったが、斉藤は無視するかのように、冷たい視線を投げかけた。

「日本軍の兵士だと? まあ、今はそんなこと気にしてる場合じゃないな。」

斉藤は何も言わなかった。確かに今は協力しなければならないかもしれないが、この男が信用できるはずがない。アメリカの兵士に、そんなものは求められない。

「なぜ俺に話しかける?」

アンダーソンは肩をすくめて、笑みを浮かべた。

「なんだ、せっかく生き残ったんだし、他の人と話すのも悪くないだろ? ここじゃ、誰も頼れる人間がいない。」

斉藤は顔を強張らせて言った。

「俺はお前に頼るつもりはない。そして、ここは日本だ。アメリカのジョークなんか通じない。」


アンダーソンは驚きつつも、苦笑いを浮かべた。


「分かったよ、ジョークは封印だ。でも…少しは笑わないと、この状況、持たないだろ?」

斉藤は一瞬だけ顔を曇らせ、やがて硬い口調で返した。

「笑う余裕があればな。」

アンダーソンはその視線を受け止め、少し肩をすくめたが、すぐに空気を変えようとする。

「まあ、それはそうだがな…。何にしても、ここではもう敵も味方も関係ない。生き残らなきゃ。」

その言葉に斉藤は答えなかった。ただ、周囲を警戒しながら深く息を吸った。

「お前、あの0号ってやつ、知ってるか?」

斉藤は不意に口を開き、驚くべきことを言った。

「0号…?」

アンダーソンの眉間にシワが寄る。知らない名前ではなかった。

過去にとある日本兵の捕虜から聞いた名だった。

斉藤は続けて言った。

「軍の噂話だ。何か、恐ろしい実験体が暴れたってな…」

「その化け物…、それがここにいるかもしれない。」

その言葉が、空気を凍らせた。

アンダーソンは黙り込み、銃に手をかけた。斉藤もまた、その動きを見逃すことなく、腰のホルスターに手をかけた。

やがて、どこからともなく異様な音が響き始めた。それは、遠くからでも明らかに何かが動いていることを感じさせるものだった。

「奴だ…!」

斉藤が低く呟くと、アンダーソンも拳銃を構えてその方向を見つめた。

島に潜む恐怖が、まさに彼らに迫っていた。

物語が始まったばかりですが、読者の皆さんにとっても、登場人物たちがどんな成長を見せ、どんな試練を乗り越えるのか気になることでしょう。斉藤一とアンダーソン、二人の兵士は、それぞれ異なる背景を持ちつつも、どこかで交わらなければならない運命に導かれています。彼らの間に生まれる感情、そして協力し合うことで乗り越えるべき恐怖が、物語の重要な要素となることでしょう。


また、物語の背景にある「0号」という謎の存在が、今後どのように物語を動かすのか、注目していただければと思います。異常な状況の中で、生き残るために何が必要か、そして戦争の意味についても考えさせられる部分が多くあります。


次回もどうぞお楽しみに。

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